フランコさんのイタリア通信。 |
イタリア・サッカーの現状、 なんたることか! 残念なことに、 イタリアのサッカーは堕落しつつあります。 転げ落ちることはたやすく果てしないと言われますが、 さすがの僕も近ごろでは悲観的になっているんです。 イタリア・サッカーの未来に、 どうも希望の光が見えてこない──どころか、 未来は暗黒を告げているようにしか、思えないんです。 それは経済的にも、そして、技術的にも。
イタリア・サッカーの全国リーグである セリエAには18のチームが属しています。 この中で借財のないのは、 ボローニャ、サンプドリア、ユベントス、ウディネーゼの たった4チームだけ。 セリエAは日本ではJ1ということですよ、 考えられない事態でしょう? この4チーム以外は、 深刻な経済的問題をかかえています。 いちばんの人気を誇るミランとインテルも 借金をかかえていますが、 ミランはベルルスコーニ、インテルはモラッティと、 いずれも私財を投じてくれる大金持ちが会長ですから、 この2チームのことは置いておくとして、 残りのすべてのチームが破産の危機にあるのです。 数カ月前、まさにこのサイトで、 僕はラツィオとパルマの困難について書きましたね。 困難は解決されないまま、 それぞれのチームの元会長は、 とうとう逮捕、投獄されています。 セルジョ・クラニョッティは ラツィオの親会社である食品生産会社チリオの、 同様にパルマのカリスト・タンツィも 食品大企業パルマラットの、 とんでもない経営状態の責任を問われているのです。 両チームとも、 事実上、カンピオナートのシーズン開けから 選手たちに給料を払っておりません。 払えないんです。 シーズンの終わりには、 より優秀な、つまり高値のつく選手たちから 売りに出さざるを得ないでしょう。 すでにパルマはアドリアーノをインテルに、 そしてラツィオは、 やはりインテルにスタンコヴィッチを、 それぞれ譲渡しています。 パルマは期限付きで中田を ボローニャに出してもいますね。 もうひとつの大組織であるローマも、 破産の崖ッぷちにいます。 その借財は10億ユーロを超えるとも 言われています。 じつはローマにはチーム譲渡の話がありました。 ローマを買おうとしていたのは、 ロシア最大の石油会社ナフタ・モスカです。 同じロシア人のアブラモヴィッチが イギリスのチェルシーを買ったのに刺激されたのでしょうが、 ローマの借金の多さに驚いたらしく、 最後の段階で交渉から手を引いてしまいました。 ローマの会長であるフランコ・センシは高齢です。 しかも心臓の重い病気を持っています。 そんな彼は早くローマを売りたいのですが、 買い手がみつかりません。 チームごと売れないのなら 選手たちをばらして売るしかないでしょうから、 シーズンの終わりには、より優秀な選手たち、 トッティ、カッサーノ、エメルソン、キブ、サムエルらが、 売りに出されることが予想されます。
イタリア・サッカーは経済の破滅とともに、 その技術面でも衰えを見せています。 ヨーロッパで最も重要でリッチな大会である UEFAチャンピオンズ・リーグでは、 去年は上位3位まをでイタリアのチームが占めました。 優勝したミラン、 遂に因縁のマンチェスターを下したユベントス、 そしてインテルです。 今年はどうでしょう、 ヨーロッパの8強に残れたイタリア・チームは、 ミラン、ただひとつだけです。 ラツィオとインテルは グループステージで、すでに敗退しております。 ユーベはノックアウトラウンド2nd legで、 3月9日にスペインのデポルティーボに負けてしまいました。 ミランだけが、 スパルタプラハに4−1で勝って8強入りしたのです。 これを受けてイタリア政府には、 ローマやラツィオといった大都市の組織を 破産から救う為の介入の請願が、 たくさん寄せられました。 政府はEUの条例に反さない解決を考え中です。 すでに、 国への借財、要するに未払いの税金の、 10年延期の処置はとってあります。 これだって、いくら応急処置とはいえ、 ほかのヨーロッパのチームがきちんと 税金を納めていることを考えれば、 イタリアのチームだけを優遇するという意味では、 たぶん不法な解決策でしょう。 とうぜんEU議会は、 これでは合法的な競合にならないと抗議し、 イタリアは、そんなことはない、まったく合法的だと 逃げまくっています。 さて、ミランの借金を自分で返し続けている シルヴィオ・ベルルスコーニ会長ですが、 事ここに至っては政府の頭としても、 いよいよ窮地に追い込まれつつあります。 (だから言わない事じゃない、 あんまり自分勝手をやりすぎるから こういう羽目におちいるんですよ。) ヨーロッパ中から突き上げられているだけでなく、 ローマやラツィオなど大チームが 破産寸前なのですから、 春の選挙では多くの票を失うに決まっています。 多くのティフォーゾたちが、 破産の責任は首相の悪政にあると、 彼を責め立てるのは目にみえています。 ベルルスコーニだって、 この事は、もはや良く知っているはずです。 牢に入る、恥をかく、試合に負ける、借財に沈む‥‥ 厚顔な彼はなんでも耐えるかもしれませんが、 ひとつだけ、どうしても許せないことが彼にはあります。 次の選挙で票を失うこと、 なんとも、はや。
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2004-03-15-MON
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