フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ピッポとジジと
トラパットーニ。


ピッポとジジという愛称は、
イタリアでよく使われますが、
この愛称を持つふたりのサッカー選手が、
次期のヨーロッパ選手権への
イタリアの参加資格権の獲得のために、大活躍しました。
参加資格をかけた最後の試合で
アズーリ(イタリア・ナショナルチーム)が対戦するのは、
アゼルバイジャンのアマチュアですから、
まず問題なく勝てるでしょう。
彼らふたりの今までの活躍が
イタリアのヨーロッパ選手権参加を、
すでに可能にしたと言えます。

ここで言うピッポはフィリッポ・インザーギ、
ジジはジャンルイジ・ブフォンのことです。

ポルトガルも目の前さ!


ピッポは9月6日土曜日に
ミラノのサン・シーロ競技場で開かれた
ガレスとの対戦で3本のゴールを決め、
イタリアに4ー0の勝利をもたらしました。
その翌週の水曜日、こんどはベルグラードで、
セルビアに1ー1と追いつくゴールを決めたのも
ピッポでした。
ね、大活躍でしょう?

ベオグラードではジジも素晴らしかったです。
彼もアズーリのヒーローですからね。
ジジは決定的なシュートのキャッチを、
試合の終盤で3回やってのけました。

あまり素晴らしい守りだったので、
試合の後でトラパットーニ監督はこう明言しました。
「僕らはジジの手柄のおかげで、ポルトガルへ行けるだろう」

そういうわけでイタリアでは、
この高レベルな国際的晴れ舞台についての話題のあれこれが、
またもや盛り上がってきています。

そう、ポルトガルへ行く、というのは、
来春の末にポルトガルで開かれる
ヨーロッパ選手権に参加できる、
という意味なのです。

参加できるかって? イタリアが?
当たり前でしょとお思いのみなさん、
実はアズーリはずっと苦しんでいたのです。
昨年のW杯で韓国に破れた時には、
失望も頂点に達していました。
その失望を乗り越えて、
ポルトガルではイタリアが再び注目を集めるでしょう。

情熱を取り戻した
トラパットーニ


最近のアズーリの試合では、
64才のトラパットーニ監督が、
まるで少年のように燃えています。
不老長寿の妙薬、永遠の若さをくれる秘薬でも
手に入れたんじゃなかろうかと思えるほどです。

彼の青い目は幸せに満ちています。
髪は老け急いでしまった
おじいちゃんという感じの銀色ですが、
肌はスベスベのピカピカで、赤ちゃんみたいです。

情熱を取り戻すということは、
こんなにも素敵なことなんですねえ。
W杯で韓国に負けた後には、
彼の情熱は永遠に色褪せてしまったかとさえ
思えたんですが‥‥素晴らしい復活です。

僕が直接に聞いた彼の声は、
少なくも20才くらい若返った声でしたよ。
ユベントスを率いて、
スクデット(イタリアリーグ戦優勝の印)を
なんども勝ち取っていたころの、
あの彼の声、そのものです。

その若々しく蘇った声で、
イタリア人たちをいまだに苦しめる
あの韓国との試合についても、
トラパットーニはきちんと語ってくれました。

「あの負けから立ち直るのに、1年くらいは必要だった。
 あの負けは僕らを苦しめたが、反省もさせてくれたし、
 僕らを成長させてくれたよ」

この1年、トラパットーニのアズーリは苦しみました。
W杯に参加した選手たちは、多少の差はあるにしても、
インザーギ、ヴィエリ、ブフォン、デル・ピエロ、
カンナヴァーロ、ネスタ‥‥
みんな同様に苦しんだのです。

そして、苦しみの中でアズーリは理解したのです。
もしイタリアが、各国の名声と名誉とをかけて闘う
最高レベルの大舞台に
自分たちが、また戻りたいなら、
犯してしまったミスを、逆に宝にしなければならないと。
早く忘れてしまうのではなく、
そのことを深く考察してこそ、
同じミスを繰り返さないで済むのだと。



去年のW杯では、
トラパットーニは小さいことを考えすぎました。
他の国に較べてのイタリアの利点は、
そんなに大きなものではなかったのですが、
彼は、それだけを必死に守ろうとしてしまいました。
対韓国戦で、ひとりのアタッカー(デル・ピエロ)に
ひとりのミッドフィルダー(ガットゥーゾ)を組ませたのも、
その姿勢の現れです。

これは韓国にとって都合の良いポジションでした。
イタリア側のフィールドの真ん中でも、
デル・ピエロを怖れずに体勢を立て直し、
攻撃に出られたのです。

で、トラパットーニは、
今度は大きい視野で考えることにしました。
「派手な攻撃に出るイタリア」の方向に転換したのです。
「攻撃手デル・ピエロには
 ヴィエリとインザーギのふたりを付ける。
 あとは、故障で休んでいるトッティの帰りを
 待つばかりだよ」

これは僕の予想ではなくて、
トラパットーニが言っていることですよ。
楽しみですねえ!

訳者のひとこと

読者のみなさんの中に、
イベントの前に盛り上がりすぎて
本番では疲れている、
というタイプのかたはいらっしゃいますか?
私はこのタイプなのですが、
イタリア人にもこのタイプは多いように
思います。
あ、いえ、アズーリの活躍を
危ぶんでいるのではなくて・・・
イタリア人て、ときどき子供みたいで
可愛いんですよ、という意味です!!

イラストのタイトル
Trapattoni dolorosoは、
苦しみのトラパットーニ、という意味です。
どうも、嬉しい様子より
気の毒な感じのほうが絵になるんですね、
これが。

翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-09-15-MON

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