フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

八百長ゲーム。

僕の愛する日本のみなさんに、
毎週お届けしているこの「イタリア通信」で、
僕は、イタリア・サッカーの美しい面ばかりでなく、
影の顔も正直に描いてきました。
残念ですが今週もまた、醜い出来事について、
ご報告しなければなりません。

イタリアのサッカーは
もう世界一の金持ちではないし、
世界一美しくもないと前にも書きましたが、
そこに、もう世界で一番正直でもない、と
加えなくてはなりません。

むしろ、借財とけがれに満ちたサッカーに
なってしまったようです。

まるで1980年にもどってしまったみたいです。

1980年のスキャンダルを
思い出してみましょう。


その年にも、イタリアのサッカー界を震撼させる
不正行為が摘発されました。
八百長ゲームを仕組んだということで、
有名な選手の何人かと、
なんと当時のACミラン会長までが、
イタリアの警察に逮捕されたのです。

つかまった人物たちは、
ゲームの勝敗をあらかじめ秘密裏にを決めておいて、
それに賭けるように合意していました。

もっとも注目された関係者のひとり、
パオロ・ロッシは、
ペルージャとナショナル・チーム(アズーリ)の
センター・フォワード選手でした。

逮捕されたACミランの会長は有罪でした。
そしてその時のスポーツ裁判では、
ACミランとラツィオがセリエBに降格され、
選手数人も5年間の資格剥奪に処せられました。

件のパオロ・ロッシですが、
資格剥奪のたった2年後にもう復帰を許され、
このことは大いに世間を騒がせました。
彼を復帰させたフェデレーションの意図はみえみえでした。
事件の2年後、つまり1982年には
W杯スペイン大会がありましたからね。
当時のアズーリがW杯で大活躍し
勝利を納められたのは、
まさにパオロ・ロッシのゴールのおかげでした。
彼を復帰させる以外は考えられなかったのです。

さて、イタリアには、
みなさんもご存じでしょうが、
サッカーくじ、トト・カルチョがあります。
ですからサッカーの試合の結果に一般人が賭けることは、
イタリアでは全く合法なのですが、
選手たちが試合の結果に賭けることは、
もちろん禁止されてます。

そして、あれから24年後、
またもや八百長の悪夢が戻って来てしまいました。
悪夢としか言いようがありません。

2004年八百長試合の舞台はセリエA。
いったいなんでこんなことを?!


セリエAの4チームが巻き込まれています。
レッチェ、シエナ、レッジーナ、キエーヴォです。
セリエAは日本ならJ1ですよ、
サッカー界最高峰のチームが八百長をしたのです。

なんということでしょう、
まさに大スキャンダルです。
イタリアのサッカーがモラル面で
こんなにも野蛮になりはて、
世界の中でも汚れきった部類に
属するようになってしまった事を、
自ら決定づけたようなものです。
イタリアのサッカーは
けがれ、法に背き、誰かに調整され、
いんちきが横行しているってね。

選手の協力ぬきには八百長は実現しません。
勝利する、負ける、引き分けるなどの結果を
特別な方法で実現するようにと強要された選手たちが、
もちろん存在するのです。

セリエAの前出の4チームをふくめ、
12チームが一連の八百長ゲームで捜査されています。

今回、この不正に関与した選手たちの中で、
もっとも有名な選手はヴェントラです。

調査の対象には、
組織的なギャングたちも含まれています。
実際に、彼ら特有のやり方で実行された違法行為の、
その連携的犯罪が調査されています。
一方の関係選手たちについては、
最終的には刑事犯罪というよりも
「スポーツ上の違法行為」として
告発されるでしょう。



この捜査の過程で、ある組織からの要求が、
シエナの元ゴール・キーパーの
ジェネローゾ・ロッシ経由で、
トスカーナにあるチームのロベルト・ダヴェルサに
電話で伝えられたという事実が浮上しています。

ロッシからの電話では、
2004年4月18日に実行すべき
ゲームの結果についての要求が伝えられたようです。

このふたりの選手たちは、
キエーヴォ引き分け、アスコリ引き分け、
クロトーネ勝ち、カタンザーロ勝ちなど、
リーグ戦セリエA、B、Cすべてにおよぶ
一連の結果について白状しています。
そしてその「結果の予定」が、
正確に実現されたことは、
この件の判事も指摘しています。
当日のゲームの結果は、こうでした。

キエーヴォ対レッジーナ  0-0
アスコリ対ピアチェンツァ 0-0
クロトーネ対フェルマーナ 3-0
タラント対カタンザーロ  0-1
ルメッツァーネ対トレス  0-0

ふたりの陳述と実際の結果との合致ぶりが
あまりにあからさまで、
ほとんど幼稚でさえあることを踏まえ、
スポーツ司法府も調査に踏みだしました。

リーグ戦の今シーズンは
先の日曜日にすべて終了しました。
これから本格的にスポーツ裁判が
くりひろげられるでしょう。
八百長の罪を問われているチームにたいしては、
降格処分が必至と思われます。

関与した選手たちには、
長い資格剥奪が予想されます。

これが、
かつては世界一の美しさを誇っていた
イタリア・サッカーのこんにちの現実です。
なんという堕落ぶりでしょうか!!


訳者のひとこと

ジェネローゾ・ロッシは、
4月18日以外にも不正が行われたことを
話しはじめているようです。
ところで、
パオロ、ジェネローゾ、フランコ、と
ロッシさんが揃い踏みのような今回ですが、
この名字はイタリアでは
とてもポピュラーなのです。
ちなみに「フランコ・ロッシ」と
同姓同名さんには、
有名なバイオリニストが、
かつて居たそうです。

翻訳/イラスト=酒井うらら


フランコさんのくわしいプロフィールはこちら。

フランコさんのホームページはこちら。(日本語もあるよ!)

酒井うららさんのイラストをまとめて見るならこちら。

フランコさんへの感想などは、
メールの表題に「フランコさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ろう。

2004-05-17-MON

BACK
戻る