フランコさんのイタリア通信。 |
ヴィエリ移籍か?! ACミランの会長であるシルヴィオ・ベルルスコーニは 「ほどほど」ということを知らない男です。 特に自分のACミランに関わることについては。 彼がイタリア政府の首相でもあることは、 ここで何回も書きましたが、 ぼくらの首相はしばしば法律や大臣たちを ほったらかしにします。 それも必要に迫られてというよりは、みずからすすんで。 じゃあ何をしているのかというと、 そうです、ACミランについて考えているのです。 どうもこの人は、自国の未来よりも 自分のサッカー・チームの将来に その身をささげているようです。
昨年のインテルとのある対戦の後、 ほどこすべき戦術や ピッチに送りだすべき陣形を説明した文書を、 アンチェロッティ監督に送るつもりだと 彼はテレビで公言しました。 そう、ベルルスコーニはアンチェロッティのやり方が 気に入りません。 ACミランを、そんなふうにプレイさせてどうすると、 いつも文句を言っています。 11月の頭にモスクワを訪れていたベルルスコーニが、 プーチンとの対談の合間にブッシュに電話をかけ、 それからアンチェロッティを叱る電話をかけたと 先週も書きましたが、彼は新聞記者たちと サッカーの話をする時間も見つけていたのです。 ACミランのいくつかのゲームは「受け入れ難い」と、 彼はそこで断言しました。 ローマやブレシャとの引き分けの数々を見れば、 問題はアタッカーにあることは明らかだ。 インザーギは手術をしたし、 クレスポは選手としてはもう終っているな。 だからアタッカーが足りんのだよ。 とのことでした。 たしかに、現状はそのとおりです。 ひとり健在のシェフチェンコが得点しなければ、 ACミランには他に得点する者がおらんではないか‥‥ というわけで、 ベルルスコーニはある事を考えつきました。 ヴィエリだ、ヴィエリがいた、ってね。
ヴィエリの恋人で、別れて戻ってをくり返してはいますが、 今はまたよりをもどしているエリザベッタ・カナリスが 仕事をしているテレビ局のオーナーは、ベルルスコーニです。 ヴィエリを口説くなら、この立場と、この恋を 利用しない手はないというものです。 イタリアでは1月に4週間のメルカート、 サッカー・マーケットが再開します。 ベルルスコーニのもくろみどおりに行けば、 少なくも4月まではプレイできないであろう インザーギを待つあいだ、 孤軍奮闘しているシェフチェンコのパートナーに、 ヴィエリがつく可能性があります。 ヴィエリと彼の所属するインテルとの 相愛関係がくずれてから、もうずいぶん経ちます。 インテルのオーナーであるマッシモ・モラッティは、 この夏のメルカートで彼を売ろうとしました。 でもヴィエリの値段が高くなり過ぎているのが原因で、 買い手がみつからなかったのです。 ベルルスコーニは、欲しいとなったら 金に糸目をつける男ではありません。 こうと決めたら、値段が上がり過ぎていても、 ヴィエリを買うことを、彼は「命令」しました。 費用はかかるだけ、かけてば良い、ってね。 インテルは8月に、ヴィエリではなくて カンナヴァーロをユベントスに売りました。 そのカンナヴァーロのお陰でユーベがカンピオナートを 制覇しようとしているのですが、それでもまだ、 インテルはヴィエリを売りたがっています。 この夏にヴィエリが譲渡されるはずだった時、 彼の長年の友人でもあるマンチーニ監督は 彼をサルデーニャ島の豪華なヨットに招待し、 短いバカンスを一緒に過ごしました。 その時のことは新聞各紙が報道しました。 ヴィエリは長くインテルでプレイして来ましたが、 このところ彼はインテルを絶望させ続けています。 今はマンチーニ監督とさえ、 感覚が合わないように見えます。
そしてもうひとつ、 この移籍問題の結果を決定的にするかもしれない 事情があります。 インテルは、ゴール・キーパーを探しているのです。 そしてACミランは、 キーパーをひとり余分に持っています。 アッビアーティです。 構図が見えて来ませんか? ヴィエリとアッビアーティを交換できれば、 1月のメルカートでもっともセンセーショナルな 移動になりそうです。 全員にとって好都合に思えますねえ。 センター・フォワードが欲しいACミランと、 キーパーが欲しいインテルはもちろん、 チームを変えたいけれど街は変えたく無い ヴィエリにとっても、 同じミラノのACミランへの移動なら良いでしょう。 そして、ヴィエリの恋人にとっても好都合のはずです。 彼女はベルルスコーニのテレビのネットワークでの地位を、 補強したがっているにちがいありませんから。 エリザベッタ・カナリスは、 決してトップスターではありません。 いくつかのカレンダーでヌードになったり、 (イタリア男たちは女性のヌードのついた カレンダーが好きなんですよ) 日曜日のある番組でカンピオナートを コメントしたりしていますが、 最前線の役にはついたことがありません。 ヴィエリがACミランに来てくれれば、 彼女にも新しい扉が開くかも知れません。 ベルルスコーニは、 ヴィエリをACミランに呼ぼうとしています。 そして彼は、夫人になるであろう恋人の言葉が 男にとっていかに決定的であるかを、知っています。 サッカー選手がチームを変えると、 新しい色への、つまり移動先のチームの色への 「愛」のためだと、決まって言われます。 イタリアではチームの色に「愛」が ささげられるのです。 ヴィエリの場合、もしこの移籍が実現すれば、 それは愛のためと言えるでしょう。 それも本物の愛のため、ということです。
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2004-11-15-MON
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