フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

フランコ式メルカート予想、2005夏。

さて、6月になりました。
「夢」を見ていれば、それだけでは勝てなくても、
人生を豊かにしてくれると、
この時期が来るたびに、ぼくは思います。
すべてのティフォーゾたちが、この時期、
「夢」を見ながら来シーズンを待ちます。
ティフォーゾたちの夢が、
ほかのどの時期よりもふくらむのは、
このメルカートの季節なんです。

そしてイタリアサッカーの3大チーム、
ユベントス、ACミラン、インテルも、
カルチョ・メルカートの期間中ずっと、
それぞれの夢を持って交渉にのぞみます。

ユベントスはイタリア全国リーグの
カンピオナートを制したばかりです。
でもUEFAチャンピオンズ・リーグ優勝も、
来年は欲しいですね。
そのために、ユベントスはこのメルカートに
数百万ユーロは注ぎ込もうと決心しました。

ACミランはUEFAチャンピオンズ・リーグで
決勝戦まで行っておきながら、
リバプールの6分間の猛反撃に負けてしまいました。
来期はもっと用意周到に
強い体勢を作っておきたいでしょう。

また、インテルは、6月12日と15日に行われる決勝戦で、
たぶんコッパ・イタリアには優勝するでしょうが、
カンピオナートでは1989年から優勝していません。
来期はカンピオナートでも優勝したいはずです。

イタリアサッカーの中でも伝統的な、この3大チームが、
メルカートも上位で支配するでしょう。
カンピオナートの上位3チームという水準の高さだけでなく、
それぞれの財力も、他のチームが対抗するどころか
最初から桁がちがうと諦めているほどの高さですから。

誰を、どこが、欲しがっているのか?


ユベントスは、
コカイン中毒だとしてチェルシーが解雇した
アドリアン・ムトゥーと少し前に契約しました。
このアタッカーはユーべの白黒のシャツで、
シーズン終了の直前に、
すでにカンピオナートにデビューしています。

でも、6月末から7月はじめにまたがる
カルチョ・メルカートの暑い日々の中で、
ユベントスがローマから
若いアントニオ・カッサーノを入手するための
契約金の一部分を相殺するべく、
そのムトゥーをローマに差し出す可能性もあります。

暴れん坊でも天才なカッサーノは
ユヴェンティーニにとって
そこまでしても手に入れたい、
「夢の男」というわけです。

ユベントスはインテルにも,
MFのクリスティアーノ・ザネッティを
要求しているのですが、あっさり「ノー」と言われました。
インテルは昨年、ユーべにカンナヴァーロを渡しました。
アズーリのディフェンダーでもある彼の活躍もあって、
ユーべは28個めのスクデットを勝ち取りました。
インテルにしてみれば、
「まずった!」というところでしょう。
インテルが譲渡において「まずった!」と
思うようなケースは、
ここ数年間で何回もおきています。

ロベルト・カルロスやロナウドの、
レアル・マドリードへのセンセーショナルな譲渡の他に、
ACミランに売ったピルロとシードルフも、
その後のACミランはスクデットをひとつと、
その年のUEFAチャンピオンズ・リーグ優勝を、
たてつづけに勝ち取りましたから、
彼らの活躍が貢献したのは明らかです。
インテルのオーナーである石油業者の
マッシモ・モラッティは、
今年こそは過去の間違いをくり返したくありませんから、
クリスチャン・ザネッティを要求してきたユーベに対して、
とんでもない選手たちの名前をあげています。
ザンブロッティ、エマーソン、
そして、まさかのデル・ピエロです。
これはどう考えても無理でしょう。
ユーベが彼らの譲渡を受け入れるとは思えませんからね。



デル・ピエロ自身はカペッロ監督との諍いがあってから、
チームを変えたがっているのですが、
ユーべは彼をチームのアイコンである別格の男と
みなしていますから、
彼を手放すことは露ほども考えていません。
最近の日本での親善試合でも、
デル・ピエロがユーベにとって
必要な選手であることが決定的になりましたね。

インテルがほんとうに
欲しがっているのは?


インテルが本当に欲しがっているのは、
ドイツ人のバラックです。
でも彼の所属するモナコバイエルン・ミュンヘンは
少なくも3000万ユーロを要求していますから、
インテルの矛先はウディネーゼのチリ人選手、
ピザーロに落ちつかざるを得ないかもしれません。
彼の値段はバラックの、ぴったり半分です。

さて、ACミランの夢の男はロナウドですね。
先週ここで書いたように、
ベルルスコーニ、ねばっています。
イスタンブールでUEFAチャンピオンズ・リーグ決勝戦を
リバプールに負けた後では、
ロナウド獲得の必要性が、ますます高まっています。

ロナウドはイタリアに戻る気はありません。
マドリードで彼は幸せに暮らし、
ほかでは稼げないほどの金額を稼いでいます。

6月18日にパルマとボローニャの試合があります。
すでにセリエBへの降格が決まっている
アトランタとブレシャの仲間入りをするのは
パルマかボローニャか、それが決まる対戦です。
その後で、ACミランがパルマのジラルディーノを
指名するに違いありません。

ユーべ、インテル、ACミランの「夢の男」たちは、
要するにカッサーノ、バラック、ロナウドなのですが、
夢が実現しているか、それとも、はかない嘆きに終るのか、
一ヶ月後には結果が見られるというわけです。


訳者のひとこと
イタリアには梅雨はありませんから、
春から一気に夏になりますが、
あちらでも「異常気象」のようで、
ちょっと振り回されぎみと、
ミラノの友だちが言っています。
学年度がこの時期に終り、
進級試験を無事に通れば、あとは
秋までたっぷりの夏休みです。
ただ遊ぶというよりは、
短期の語学留学にでかけたり、
論文などにじっくり取り組む学生も
少なくありません。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-06-06-MON

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