フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

イエローカード、レッドカード、
そしてグリーンカード。


サッカーの試合の審判は2種類のカードを持っています。
イエローカードとレッドカードですね。

悪質なファールはイエローカードで罰せられ、
この種類のファールを2回するとレッドカードが登場し、
その選手は退場させられます。

よほど悪質なファールには、
いきなりレッドカードが出され、そうすると
そのチームは対戦相手より1名少ない状態で
闘うことになってしまいます。

イエローカードやレッドカードは、
過ちを犯した選手への罰ということです。

ではファールをしなかった、
いやむしろ正しい態度を示した選手には、
なんで「ごほうび」が与えられないのでしょう?

競技場に、子どもたちが
来られるように。

サッカーは世界中で大変に人気のあるスポーツです。
それは理解しやすく、誰でもプレイすることができ、
子どもの時から始められるスポーツだからです。

ところが今年イタリアでは
競技場での観戦者数が減りました。
人びとがテレビで観戦する方を好んでいるのか、
ともかく人々は、とくに子供たちは、家族連れは、
もはや競技場に行かないのです。
競技場が、どんどん「家族向き」の健全な場所では
なくなっているのですからしかたありません。

グランドでは選手たちが殴り合いです。
スタンドでもティフォーゾたちが罵倒しあい、
こちらもすぐに殴り合いです。
サッカーの試合のある日曜日ごとに事態は悪化しています。
イタリアでは本物の暴力団員たちが、騒動をおこすために、
重要なゲームがある時をねらって待ち合わせていると、
ミラノ警察署長が最近、そう言っています。
イタリアでは政治的にも、さまざまなギャング団が
暗躍していると言われますが、
そのギャング団が本性を発揮して、
競技場であばれているというのです。
自分たちの暴力的な本能のはけ口として、
競技場のような人込みの場を利用している、と。
こんなふうに「おとなたち」が
サッカーをめぐって殴り合い、侮辱しあっているんじゃ、
子供たちへの良い手本を示すことなんてできませんよね。

事態を憂慮したイタリアのフェデレーションは、
イエローカードとレッドカードのほかに、
緑色のカードを制定しました。

それがグリーンカードです。



フェアプレイに「ごほうび」を。

グリーンカードは今のところ、子供達の選手権の試合中に、
目立ってフェアなプレイをした選手やチームに対して
審判の判断で出されることになっています。

FIGC(Federazione Italiana Gioco Calcio,
イタリア・サッカー・プレイ・フェデレーション)は、
ユース&学童部門のFuoriclasse Cup
(フォーリクラッセ・カップ、最優秀杯)を含む
いくつかの活動に、
グリーンカードを導入することを決めました。

まず手始めに、街ごとの大会で
これを実行することになりました。
予定されているゲームのすべてに適用されます。
この部門には8階級あり、昨年は
46都市1650校が参加しています。

審判からチームまたは選手に渡されるグリーンカードは
点数に換算されます。

街ごとのシーズンのゲームがすべて終了した時に、
8階級すべてのチーム中で一番多くのグリーンカード、
つまり点数を集めたチームが、
フェアプレイ賞を勝ち取るのです。
各都市に1チームずつ、
フェアプレイ賞チームが生まれることになります。

グリーンカードをもらえるケースとして、
ペナルティではないのに審判が笛をならし、
ファールを受けたと判定された少年が審判にむかって
「ペナルティじゃありません、ぼくがつまづいたんです」
と申告した場合なども考えられます。
黙っていれば、審判の責任で
ペナルティキックのチャンスを
ものに出来たかもしれないのに、
本当の事を申告したフェアな彼には、
もちろん「ごほうび」のグリーンカードが
渡されるでしょう。
それから例えば、
仲裁に入った少年も
グリーンカードをもらえるでしょう。

少年の時期に
「フェアプレイ」を身に付けた彼らが成長し、
プロの選手になった時、イタリアの競技場には
大いなる公正と、ひきつぐべき素晴らしい見本があふれ、
暴力はなりをひそめることを、ぼくは強く期待しています。
そうなれば、これこそは
ひとつの素晴らしいゴールです!

訳者のひとこと
人生経験の長い私といたしましては、
先の先まで考えたくなってしまうのです。
つまり、優勝にはほど遠いから
フェアプレイ賞ねらいというチームが
続出したりしないかしら?
妙に譲り合うゲームがふえちゃったりして‥‥
なんてことにはならないかと。
やっぱりこれは考え過ぎかな?
翻訳/イラスト=酒井うらら

2004-12-20-MON

BACK
戻る