フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

日本を夢見つつ、ビジネスと政治の間で。

ビジネスマンと政治家の対決のむこうに、
日本への夢が見えかくれしている今週です。

(僕(フランコ)は、かなり興奮しています。
 僕が日本に行くときに
 同行することになるのがデル・ピエロたちなのか
 それともインザーギたちなのか
 それが、あさって、決まるんですからね! )

“ビジネスマン”とは自動車メーカーの
FIATのオーナーであるアニェッリ一族。
“政治家”というのは
イタリア首相のベルルスコーニのことです。
そう、片やユベントスの持ち主、
片や首相はACミランの持ち主です。

UEFAチャンピオンズ・リーグの決勝戦を、
この2チームが闘うのです。
ヨーロッパで最強のチームを決める決勝戦を、
イタリアの2チームが闘うんです。


どちらが勝つのでしょうか?
これはイタリアのサッカー史
始まって以来の熱い問いかけですね。
この5月28日水曜日は、
イタリアにとって単なるサッカーの話題では終らない、
国の根底をゆるがすほどの対決の日となるでしょう。

くり返します、
サッカー史上初のイタリアチームだけの決勝戦、
なのです。
マンチェスターでのキック・オフと同時に、
おおいなる感動と夢の数々が始まるのです。

5千万ドル、10億人。
巨額を動かす最終戦。


これに勝てば、この秋には日本に行けます。
トヨタ・カップに出場できるんです。
南米の優勝チームと、
それこそ世界一をかけて闘うことになります。

トヨタ・カップは、
数あるトロフィーの中でも一番価値があると
僕は思っています。
なんたって、世界一のクラブ・チームの印なんですから。
そして、巨額のお金も舞い込んできます。

ちなみに、マンチェスターで勝ったチーム、
つまりヨーロッパを征したチームは
(ユベントスでしょうかミランでしょうか)
約5千万ドルを手に入れます。
約5千万ドル! ものすごい額ですね。

全世界のテレビがこの試合を放送するでしょう。
(生中継か録画か、
 国によって異なるかもしれませんが。)

少なくとも10億という数の人々が、それぞれの地で、
この試合をテレビ観戦するというのも、すごいことです。


どっちが勝っても、
カップはイタリアのもの。
これが興奮せずにいられますか!


単なるサッカーの行事と片付けるには、
今年のこの決勝戦は話題性がありすぎますね。

この試合をビジネスマンvs.政治家だ、と僕が言うのは、
(これまで何度も言ってきましたが)
この2チームのオーナーたちが
実際にイタリアの政治経済の中心人物であり、
ライバル関係にあるからです。

彼らにとって、優勝はお金のためでなく、
彼らのプレステージが更に上がるか否かの象徴なのです。

お金は彼らの懐に入るわけではありませんからね。
見事に銀製のカップを手に
マンチェスターから帰って来た選手たちへの報酬や、
次に選手を入れるための資金になります。
オーナーたちは、むしろ、
これまでチームに大金をつぎ込んできました。

でも、水曜日、試合が始まってしまえば、
誰もそれまでの議論の数々のことも、
アニェッリ一族がどうだとか、
ベルルスコーニは首相としていかがなものかなど、
ぜんぶ吹っ飛んでしまうでしょう。
好い事ですねえ。

だって、主役はなんと言っても
ユーヴェとミランの選手たちですから。

ボールの芸術家たち!!
彼らのありったけのボール・マジックが炸裂するでしょう。
どんなに素晴らしい試合を見せてくれるんでしょうか。
夢もいっぱい、感動もいっぱい、
誰もが待ち望んでいたこの時です。

ユーヴェはデル・ピエロ、ダービッツ、
ザンブロッタ、トレセゲ、
ミランはインザーギ、マルディーニ、ネスタ、
シェフチェンコ、
それぞれ主役たちを勢ぞろいさせますよ。

名脇役たちだって、はずせませんね。
タッキナルディとモンテーロに相対するのは
ガットゥーゾとカラーゼです。

全選手がピットという劇場で、
想像しうる限りの美しい技を見せようと構えています。

どちらが勝ってもカップはイタリアのものです。
イタリア人たちは、もう夢見ごこちです。

60年代のイタリア映画に、とても詩的なタイトル
「夢は夜明けには消える」という名作があります。
 ※I sogni muoiono all'alba
  1961年、Indro Montanelli 他監督

負けたチームにとっては、今回に限って言えば、
たしかに夢は初夏の涼しい夜に露と消えてしまいますね。
でも、また次の夢をみればいいのです。
そうでしょう?

訳者の一言
ふふふ、フランコさん、今までになく熱いです。
打ち込み間違いが数カ所ありました。
イタリア人のイタリア語に間違いをみつけると
なんとなく嬉しい。
すごいのを一個だけバラしちゃいましょう。
muoiono (夢が)消える、のところですが
muiononoになってましたっ。
翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-05-26-MON
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