フランコさんのイタリア通信。 |
UEFAチャンピオンズ・リーグ、 金の湧き出る泉。 愛や名誉のために勝利をめざすのは美しいことですが、 先立つものがなくては何もできません。 そう、お金が全くなくてはね。 だから「お金のために試合に挑む」という場合も 出てくるのです。 今回は、そんなお話です。
サッカーはたくさんの要素をふくんでいます。 ティフォーゾや愛好家たちにとってのサッカーは、 感動がつぎつぎと湧き出る泉みたいなものです。 いっぽうで組織の側、 特に企業として営業管理をしている人々にとっては、 お金がつぎつぎと湧き出る泉でなくてはいけません。 UEFAチャンピオンズ・リーグに参加することは、 大きな収入の可能性が期待できるということでもあります。 イタリアサッカーの歴史的な2大チーム、 インテルとユベントスは、 8月24日と25日にあいついで参加資格を獲得しました。 他の2大チームのACミランとローマは、 昨シーズンのカンピオナート(イタリア全国リーグ戦)で 1位と2位をとっていますから、 その時点で参加資格を自動的にもらっています。 つまり、参加のための「試験」を受ける必要は ありませんでした。 インテルは対バーゼル(スイス)戦に、 ユーべは対ジュールガルデン(スウェーデン)戦に、 それぞれ勝利しただけで、 もう1500万ユーロ稼いだことになります。 これはUEFAが最終段階まで残るチームに支払う金額です。 まさにインテルとユーベは、 イタリアサッカー界で最高額を支払われる ふたりの監督と契約したばかりです。 インテルの契約したマンチーニは300万ユーロ、 カペッロは、さらにもう少し高額な監督です。 高額金が動いたこれらの移籍が、 メルカート(サッカーマーケット)を 活気づけもしました。
大金を払ってカペッロを雇ったユベントスですが、 経営面ではきゅうきゅうとしています。 アニェッリ一族、つまりチームの親会社である FIATグループから直接の運営を受けられなくなったのです。 それでもチーム独自に揃えた経営陣は、 彼らの仕事に説得力をもたせねばなりません。 それを考えると、 高額なカペッロがユーべに採用されたのは、 シーズン中に勝利をつかめなかった場合の言い訳を、 あらかじめ作るためだったと思われます。 「われわれは、やるだけの事はやりました。 最高額の監督だって導入したじゃありませんか」ってね。 2年前までは、もしユーべが赤字決済になった場合、 アニェッリ一族が介入して、 借りをなくすために必要な金額を入れたものでした。 今は、それが期待できないのです。 今や、親会社に頼れないユベントスは 自分自身の財力で切り盛りするしかしかありません。 そのためにもUEFAチャンピオンズ・リーグの 出場資格を獲得することは、 たいへんに重要だったのです。 スウェーデンで、4対1で勝ちましたから、 ユーべは少しはゆったりした気持ちで シーズンを迎えられるでしょう。 イタリア全国リーグの カンピオナートで優勝することも大切ですが、 こちらは賞金がゼロなのです。 カンピオナートに優勝したチームは、 翌年、勝者のしるしの白赤緑の三角ワッペン 「スクデット」をシャツに縫い付けてプレイできますし、 優勝カップももらえます。 でも、それだけ。 賞金はありません。 だからこそ、クラブチームにとっては、 UEFAチャンピオンズ・リーグを勝ち進み、 高収入につなげることが、 現実的な課題にもなってくるのです。 優勝でもしようものなら、 5000万ユーロも勝ちとれる可能性があるのですから。 そんなわけでユーべは高額をはたいて カペッロを監督にむかえました。 いっぽうのインテルは、 セリエA(カンピオナート最高リーグ)のなかでも 最も若い、まだ30才代のマンチーニを雇いいれました。 インテルも少し前までは、 経済的に困ってはいませんでした。 イタリア有数の大金持ち、モラッティが会長だったころは 彼が赤字を埋めていたからです。 彼がオーナーでありながらも 会長の座を退いた今シーズンは、 メルカートでも節約しています。 8月24日の対バーゼル戦での勝利は、 優勝をめざすにあたっての うれしい足掛かりになったでしょう。
でも、勝利の夜のインテルのヒーローは マンチーニ新監督ではなく、 ブラジル人アタッカーのアドリアーノでした。 インテリスタ(インテルのサポーター)の胸は、 かつてのアイドルだった忘れがたいロナウドのあとを アドリアーノが継いでくれそうだという期待で、 大きくふくらんだと思います。 アドリアーノは素晴らしい2ゴールを決め、 会場だったサン・シーロ競技場では、 観客たちが文字通り狂喜乱舞しました。 すでに彼には「皇帝」というニックネームが ついているんですよ。 「アドリアーノ」は、 約2千年前に、ローマ帝国の文明に最高の輝きをあたえた 皇帝の名前と同じなのです。 インテルは、 アドリアーノという名前の現代の若き「皇帝」が、 インテルの過去の栄光を 再びもたらせてくれることを願っています。
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2004-08-30-MON
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