フランコさんのイタリア通信。 |
2月12日インテル対ユヴェントス戦、その後の混乱 セリエAの首位を独走するユヴェントスの周囲を、 不穏な空気がとりまいています。 ユヴェントスは2月12日に、 インテルと対戦して勝利し、 ダントツで首位を守っています。 それなのに、なぜ「不穏」な空気が漂っているのか、 今日は、その話です。
そのゲームで、 スクデットそのものに匹敵すると言っても良いほどの すばらしいゴールを印したのはデル・ピエロです。 ゴールを決めたあとで、彼は舌を見せながら 観衆の方にふりむきました。 そのしぐさを見て、 ユヴェントスのティフォーゾたちは、 子供がうれしい時にするジェスチャーと同じだと喜び、 インテルのティフォーゾたちは、 人を馬鹿にしているのかと気を悪くしました。 ユヴェントスはこの試合に勝利したことで、 インテルやACミランに対して 勝点12点の差をつけました。 この差を克服することは事実上できないでしょう。 インテルとユヴェントスは、イタリアサッカーにおける 歴史的なライバルチームですから、 この2チームの対戦がある時に論争が起こるのは めずらしい事ではありません。 それも数日間もつづく果てしない論争です。 この「対戦中の対戦」は、 ふたりのカウボーイが互いに相手に勝とうとする 伝統的なウエスタン映画の「決闘」みたいでした。 これ以上ないほどに張り詰めたテンションと興奮の中で、 決定的に勝利したのはユヴェントスでした。 またもやユヴェントス、なのです。 強すぎるのです、それが問題なのです。 この決闘で最高の賛辞をうけたカウボーイは デル・ピエロでしたが、 彼はゲームの最後の時間帯に出場し、 魔法のようなフリーキックを決めたのでした。 その日にサン・シーロ競技場にいた観客は8万人で、 その内、ユヴェントスのティフォーゾは8千人ほどでした。 イタリア人たちに、シャツの色をこえて常に高く評価され 愛されて来たチャンピオンの勇姿を、 彼らはあらためて誉め讃えました。 こんなふうにチームをこえて愛されたのは、 過去においてはロベルト・バッジョ、 ただひとりだけでした。 ところが、 この2チームの大きなライバル意識や、 試合の前からつづく論争の数々や、 それぞれの監督であるカペッロやマンチーニの言葉などが、 勝利のお祝い気分を許さなかったのです。 ユヴェントスがピッチ上で、 ますます強いことを示したことで、 本来あるべき喜びがゆがめられました。 まずインテルのマンチーニ監督が、 ユーベのネドヴェド選手を「うそつき」だと告発しました。 つまり、対戦相手が近寄っただけで 地面をころげまわってファールがあったように振舞う、 アンフェアな選手であるという意味です。 インテル側ではルイス・フィーゴ選手も、 試合後に1日がすぎてから、ある暴露をしました。 彼は、ユヴェントスの役職者であるルチアーノ・モッジが、 試合開始の数分前に 審判の更衣室に行ったのを見たというのです。 買収の試みがあったかのような感じだった、と。
ユヴェントスはこれらに対して荒っぽい対応にでました。 インターネットのサイトを通じて、 「La 7」(ラ・セッテ)という テレビの放送局を見ないようにと、 ティフォーゾたちに呼び掛けました。 La 7は、テレコム・イタリアやPirelliの社長であり、 そして何よりもインテルの副会長でもある プロヴェーラの放送局です。 そしてユーベのティフォーゾといえば、 イタリアでもっとも人数が多いのです。 次にユーベは、虚偽の発言をしたということで、 フィーゴをスポーツ裁判に訴えました。 インテルのオーナーであるモラッティも黙ってはいません。 ユヴェントスの態度を「横暴だ」と決めつけました。 こうしてイタリアサッカー界は、 まっぷたつに分かれた格好です。 一方はユヴェントスで「勢力派」、 もう一方はインテルで「反勢力派」と言えるでしょう。 こう書くと、ほとんど「強者と弱者」の 正直不正直を賭けた対戦のように見えますが、 とにかくサッカー界全体に 究極の混乱が生まれてしまいました。 こういう混乱では、最後にはだれもが傷付くのですが、 ほぼ手中にしているスクデットにケチがついたように見える ユヴェントスが、誰よりも傷付くでしょう。
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2006-02-21-TUE
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