僕の愛する街ミラノは
サッカーに夢見ることを
忘れてしまったんだろうか。
こんにちは、フランコです。
僕はもう永いことミラノに住んでいます。
ミラノにもサッカーを愛する人が
たくさん住んでいるわけですが、
このごろどうも、ミラノのサッカービジネスに
関わっている人たちが
「ミラノらしさ」を
忘れちゃっているような気がしてなりません。
今日は、そんなお話・・・・
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サッカー選手はアーティスト。
ボールで世界を表現する。 |
ミラノでサッカービジネスに関わっている人たちは、
ことサッカーに関する限り、
「ファンタジー」が好きじゃないみたいです。
僕の思う「ファンタジー」とは、
「ものを創るときの夢見る力」のようなものです。
これはまったく不思議なことです。
なぜって、ミラノは歌や料理や
芸術やファッションなど、
「ファンタジー」が欠かせないイタリア文化の
中心地なのですから。
たとえばイタリア料理から
「香り」や「色」の夢が抜けてしまったら、
ちっともおいしくなくなるでしょう?
夢見る力のない画家の絵や、
想像力のない作曲家のつくった歌を、
みなさん、愛せますか?
(僕は愛せません)
ミッソーニのニットやスカーフが素晴らしいのは、
ミラノのモードの巨匠オッタヴィオ・ミッソーニの
すばらしい色彩感覚があるから、こそ、なんです。
アルマーニだって同じです。
偉大なジョルジョ・アルマーニがデザインするから、こそ、
(彼のデザインという、魔法の粉で!)
アルマーニのジャケットもスーツも、
特別なものになるんです。
アーティストには、
ファンタジーが欠かせません。
サッカーも同じです。
サッカー選手は、ひとりひとりがアーティスト。
画家が、絵の具で平面を越えた世界を描き、
ファッション・デザイナーが、
布で女性たちの美しさを引きだすように、
サッカー選手は単にボールを蹴って
勝ち負けを決める以上の世界を、
「表現」しているんです。
でなければ、あんなに美しいスポーツが
生まれるわけがありません。
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ミラノのサッカー人よ、
なぜブラジル人を認めないんだ!? |
世界のサッカー選手たちの中でも、
ボールのファンタジーにかけては
他の追随を許さないのがブラジル人です。
現に、横浜で昨年の6月30日にブラジルが
5度めのW杯優勝を納められたのは、
ロナウドの持つ天賦の才能とリバウドの夢見る力、
つまり「ファンタジスタ」のお陰だと思いますよ。
あの時のブラジル・チームは
みんな本当に美しかったですね。
サッカーを愛する人で、
ブラジル選手の所作、動き、表情を
愛さない人はいないんじゃないでしょうか。
サッカーを発明したのはイギリス人だと言われるけれど、
(これは本当でしょう)
でも、サッカーを楽しいものにしたのは、
ブラジル人です。
みんなブラジル選手たちが好きで、
彼らはいつだって、みんなに愛されてきました。
ガリンチャ、ペレ、ファルカオ、ロマリオ、ジーコ。
彼らは国境を越えて愛されたチャンピオンたちです。
ところが、僕の街、ミラノのサッカー界ときたら!!
ミラノの、しかもサッカーに関わる人たちが、
たとえアルマーニを着ていても
サッカーに関しては
ファンタジーを許さないなんて・・・
インテルのクーパー監督はアルゼンチンの人ですが、
とうとうロナウドを愛さずに通しました。
監督には、このブラジル人選手が底抜けな陽気さで試合に挑み、
勝ったりするのが、お気に召さなかったようです。
ロナウドのやり方は監督の理解をまったく越えていて、
愛することなどできなかったんでしょうね。
そして、クーパー監督の厳格な戦略か、
ロナウドの並外れたファンタジーか、
どちらかを選ばなければならなかった時、
インテルは監督を取り、
ロナウドをレアル・マドリッドに譲渡し、
インテルのティフォーゾたちに
後悔と嘆きをもたらしました。
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優勝、ユベントスに持ってかれちゃうよ! |
一方インテルの大敵であるミランは、
昨年の8月にはイタリア・リーグの中で、
最もブラジル色の濃いチームになるはずでした。
2002W杯の勝利者であるディーダとロック・ジュニアや、
1996W杯勝利者のレオナルドに、
やはり横浜での決勝戦でドイツを打負かした経験をもつ
超弩級の選手、リバウドが加わったのです。
これがまたもや「ところが・・・」です。
カルロ・アンチェロッティ監督は、
リバウドの天賦の創造力を
ミランの戦法になくてはならないもの、とはみなさず、
このブラジル人を徐々に遠ざけてしまいました。
少ししかプレイさせずにベンチに座らせたままで・・・
この正真正銘の天才である
リバウドのファンタジーを欠いたミランは、
どうなったと思いますか?
だんだん領地をせばめるかのように、
イタリア選手権の優勝争いから遠のきつつあります。
インテルも、まさに同じ。
ミラノのチームであるミランとインテルは
ファンタジーを捨てた結果、
スクデットも捨てたことになりました。
かわりにトリノのチーム、ユベントスがじわじわと
スクデットに近付いています。
ネヴェドやデル・ピエロのファンタジーでもって、
ユベントスは優勝できるかもしれませんよ。
ミラノっ子たちが拒絶した「ファンタジー」でね。
訳者の一言 |
ミラノはモダンな街です。
他の街の特にお年寄りは、
ミラノを「冷たい街」と
言ったりします。
たしかにちょっとスノッブな面がないでもない。
でも、思いっきりシャープでかっこいい街だと、
5年間住んでみた私は思うのです。 |
翻訳/イラスト=酒井うらら
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