フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

フィオレンティーナのモンドニコ監督は
ナカタをどう見ているんだろう?




中田英寿選手がフィオレンティーナに移籍したことは、
みなさんも、もうご存じでしょう。
今回は、そのフィオレンティーナの監督である
エミリアーノ・モンドニコの
記者会見の様子をお伝えします。

監督と会長が、ナカタを呼んだ。

写真のフラッシュのきらめきと、
テレビカメラがたてる虫の羽音のような
静かなうなりに囲まれるようにして、
エミリアーノ・モンドニコ監督は現れました。
50人ほどの記者が彼を待ち受けていましたが、
その中には12人ほどの日本人記者もいました。

フィオレンティーナの
エミリアーノ・モンドニコ監督にとって、
中田から最初に受けた印象は、
嬉しい驚きだったようです。
モンドニコは、中田英寿の最初の衝撃を、
こんなふうに説明してくれました。

「彼は偉大な人格者ですね。
 とくに、彼が礼儀正しく紳士的であることは、
 私にはすぐわかりました。
 彼について私に伝えられていた印象とは、
 まるっきり別のものでした」

中田は、フィオレンティーナの紫色のシャツを着る
最初の日本人です。
フィオレンティーナは歴史のあるチームですが、
2002年の組織の破産によって降格し、
この2年間というものセリエCとセリエBで
プレイせざるを得ませんでした。
ようやくセリエAに戻れることが
決まったばかりです。

そんなわけで、
新生フィオレンティーナの再建に向けて、
中田はその礎石ともいうべき存在です。

彼を強力に望んだのは、モンドニコ監督本人と、
東京に大きな靴店を開こうとしている
デッラ・ヴァッレ会長でした。

モンドニコは続けます。

「中田は、私の監督としての長い長いキャリアの中で
 持った様々な選手たちの中でも、
 まちがいなく最重要な選手です。
 私はヴィエリなどの
 偉大なチャンピオンたちも持ちましたが、
 この日本人がその開放的な微笑みと、
 私を戸惑わせるほどに紳士的な態度で私に与えた印象は、
 他の誰からも受けたことのないものでした」



フィオレンティーナ、再建なるか?!

セリエAから姿を消して2年間、
今やすっかり忘れられてしまった格好の
フィオレンティーナは、
高いレベルを再建するための「質の向上」に
ねらいを定めてくるのでしょう。

モンドニコの考えは、こうです。

「サッカーは足でプレイするものでしょうが、
 それより先に頭でプレイするものです。
 筋肉や、身体のほかの部分にサインを送るのは頭脳です。
 それが素早く行われるほど、チャンピオンたちの質を
 最大限にたかめるのです。
 中田の思考力の早さは衝撃的です。
 サッカーが人気の高いスポーツでありつづけるには、
 彼のような豊かな才能の選手たちを必要とします。
 長く記憶に残り、
 また次のゲームでも出会いたいと期待させる
 感動を与えることのできる選手たちが不可欠なのです」

中田はフィオレンティーナのティフォーゾにとって、
80年代のスペインの世界的チャンピオンである
アントニョーニや、
90年代初頭のロベルト・バッジョの
後を継いでくれる選手です。

モンドニコは明言します。

「中田は、ボールを足に捕らえた時に
 素晴らしい計画を創作できるエンジニアです。
 彼は幾何学的な厳密さと、
 プレイの想像力と、
 ゴールへの良い勘を持っています。
 中田とフィオレンティーナは、
 イタリアサッカーの来シーズンに起こるであろう
 偉大な出来事のなかに、数えられることでしょう」

モンドニコは日本のサッカーについても、
たいそう情熱的のようです。

「サッカーの未来はアジアにありますし、
 日本はその最前線にいます。
 最後のW杯では不運にもトルコに負けましたが、
 それは経験不足の失敗によるものであり、
 優秀さが足りなかったのでは、ありませんでした。
 ヨーロッパ・サッカーの犯した間違いを
 くり返す事さえ避ければ、
 日本のサッカーには大きな未来が広がっています。
 好奇心と興味との間には大きな違いがあり、
 アメリカ合衆国でサッカーが事実上崩壊したのは、
 好奇心だけが先行したからです。
 日本は興味と情熱を持っていますから、
 大いなる未来がひらけていると、
 私は確信しております」

そして未来に向けたこの見通しのなかで、
中田は根本的に大きな意味を持っていると
モンドニコは考えています。

「成長するには偉大な手本が必要ですが、
 中田は、まさにその手本です。
 日本人選手のなかでは、
 彼はまちがいなくナンバーワンでしょう。
 私はフィレンツェの街が彼に合っていると思いますし、
 フィオレンティーナは彼にとって
 理想的なチームだと信じています。
 これは賭けても良いですが、
 フィオレンティーナの紫のシャツが
 彼のキャリアのなかで最も素晴らしいカンピオナートを
 闘わせてくれるにちがいありません」




訳者のひとこと
さて、モンドニコ監督のこれらの発言は
日本報道陣向けの「建前」で、
じつはその後、スタメンの確約はないと、
イタリアの某テレビ番組で同監督が衝撃発言、
というようなニュースも日本では流れたわけですが、
これでいざシーズンが開幕すると、
また状況はまったく別物だったりするのが
イタリアです。
「あの時はあの時、今は今、
 そうじゃなきゃ歴史だって移り変わらない」
この千変万化がイタリア式というものです。
ローマの道で運転できれば
世界中のどこでも恐いものなしと言われます。
誰も信号なんか見ていないから。
セリエAで鍛えられれば
世界中に恐いものなし???
Forza Hide!!!

翻訳/イラスト=酒井うらら


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2004-07-26-MON

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