フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

バッジョの未来とモラッティ


イタリアサッカー界に残った最後の「夢想家」は、
インテルのオーナーである
マッシモ・モラッティでしょう。
彼に感動を与え夢を見させてくれる選手たちに、
彼はいつも愛情を注いできました。
そして現役の選手ばかりでなく、
サッカーを去った選手たちのことも、
彼は忘れません。
彼はまさに、アンティークの時計や、
高価な宝飾品や、著名な画家の絵画などの
美しい物を集めるコレクターのように、
かつての選手たちを愛しています。
そしてロベルト・バッジョこそは、
マッシモ・モラッティにとって、
収集して大切に守るべき
アンティークの時計であり、
高価な宝飾品なのです。

少し前のことですが、
ロベルト・バッジョは日本に行きましたね。
日本での滞在中に、
彼はいくつかのインタビューに答えました。
その中で、まず彼は信仰についてふれ、
(彼は仏教徒です)
信仰が彼の人生を変えたと説明しました。
そしてその後で、とても愛した「サッカー界」に
戻る準備があると、彼は明言したのでした。

「ぼくはもうプレイできません。
 ぼくの膝がそれを許さないのです。
 でもぼくは、まだサッカーを愛しているし、
 そこに戻りたいと思っています」と。

イタリアの新聞やテレビの各社は彼の言葉を報道し、
彼を再びフィールド上で見られるかもしれないと、
多くのティフォーゾたちが期待しはじめました。
でも、もしプレイできないのだとしたら、
バッジョはどんな形でサッカー界に戻るのでしょうか?


モラッティの後悔とは?
そしてバッジョの待遇は?


公表されたバッジョのこの発言に対して、
彼が所属していたことのある大きなチームの、
それぞれの主要人物たちはだれもコメントしませんでした。
バッジョが現役のころには、
新聞各社が彼の記事を大きくあつかい、
世界中のテレビ局がこぞって
彼にインタビューしたものです。
またしてものバッジョ人気に、
ちょっと「やきもち」をやいているのでしょう。

ところが、たったひとりだけバッジョの発言に
大きく反応した人物がいました。
われらが夢想家、マッシモ・モラッティ氏です。
彼はかつて、バッジョをとても敬愛しながらも、
彼とリッピ監督のどちらかを選ぶ羽目におちいり、
監督の方を選んだという経験があります。
そしてマッシモ・モラッティは
いまだにこの選択を後悔し、
こんなふうに語っています。

「人生の中で、人はいくつかの間違いを犯すものですが、
 私はバッジョに関しては大きな間違いを犯しました。
 彼のような選手たちはサッカーそのものであり、
 彼を『終わりだ』とする
 監督の言い分に耳を傾けたことを、
 私は、何度も後悔しています。
 あの選択は大きな間違いでした」

ロベルト・バッジョは
マッシモ・モラッティのチームであるインテルで
2年間プレイしていたことがあります。

その2年めの終わりに、
バッジョとリッピ監督の間で大きな論争がありました。
モラッティはバッジョの契約を更新せず、
彼はブレシャに行ったわけですが、
そこで更に2回にわたるカンピオナートで、
決め手となる活躍をしました。
バッジョはブレシャで無条件に愛され、
自らも楽しみ、周囲をも楽しませました。
これが、マッシモ・モラッティがいまだに後悔している
「間違った選択」です。

マッシモ・モラッティは、
ロベルト・バッジョがサッカー界に戻りたいと
先日語ったことを聞くや否や、
新聞記者たちを召集し、ある訴えを投げかけました。

「ロベルト・バッジョは、
 いつも私に感動を与えてくれた選手です。
 私は、彼をとても愛しているし、
 大いに評価しています。
 そして彼に対して
 インテルの扉はいつも開いていると、
 私は彼に告げましょう」

この明言はまず記者たちを、
そして記事を読んだ人びとを、
おおいにびっくりさせました。
もちろん好意的な驚きですよ。

ユベントスやACミランに
頭を押さえられている格好のインテルは、
世界的なレベルをめざして模索中ですから、
ロベルト・バッジョは大いに貢献してくれるでしょう。

でも選手としてではありません。
本人の言うように、彼の膝は
もうトレーニングに耐えられないでしょうから。
38才という年令からも、
現役選手に復帰という期待はもてません。
監督というのも、彼にはまったく経験がありませんので、
考えにくい‥‥となると、
チームの「イメージ」という形になるのでしょうか。

インテルはチームとして
世界にもっと知られたいでしょうから、
イタリア人選手の中で最も有名なロベルト・バッジョは、
最高の「しるし」ですね。
ちょっとした外務大臣のようなものかもしれません。

訳者のひとこと
彼のメディアでの露出度が高くなれば、
どんな形でも良いと思うファンも多いことでしょう。
バッジョ、バッジョって、
なんでいつも大騒ぎになるんだという声も
ネットのラジオから聞こえてきますが、
「バッジョだからよっ!!」と
ラジオに向かって突っ込みを入れている私です。
いちおう突っ込みもイタリア語で、
Perche` e` Baggio!! ──ペルケ エ バッジョ!!
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-09-20-TUE

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