フランコさんのイタリア通信。 |
トトカルチョの衰退‥‥新しい流行とは? 「賭け事」は、イタリア人が大好きなことのひとつです。 運命に挑戦するのだという人がいれば、 自分の賭けの能力を試すという人もいます。 ともかく、イタリア人たちは、 いつの時代も「賭け事」に情熱的でした。 今から2000年前、 ローマ帝国がヨーロッパを支配していた、 ジュリアス・シーザーの時代に、 すでにローマ市民は馬の競争に賭けていました。 競馬ですね。 そして、1、2、3位までを知らせる連絡網が、 いくつもの街の間に、はりめぐらされていました。 連絡網といっても、伝書鳩なのですけどね。 結果を書いたカードを脚に結ばれた鳩たちが 街から街へ飛び交っていたわけです。 そんなですから、知らせが行き渡るのには時間もかかり、 馬のレースがあってから配当金の支払いまでには、 数日もかかったそうです。 ラジオもテレビもインターネットもある 現代のようには行きません。 現代のイタリアでは競馬への賭けは減っています。 その一方でサッカーの試合への賭けは人気が増しています。
サッカーの賭けと言えば、 イタリアではトトカルチョの伝統がありますが、 これは全13試合の結果を予想しなければならないので、 魅力がなくなってしまいました。 かわってブレイクしているのが、 点数の結果と、誰がゴールを決めるかを、 1試合についてだけ予想する賭けです。 このやり方の賭けで、1月18日、水曜日に 多くのイタリア人たちが勝利しました。 彼らが賭けたのはカッサーノ、 またはヴィエリのゴールでした。 先週ここに書いたように、彼らはそれぞれ 新しいチームに活躍の場をもとめて、 スペインとフランスに移籍しました。 次のドイツW杯にアズーリの一員として参加するためには、 日ごろの活躍で自己アピールしなければなりません。 その日の試合は、 カッサーノにとっては、様々なシャツの中でも 最も価値あるレアル・マドリードのシャツを着ての デビュー戦でした。 ヴィエリのほうは、 モナコに移ってから2番目の試合でした。 そして自分のお金を カッサーノやヴィエリの脚に賭けたサッカーファンが、 たくさんいました。 この2人の選手がそれぞれ新しいチームで ゴールを入れる予想の、 賭けの用語でいうところの「配当率」は25倍でした。 つまり、円で言うと、 カッサーノなりヴィエリなりのゴールに 1000円を賭けたとしたら、 25000円になって返ってくるということですよ。 さて、カッサーノは途中からの出場で、 その時点で0対0の引き分けでしたが、 出るなり178秒後にはゴールを決めていました。 反対にヴィエリは、ゲームの最後の最後に、 ゴールを蹴り込みました。 この2ゴールに それぞれ賭けた人たちは大喜びでしたが、 お金を賭けてはいなかったでしょうが 大喜びした人がもうひとりいました。 アズーリのマルチェッロ・リッピ監督です。 彼はカッサーノとヴィエリを ドイツW杯に連れて行きたいのです。 それにはまず、彼らふたりが新しいチームで 良いプレイをしてくれないことには説得力に欠けますから、 彼らの活躍にリッピ監督はご満悦です。
サッカーの試合に賭けをする情熱は、 あまりサッカーに興味のない人びとにも 伝染しつつあります。 設備が良くなったことも影響しているでしょう。 イタリアでは近年、sale corse サーレ・コルセという 賭けをあつかうサロンが近代化し、 清潔感のある場所になりました。 かつて賭け事と言えば競馬しかなかったころにくらべ、 ずっと居心地が良くなりました。 カンピオナートのスクデットを どのチームが獲得するかについての賭けには、 もはや誰も乗りません。 ユヴェントスが、あまりに優勢だからです。 多くのティフォーゾたちが(賭け事のティフォーゾも)、 賭けているのは次回のW杯の優勝チームです。 イタリア代表のアズーリに賭けているだろうって? いいえ、みんなが賭けているのはブラジルの勝利です! みんな、アズーリの情熱的なファンではありますよ、 それはもう素晴らしい応援ぶりなわけですが、 お金が関わってくると話はべつです。 「賭け」には確かなほうを選ばないとね‥‥。
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2006-01-24-TUE
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