ACミランが勝ちました。
これはひとつの「企業」の勝利です。
「ミランが勝つに決まっている。
この私が勝利者に生まれついているからな」
これは、
ACミラン会長でもあるイタリア首相の
シルヴィオ・ベルルスコーニが、
マンチェスターでの
UEFAチャンピオンズ・リーグ決勝戦を前に
放った言葉です。
そしてその言葉通り、彼のチーム、ミランが勝って
ヨーロッパ・クラブ・チームの頂点に立ちました。
トヨタ・カップで南米チャンピオン・チームと
世界一をかけた闘いをするために、
11月に日本へ行くのはミランです。
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雪辱を果たした人々。
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僕はこの決勝戦を、
政治権力Vs.経済力と言っていたのですが、
それはミランの会長がイタリア首相であり、
もう一方のユベントスはFIAT、ランチア、
アルファ・ロメオ、フェラーリのオーナーである
大企業家、アニェッリ一族のものだからです。
この言い方からすれば、
政治権力が経済力を征した格好になりました。
(実際にベルルスコーニが政治力で
結果を左右したのではありませんが)
ミランが、サッカー界での地位の向上と
勝利の栄光とを託した
カルロ・アンチェロッティ監督ですが、
じつは2年前に、ほかでもないユベントスから
解雇されています。
2度も2位に甘んじた、
負け組なんじゃないか、という理由で。
今回の決勝戦の勝利でアンチェロッティは、
そのユーヴェに対して雪辱を果たしました。
これは、やはり彼と前後してユーヴェから出された
インザーギにとっても、同じ快挙です。
ミランには、準決勝戦でインテルを蹴り落としたことで
溜飲を下げた選手たちもいます。
シードルフ、ピルロ、ブロッキ、シミックらは、
チャンピオンズ・リーグを何度も経験していたのに、
(シードルフとピルロは決勝戦も)
大きなチームでプレイするには向いていないから、と
インテルがミランに売ってしまった選手たちです。
ところで、オランダ人のミッドフィルダーである、
そのクラレンス・シードルフですが、
今回のチャンピオンズ・リーグ優勝は
彼にとっては3度めとなります。
3回とも異なるチーム
(アヤックス、レアル・マドリッド、ミラン)
の選手として、でした。
これで彼もヨーロッパで屈指の選手のひとりであることを、
確実にアピールできましたね。
ミランのキャプテン、パオロ・マルディーニにとっては
これが4度めのチャンピオンズ・リーグ優勝です。
この秋の横浜で、3度めのトヨタ・カップ獲得を目指します。
パオロのお父さんであるチェーザレ・マルディーニも、
1963年5月にイタリアとしては初めての
チャンピオンズ・リーグ優勝を納めています。
パパ・マルディーニも、その時
やはりミランのキャプテンだったんですよ。
それから40年後、息子のパオロも同じく
ミランのキャプテンとして、
優勝カップをマンチェスターの空に向かって高々と
掲げることができました。
彼らこそが「勝利者に生まれついた」一家ですねえ。
素晴らしい!!
「また何十年後かに、
今度はパオロの息子がチャンピオンズ・リーグの
カップを掲げるぞ」
と言いだした気の早い人たちもいるほどです。
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ユベントスが負けたのは
お金で幸福を買おうとしたから? |
ひとつのチームが勝ちました。
でもこれは、ルイ・コスタ、インザーギ、
シードルフ、リバウド、ネスタら
優秀な選手を買い入れて、
チームを強くするための巨額の投資をし続けた
ひとつの企業の勝利でもあります。
「上手に金を使う者は、無駄使いが少ない」
とイタリアでは言いますが、
ミランはこれに従い、完璧に実行しました。
大金をはたいてきましたが、
無駄使いはしなかったと証明されましたね。
反対に、負けたユベントスはアンリからジダンにいたる
ヨーロッパ最強の選手たちを手放してきました。
そして、とどめにインザーギまで売り渡してしまいました。
ユーヴェが負けたのは、勝利よりお金を手に入れることに
力をかけすぎたから、と言われそうです。
お金で幸福は買えませんが、上手く使えば
ヨーロッパのチャンピオンになれるってことでしょうか・・・
でも、お金が無ければ下手にも上手にも使えないですねえ。
訳者の一言 |
ユベントスのファンをユベンティーノJuventino,
ミランのほうはミラニスタMilanistaと言います。
シロガネーゼの語源にもなったミラネーゼMilanese
(ミラノッ子)とは区別されていますから、要注意。
インターネット・ラジオで
イタリア局の特集番組などを聴きましたが、
リスナーたちは言いたい放題。
ユーヴェはモンテーロを
左で使ったのがいけない、とか
結局ミランの構築力が勝っていたのだ、など。
最後は、スクデットはユーヴェが持って行ったから
チャンピオンズ・リーグ優勝はミランで良いのだと、
無理矢理なまとめに入る人もいたり。
ところで、フランコさんの今回の原稿、
思いのほかそっけない感じでしたが、
これには思い当たる理由があります。
ミランの勝利は良いのですが、
後ろにベルルスコーニ首相がついているのが、
手放しでは喜べないのだと思います。
ひとりのカリスマ的人物が
政治経済の力を集中していくと、
歴史的にはロクな結果にならない例が多いのです。
これが必ず良い風がその人物に向かって吹くもので、
そのプロセスの中で
自分を神格化し始まるとまずいのです。
現イタリア首相がそういう人物でないことを、
パオロ・マルディーニの息子の時代まで
平和な地球であることを、祈りましょう。 |
翻訳/イラスト=酒井うらら
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フランコさんのホームページはこちらです。(日本語もあるよ!) |