フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ユヴェントスとインテルの、
メルカートの駆け引き。

人生において、失望や落胆は、
もっと良い未来を夢見ることで、
乗り越えられるものです。
サッカーの世界でも、これは同じです。

サッカー界で「もっと良い夢を生みだす優れた工場」
と言えば、メルカートです。
春は、再生と希望と楽天主義の季節でもあるのです。

ユヴェントスはヨーロッパいちを、
インテルはイタリアいちをめざして‥‥。


セリエAで29個めのスクデット獲得が
事実上決定したユヴェントスですが、
それだけでは満足していません。
UEFAチャンピオンズ・リーグにおいて、
準々決勝戦で敗退したのが不満なのです。
イタリアで一番になるのは当たり前になった
ユヴェントスは、
ぜひともUEFAチャンピオンズ・リーグで勝ちたいのです。
ヨーロッパで一番になれば、
5000万ユーロ以上の収入になるのに比べ、
イタリアで一番になってスクデットを勝ち取っても、
良い収入にはなりませんからね。

いっぽう、1989年からずっと
スクデットを手にしていないインテルは、
ユヴェントスとは逆に、
17年間も手にしていないスクデットに
興味をしめしています。
あまりに長いことカンピオナートの主役ではなく、
あまりに長いことイタリアのチャンピオンを決める
決戦に負けつづけているのですから、
その気持ちも分かります。
コッパ・イタリアの決勝戦に残りながらも、
精神的な混乱の崖ップチにいるのです。

監督たちも、それぞれ議論の中にいます。
ユヴェントスのカペッロ監督は
ティフォーゾたちに愛されず、
インテルのマンチーニ監督は
経験不足とみなされました。
インテルが長いこと勝てないでいることに
何の変化もないというだけなのですけれど、
現監督としては責任と指導力が問われても
しかたありません。

というわけで、
この永遠のライバルである2チームは、
ティフォーゾたちに夢を見させてくれるメルカートに、
一矢むくいるための的をしぼりこみ始めました。

どの選手がどう動くのか?!


ここまでにユヴェントスは、
来る6月にはインテルを去るであろう
クリスチャン・ザネッティと、
たぶんリッピ監督がW杯のために
アズーリに召集すると思われるマルキオンニという
パルマのウィング選手と契約しています。

しかしカペッロ監督が本当は欲しいスターは
アントニオ・カッサーノです。
彼は、1月にレアル・マドリードに移籍しましたが、
レアルでは今まで熱意を見せていません。

このスペインのチーム、
レアル・マドリードは、
若いカッサーノを売る気持ちでいるのですが、
かわりに、
スウェーデン人のイブライモヴィッチを
要求するでしょう。
彼も、ユヴェントスでは期待外れの1年でした。

ただ、イブライモヴィッチの値段は
カッサーノよりずっと高いので、
交渉を終えるに当り、レアルがカッサーノに
2000万ユーロほどを支払うと言ってくれないかと、
ユーベは期待しているようです。

インテルも、すでに動いています。
今までに中級の選手たちについては
契約が成立しています。
ブラジル人のマイコンとマックスウェルです。
しかしモラッティは
ティフォーゾたちの愛情を取り戻そうと、
近年のなかでインテルに最も偉大な世界的レベルの
イメージを与えてくれた選手をとりもどしたいのです。
そう、彼はまだロナウドにこだわっています。

レアル・マドリードは、
ロナウドとアドリアーノとの交換なら
受け入れるかもしれません。
アドリアーノは「ミラノで幸せを感じない」と、
最近発言したばかりです。
ユヴェントスからイブライモヴィッチが来て、
インテルからアドリアーノが来れば、
このふたりは強力なアタックのコンビを組めます。
これはレアルにとって魅力的な話でしょう。

インテルのオーナー、モラッティは、
この駆け引きを怖がってもいます。
アドリアーノをレアルに渡した後で
彼のプレイが良くなることも考えられますから、
そうなると「しまった!」ということになるし、
交換にロナウドを獲得できたとしても、
彼はW杯の後にキャリアとして満足してしまう、
つまり「もう、いいや」みたいにならないとも限らない、
そのあたりが、モラッティには怖いのです。
それでもなお「並外れた選手」ロナウドを
インテルに呼びもどすという誘惑は、
あまりに大きいのですね。

これらが、次のシーズンにめがけて、
もっと競争力のあるチームになると決心した
インテルとユヴェントスとの、
駆け引きのいろいろです。

ぼく個人的には、カッサーノやロナウドが
イタリアへ帰ってくる可能性がどれほどなのか、
分かりません。
ともかく、駆け引きの水準はこれなのです。
なんだか「おおぼら」みたいな気が
しなくもありませんが。

かと言って、
だれかが「夢に賭ける」と決めたなら、
その夢は壮大なほうが良いでしょう‥‥ね?

訳者のひとこと
インテルのような
「個性的」なチームが大化けすると、
天井知らずみたいになりそうで
面白いのですけどねえ。
優等生が当たり前に良い成績をおさめても、
面白くもなんともないとも言えますから。
インテルは、ある意味で、
とても「イタリア的」な性格を
持っていると思います。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-04-25-TUE

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