フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

トッティとヴィエリ、
すばらしいコンビ!!

シチリア!!
太陽の島!! 花々が咲きみだれ、
マグロがゆうゆうとあそぶ蒼い海に囲まれて、
イタリア半島のつまさきに浮かぶ、
光と陰にみちたこの島の情熱が、
もう永遠に色褪せてしまったかに思えた愛を
よみがえらせました。

ぼくへの誰かからの愛、ですって?
いいえ、それはね、アズーリと監督と、
そして日本でのW杯では輝きそこねてしまった
ふたりの選手、トッティとヴィエリへの、
ティフォーゾたちの愛ですよ。

完璧なパス、完璧なゴール


監督のトラパットーニは、
監督としての進退をかける勢いで、
この島で3月29日の日曜に行われた
対フィンランド戦に臨みました。

これに勝てば、来年ポルトガルで開かれる
2004ヨーロッパ選手権の出場権争いで、
一歩抜け出ることができる試合でしたから。

2月のポルトガルとの友好試合に勝ったとはいえ、
先のW杯の対韓国戦でうけた傷は完治していませんでした。
みかけは直ったように見えても、トラウマは手強いのです。

アズーリのまわりに漂う引っ込み思案と
頼りなさは、そうとうのものでした。

その及び腰に喝をいれたのは、
ヴィエリの2本のゴールによる勝利でした。
これで恐怖感が一気に希望へと変身したってわけです。

まあ、フィンランドそのものは大した強敵でもなくて、
試合自体も難しくはなかったんですが、
ヴィエリとトッティのコンビネーション、これが
すばらしかった。

トッティの完璧なパスとヴィエリのゴール!!

まるでひとりの人の頭脳と腕のつながりみたいに、
このふたりの連係はパーフェクトでした。

トラパットーニ監督も
「あのふたりは世界一のコンビだ。
 足すものも減らすものもない!!」
と、手放しのほめっぷりです。

もっぱら話題の中心にいるこのふたりは、
トッティが
「いつもいつもヴィエリと一緒にプレイしたい」
とラブコールを送れば、
「ぼくだって同じ気持ちだ」
とヴィエリが返すといった具合です。
 

トッティ移籍か!?!?

さて「いつも」はトッティがローマ、
ヴィエリがインテルと泣き別れ状態ですから・・・・
どうしましょう?!

彼らの夢を実現させるには・・・? というわけで、
またぞろ例の「トッティの移籍」話が浮上しているんです。

どういう話だったか、もう一度おさらいしておきましょうね。

トッティのいるローマの会長はフランコ・センシで、
ヴィエリのインテルの会長はマッシモ・モラッティです。
ローマの経済は窮乏してきています。
そしてセンシ会長は経済立て直しのために
膨大な額の自腹を切る用意は、今のところありません。

ローマは自動車会社のフィアット社や
タイヤで有名なピレッリ社と同じように
株式で運営されている組織ですから、
税務年度末には正確な収支決算を出さないといけないのです。

インテル会長のモラッティは、
彼のお気に入りのおもちゃ(つまりインテル)のためなら
金に糸目はつけない太っ腹の大金持ちです。
ローマはこうはいきません。

でもセンシとモラッティは強い友情で結ばれていますから、
数カ月前にインテルのクレスポが怪我をした時には、
埋め合わせのバティステュータが
ローマから譲り渡されました。
ノー・プロブレムだったんですね。

売るべきか売らざるべきか、
それが問題だ。

さあ、センシは今やハムレット状態です。
自腹を切ってローマの経済を立て直し、
トッティは売らない、
つまり自分は貧乏覚悟で
チームの戦闘力を確保し続けるか、否か。
モラッティは石油業者ですから、
イラク戦争が終結した暁には
石油の値上がりで今以上に金持ちになるでしょう。
従って、トッティ移籍のためには
金に糸目はつけないでしょう。
チーム戦力は確保しておきたい、
でも収支決算がああああ、というわけで、
センシはトッティを手放すんでしょうか。
もちろんインテルに、ですよ。

この話は一回盛り上がって、
その後なんだか立ち消え状態だったんです。

そこへ持ってきて、今回のフィンランド戦です。
トッティとヴィエリの夢のコンビネーションを
目の当たりにしたティフォーゾたちは、
もう盛り上がりまくっています。

どういう結末になるんでしょうか。
おとぎ話みたいにうまく行けば、
トッティとヴィエリはお揃いのインテルのシャツを着て、
いつまでも一緒に幸せにプレイし続けましたとさ、
じゃんじゃん、
なんですけどねえ・・・

訳者の一言
みなさんもうご存じでしょうが、
イタリア人は日本人から見たら
けた外れにオーバーアクションです。
悲しい時は身も世もないくらいに嘆き、
嬉しければ天にも登るかの勢いです。
つまり日本人から見ると
いつでも大騒ぎなわけで、それがまた
巻き込まれるほうも快感だったりするんです。
翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-04-07-MON

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