フランコさんのイタリア通信。 |
インテル、コッパ優勝! 「愛されている」という点では、 たぶんイタリアで最も愛されているチーム、 インテルが、7年と1ヶ月ぶりの祝杯を、 やっとあげることができました。 オーナーであるマッシモ・モラッティを筆頭に、 チームのメンバー、そして、 ティフォーゾたち──インテリスタ──の 喜びようと言ったら!! 彼らの最後の笑顔はパリでUEFAカップに優勝した 1998年5月のことでした。 その優勝は、そのころ世界最強のサッカー選手だった ロナウドのお陰でもたらされたものでした。 しかしそれから後のインテルは、 むしろ信じ難い負けっぷりで有名になってしまいました。 6対0でACミランに負けて、 最後の45分間でスクデットをのがす、などなど、 ひどい負け方をいくつもいくつも‥‥ そのインテルに、笑顔がもどったんですよ!
それは6月15日のことです。 インテルはコッパ・イタリアの2回の決勝戦で ローマを下し、優勝に輝きました。 審判が第2回戦の終了の笛を鳴らした時には、 会場のサン・シーロ競技場ばかりでなく イタリア全土で、インテリスタたちの 途方もない喜びの雄叫びが爆発しました。 コッパ・イタリアはイタリアサッカーにとって “最重要”の催しではありませんが、 今回の優勝は、インテルを 7年と1ヶ月の長い悪夢から解放してくれたという意味で、 やはりとても重要だったのだと思います。 マッシモ・モラッティが インテルのオーナーの座に付いて10年が経ちます。 彼はヨーロッパ有数の石油業者のひとりです。 つまり、イラクやイランで原油を買って精製する商売がら、 両国での紛争も間近に見ているわけですから、 どんなタイプの感情の昂ぶりにも動じないはずでした。 でも、インテルのキャプテン、コルドバが サン・シーロの星空に向けて優勝カップを高々と掲げた時、 モラッティは、涙を押さえられませんでした。 そして彼は競技場の更衣室に突進し、 選手たちがまだシャワーを使っている最中の シャワー室に飛び込んで行ったそうです。 選手の中には、 彼をシャワーの水の下に引きずり込んだ者もいたとか! マッシモ・モラッティといえば ファッション面でも常にエレガントで紳士的な人で、 外見の細部にいたるまで気を配る 「伊達男」なんです。 そんな彼が、その夜は、もみくちゃにされながら 選手たちがしたいようにさせたんですねえ。 選手たちと一緒になって踊ったり、 歴史的なライバルである ACミランを逆に讃えてみたり‥‥ 結局のところ彼は、 監督への報奨金をふやす羽目にも おちいっていたんですけどね。
ロベルト・マンチーニが約1年前に 新監督としてインテルに来た時点で、 最初1年間の契約金は特別に高くもない 100万ユーロでした。 ただし、その契約には、 コッパ・イタリアに優勝した場合は倍額に、 カンピオナートかUEFAチャンピオンズ・リーグ 優勝の場合は3倍額にするという項目が付いていました。 たぶんその時のマッシモ・モラッティは こんなふうに考えていたに違いありません。 「まあ、何を約束しても良いだろう、 どうせ、このチームは優勝とは無縁だ」と。 けれども若いロベルト・マンチーニ監督は、 たった1年後に結果を出してしまいました。 これで彼の年間報酬は倍額です。 しかも、モラッティ自身と インテルのティフォーゾたちが、 彼を文句無しのアイドルに選んだという 「おまけ」つきです。 その夜のサン・シーロ競技場では、 スタンドにいた古くからのインテルのティフォーゾたちが、 モラッティと同じように泣きました。 どんなにか、この勝利を待ちわびていたことでしょう。
サッカーについては 色々な人が色々なことを言います。 サッカーは単なるスポーツではないと言う人もいれば、 サッカーは商売の法則に支配されたショーにすぎないと 言う人もいます。 そのどれもが真実か、それに近いように聞こえます。 でも、ひとつ確かなのは、 サッカーは「感動」であるということです。 少なくもインテルのティフォーゾたちには、 サッカーが世界のどの場所でも愛される 「感動」というものであることが、 この夜に、証明されました。 インテルは、 カンピオナートの覇者であるユヴェントスと、 イタリア・スーパーカップで 8月20日に対戦します。 昨年はアメリカ合衆国で試合が行われましたが、 今年は日本で、イタリア・スーパーカップの ユベントス対インテル戦が見られるかもしれません。 というのも、横浜が候補地として立候補しているのです。 日本で試合をするなら、 インテルとユーヴェは6月末までに 返事をしなければなりません。 もし実現したら日本のみなさんも、 インテルのティフォーゾたちが体験した感動を 直に体験できますね。 ユヴェントスのティフォーゾたちも スクデットを勝ち取った時に体験している、 あの感動を! そうして感動の輪がひろがれば、 サッカーの素晴らしい宣伝にもなるでしょうね。
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2005-06-20-MON
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