フランコさんのイタリア通信。 |
なにかと騒がしい、イタリアの2005年末。 今週は、みなさんがこれを読むころには「先週」ですが、 イタリアサッカーにとって出来事の多い、 濃い1週間でした。 FIFA(国際サッカー連盟)をも巻き込んだ スキャンダル勃発。 それからアントニオ・カッサーノにたいする レアル・マドリードからの引き合いのニュース。 そしてUEFAチャンピオンズ・リーグ16強戦の、 組み合わせ抽選会もありました。 まずスキャンダルのことを、お話ししましょう。
FIFA会長のブラッター氏が、 トヨタ・カップに立ち会うために行っていた東京から、 「ラツィオのキャプテンであるパオロ・ディ・カニオ選手を サッカー界から追放する」 と、雷をおとしました。 「ある種の人間は、私たちの世界に 所属しないほうが良い」と、 ブラッター会長は強い発言をしたのですが、 ここには、この衝撃的な処置がほんとうに 避けられないであろうという響きが、 こめられていました。 いったい、ディ・カニオは何をしでかして、 このような荒っぽいリアクションを受けることに なったのでしょう? しかも、サッカーの国際的最高権威から。 12月11日・日曜日、 ディ・カニオがキャプテンをつとめるラツィオは リヴォルノと対戦しました。 そしてこの2チームのティフォーゾの間で、 罵詈雑言や攻撃的な横断幕など、 過激な応援合戦に火が付いたのでした。 「そんなことは、今に始まったことじゃない」と 言う人もいるでしょう。 「イタリアサッカーはいつだって ライバル意識が最高に熱くなるものなんだから」と。 しかし、問題は 「リヴォルノ対ラツィオ」にあるのです。 リヴォルノのティフォーゾは左派、 ラツィオ側は右派が多いとされています。 もちろん全員がそうだというわけではありませんが、 「共産党対ファシスト」とすら言われます。 そのことを、まるで証明するかのように、 パオロ・ディ・カニオは試合終了後、 彼のティフォーゾたちのところへ、 「ローマ式敬礼」をしながら近付きました。 「ローマ式敬礼」というのは、 てのひらを強く前にだして腕をあげる敬礼です。 もともとは、2000年前の古代ローマの兵隊たちが 皇帝に向かってささげた、とっておきの敬礼でした。 それを第2次世界大戦の時に、 ヒットラーやムッソリーニの兵隊たちが使ったのです。 そう、あの「ハイル・ヒットラー!!」の敬礼です。 戦後のファシズム崩壊後にできた イタリア共和国憲法は、 この動作にはファシズムのみならずナチズムや 人種差別的な意味が含まれるとして、 「ローマ式敬礼」を禁止しています。 ディ・カニオがとった、この「禁止の敬礼」は、 ヨーロッパ中のテレビで流れました。 これを見て深く傷付いたのは、 まず、ユダヤ系イタリア人たちです。 600万人ものひとびとが、 ユダヤ人である事がいけないというだけの理由で ガス室で殺されたホロコーストの首謀者はナチスでした。 この記憶は、まだ風化されていません。 多くの人びとから、一致した非難が出されました。 イタリアのスポーツ審判は、 ディ・カニオに罰金を課すにとどまりました。 しかし、この敬礼が生んだ反応はあまりに大きく、 FIFAの偉大なボスであるブラッター氏が、 ラツィオのキャプテンであるディ・カニオを 永久資格剥奪処分にせざるを得ないほどだったのです。 こうなると考えられるのは、どこか極右の政党が、 次の選挙で立候補しないかと ディ・カニオに打診する可能性? いや、冗談を言っている場合ではないのですが、 そういう事が全く起きないとも言えないくらい、 世の中がちょっと変ですから‥‥。
さて、その一方で、 アントニオ・カッサーノをめぐる メルカートのニュースが、 イタリアサッカー界を騒がせています。 ローマの、この若いチャンピオンは、 1月には、どこかに譲渡されることになりそうです。 彼の契約は6月まで残っていますが、 今、売ってしまわないと、 6ヵ月後にはカッサーノとの契約が終了しますので、 ローマにとっては、彼の値段はゼロになってしまいます。 W杯出場は危ぶまれていますし、 また何か、しでかすでしょうし。 すでにレアル・マドリードの経営陣が数人で ローマを訪れており、 移籍の可能性に意欲を表明しているカッサーノと 話をしています。 残るは売却について、ローマを説得することですが、 売却要求額は700万ユーロで、 購入提示額は400万です、ちょっと差がありますね。 でもまあ、近日中に合意にたっする可能性は高いです。 以前からローマの説得に当っていたインテルが、 このことに気を悪くしていますが、 今の所レアルが優勢です。 さて、この週最後の出来事は、 UEFAチャンピオンズ・リーグ16強戦の 組み合わせ抽選会でした。 8日前のW杯の抽選は、 アズーリにとって容赦ない結果でした。 同じグループのチェコ、合衆国、ガーナは、 いずれも手強い強敵です。 UEFAチャンピオンズ・リーグの抽選は、 これよりはラッキーだったと言えるでしょう。 ACミラン対バイエルン・ミュンヘン (バラックとカーンがいます)、 ユーヴェ対ブレーメン、 インテル対アヤックス、という組み合わせです。 たまにはイタリアのチームたちにも、 少しの幸運が‥‥
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2005-12-20-TUE
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