フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

アルベルト・ジラルディーノが
ACミランに行くかもしれない理由。


今週は、イタリア代表チーム、
アズーリに登場した若きヒーローのお話。
そして「感謝の気持ちの表し方もいろいろある」
というお話です。
そう、「感謝する気持ち」は、
ひたすら闘いの場とも思える
イタリア・サッカーの世界にも存在するんです。

2006年W杯にむけて、
期待される人、されない人


イタリアにとって2006年W杯への予選リーグは、
そんなに困難なものではありません。
そして、W杯への出場を決める試合のほかに、
アズーリは数々の親善試合を予定しています。

アズーリを率いるマルチェッロ・リッピ監督には、
どうもまだ采配ぶりに不安が残りますね。
勝つための、明らかなアイデアを持っていないらしい。
なにしろ、2月9日にカリアリで行われた対ロシア戦では
ヴィエリをプレイさせたのですから。
ヴィエリが昨年のUEFAヨーロッパ選手権で、
人々をがっかりさせたことを、忘れちゃったんでしょうか。
がっかりさせた、と言えば
アレッサンドロ・デル・ピエロですが、
ユベントスは彼をすでに予備軍に入れていて、
リッピは彼を、この試合に召集していません。
それなのに昨年の6月のポルトガルで、
がっかりだったことに変わりないヴィエリを、
ロシア戦でプレイさせるなんて‥‥。

一方でパルマのセンターフォワード、
アルベルト・ジラルディーノは、
まさにこのUEFAヨーロッパ選手権で、
多くの人たちから同情されました。
当時のアズーリの監督はトラパットーニであり、
彼は若い選手たちにプレイさせることに、
いつも反対でした。
「若いというだけでジラルディーノに
 プレイのチャンスがないなんて?!」と、
人びとは同情しました。

トラパットーニに代わって監督になった
マルチェッロ・リッピ監督は、
ロシア戦の前半戦終了後にヴィエリを降ろし、
ジラルディーノを投入しました。
ジラルディーノはイタリアのカンピオナートで、
3日前のインテルとの試合で
オーバーヘッドの見事なゴールを
決めたばかりでしたからね。


アズーリ番の記者たちが
ジラルディーノの使用を長いこと熱望していることもあり、
彼も、この対ロシア戦は自分に光をあて、
リッピに彼のプレイを納得させるチャンスだと、
理解していました。

7月に23才になる若いジラルディーノは、
多くの若者と同様に気が長くはありませんでした。
チャンスは待たずに取りに行くという勢いで、
11分後にはもう見事なゴールを決めていました。
ほとんどエンドライン左から右への大きなシュートを、
めったには見られない力強さでゴールさせたのです。


カリアリの競技場にいた観衆は、
止まらないほどの喝采で喜びを表しました。
かつてアズーリのアタッカーとして
誰よりも多くのゴールをしるし、
カリアリではアイドルだったことのあるジジ・リーヴァも、
この喝采に参加していました。
カリアリのナンバー11、
もっとも多くのゴールを決めた
ジジ・リーヴァのナンバーは、
永久欠番になっています。
これは現在60才のジジ・リーヴァが
涙と共に受け取った栄誉です。
この日、カリアリの観衆たちが送った
ジラルディーノへの喝采は、
ジジ・リーヴァに彼らが抱いていた思いに近い、
愛情に満ちた喝采だったと思います。

そんなジラルディーノが
ACミランに行くかもしれません。


ジラルディーノはその時点で、
イタリア代表チームの正規のセンターフォワードに
なったと思います。
ドイツでのW杯では、
彼は正選手としてプレイするでしょう。

ジラルディーノは現在パルマの選手で、
彼のゴールはパルマがセリエBに格下げされないために、
大いに貢献しています。
でも、彼は近い将来、きっと、
もっと大きなチームで活躍することでしょう。
というのも、来る6月のサッカーマーケットで、
パルマがジラルディーノをACミランに売るであろうことは、
ほとんど確かだとぼくはふんでいます。

昨年夏にイタリア政府は、
借財の多いサッカー組織を救う為の
特別な条例を公布しましたが、
パルマはその「救うべきチーム」の
リストの筆頭に書かれていました。
ACミランのオーナーが首相である政府の作った条例で
パルマは破産をまぬかれました。
そのACミランがアタッカーを必要としているとなれば、
ジラルディーノをACミランに渡さないと
考える方が難しいでしょう。

自分たちに良いことをしてくれた人物への感謝のために、
いや、まさにその人物への「感謝の気持」を表すために、
選手をひとり売ってあげる‥‥
破産という悲劇から救ってくれた人物にね。



訳者のひとこと
日本代表も新人の大黒君が
大活躍でしたね。
予選リーグは困難ではないと言える
イタリアに、よっ兄さん、がんばれ!!
という感じで、W杯決勝での
日本対イタリアというのを見ずに
死ねるかっ、と思います。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-02-14-MON

BACK
戻る