フランコさんのイタリア通信。 |
ロナウドの爆弾発言で、ミラノは大騒ぎ! 自分を捨てた恋人に「もどりたい」と言われたら、 あなたはどうしますか? もし、その人のことを 今も忘れられないでいるとしたら‥‥ こと恋愛の話ならばいいのですが、 ここに損得勘定がからむと、 ことはいっそう複雑になります。 尽きない愛と、利害の計算と、 どちらが上に立つのでしょうか? 「金か愛か?」という、 お定まりのジレンマの登場です。
ちょっと前のことですが、 ロナウドがマドリードで記者会見をしました。 そこで彼は爆弾発言をします。 「ぼくは、もうここに居つづけたくない。 ぼくは、ここでは歓迎されていないんだ。 レアルの観衆は、 ぼくに野次をとばしつづけるから‥‥」と。 この発言で、すぐさま、 カルチョ・メルカートは大騒ぎとなりました。 ロナウドが2002年8月31日に インテルからレアル・マドリードに譲渡されたのも センセーショナルな出来事でしたね。 それは彼がブラジル代表として、 横浜でドイツを下してW杯に優勝してから、 たった2ヵ月後のことでした。 彼は世界チャンピオンになり、 そのW杯で最多のゴールを決めていました。 ところが、驚いたことにインテルは レアル・マドリードの申し出を受け入れ、その結果、 近年でもっともケタはずれの選手を失ったのでした。 当時のインテル会長で、 今もオーナーであるマッシモ・モラッティは、 この譲渡の直後からそのことを後悔しつづけています。 今でもしょっちゅう、少ないときでも月に1度は、 その話を持ちだします まるで、別れた恋人のことを 今も愛していると語る人のように。 こんどのW杯を終えたらチームを換えたいと ロナウドが言うや否や、ミラノのサッカー関係者は 電気ショックでも受けたみたいに飛び上がりました。 インテルは彼を忘れられないでいますから、 ふたたび入手できるとなれば、当然、動きます。 なんといってもロナウドはクラスを超越した 別格の選手なのです。 そして、すでにカカとシェフチェンコをかかえる ACミランは、ロナウドを加えた 3者揃い踏みの夢をもっています。 実現すれば、少なくも理屈の上では、 世界に向かうところ敵なしの状態になるはずです。
実際に先週の火曜日のこと、 あるテレビの、ミラノとマドリードの中継放送で、 まさにベルルスコーニの右腕である ACミランの代表取締役が、 こう、ロナウドに、メッセージを送りました。 「あなたは誰よりも偉大なサッカー選手です。 ACミランのドアは、あなたのためなら いつでも開いていることを知っておいてください」 ACミラン会長のベルルスコーニは 金額欄が白紙の小切手を用意したようです。 これがイタリアで意味することは、つまり、 この特別なブラジル人選手を獲得するためなら、 どんな額も支払うつもりだということです。 ACミランとインテルは、 同じミラノの街をホームとする宿敵同士です。 そして個人的にもベルルスコーニとライバル関係にある インテルのオーナー、マッシモ・モラッティは、 ロナウドではなくレアル・マドリード会長の フィオレンティーノ・ペレズ(下の写真左)に電話をかけ、 「きみにACミランが申し出る金額に、 さらに100万ユーロ乗せた額を、 ぼくは支払うよ」と伝えたそうです。 モラッティは友人でもあるペレズから、 サミュエル、ソラーリ、フィーゴを 昨年の夏に購入しています。 ロナウドと過去に因果関係のないACミランが、 とりあえず彼に贈るのは金銭です。 でもインテルが贈れるのは、 たぶんそれ以上のものでしょう。 多くのティフォーゾたちは、 インテルを去って行ったロナウドを 絶対に許したくありません。 許したくない気持ちは、けれども、 時間の流れの中で後悔や 許せないことへの後ろめたさとまじりあって、 大きな矛盾を生んでいます。 その矛盾を超えて、ふたたび彼を迎え入れるなら、 それはロナウドにたいする愛情以外の なにものでもありません。 インテルがお金に加えてロナウドに贈れるものは、 苦しみを乗りこえてつづく愛情です。 ティフォーゾたちの気持ちはどうであれ、 ACミランより多額を支払うつもりでいるのが モラッティです、どんなに高額でも用意するでしょう。 近年でもっとも大きな威信と世界的な名声を インテルにもたらしたのは、ロナウドです。 その彼が、あろうことか宿敵ACミランのシャツを着て プレイするのを見ることなど、もってのほかなのです。 そんな事態をまねくことなど、 自分に許してはならないのです、絶対に。 ただ、この「競り合い」にはリスクが潜んでいます。 最終的にロナウドの値段がとても高くなることで、 ベルルスコーニの手が届かなくなるというリスクです。 金銭面で? そんなことはありません、 「政治的」な問題です。 このことはイタリアサッカー界全体が熱く見守っています。 不況のつづくイタリアでは、この春に総選挙がありますが、 ベルルスコーニが首相に再選されるとしましょう。 その時、たったひとりのブラジル人選手を入手するために とほうもない散財をしている張本人が、 いくら国民に節約を説いてみたところで、 だれが喜んで従いますか? この点から「競り合い」を見ると、 モラッティがちょっと有利でしょうか‥‥。
|
2006-02-28-TUE
戻る |