フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

イタリアサッカーの危機からの再生は?


イタリアサッカーの
ここ最近で最も偉大な選手だったシェフチェンコは、
本当にイギリスに逃れようとしています。
イタリア代表チーム、アズーリのキャプテンである
カンナヴァーロは顰蹙を買い、
アズーリ監督の息子であるダヴィデ・リッピは
違反行為で協会から告発されました。
ゴールキーパーのブッフォンは、
練習はしていますがその合間に、
彼がイカサマ賭博をしたのかどうか、
本当に賭けたのはドッグレースだけなのか、
司法府の取り調べを受けています。

これでも、まだ一部分です。
こうなるともう嵐どころではありません。
このところお伝えしているスキャンダルは、
イタリアサッカーをひっくり返す
大地震であり、ツナミです。

世界のサッカー史上最大のスキャンダルは、
まだほんの入り口を見せただけです。

スクデットの行き先は、インテルに?


これら全ての捜査の陣頭指揮をとるのは、
ピエール・サヴェリオ・ボレッリ元判事になりそうです。
彼は90年代初頭に、
当時の首相だったベッティーノ・クラクシを
チュニジアに逃し、
マーニ・プリーテ(清潔な手)という政治運動で
政治家たちの世代交代をさせた人です。
ボレッリ氏は引退していたのですが、
サッカー・フェデレーションが彼に頼みました。
もう誰の何を信じて良いのかわからない混乱の中で、
唯ひとり「疑惑」からほど遠い存在が
ボレッリ氏だというわけです。

すでに4チームが調査されました。
ユヴェントス、ミラン、
フィオレンティーナ、ラツィオです。
いずれも皆さんが良くご存じの名前でしょう。
イタリアサッカー史を築いたこれらのチームを
セリエBに落とす代価を支払ってまでも、
再びサッカーに清潔さを取り戻すのだという
厳格さが必要、という印象です。

ユヴェントスはセリエB、
または、一気にセリエC落ちとも言われており、
フィオレンティーナやラツィオは恐らく
セリエBに行くでしょう。

ACミランは、今のところは、
ユヴェントスの優勝で終ったばかりの今シーズン成績から
15点減らされるペナルティーの恐れがあります。

ユヴェントスは優勝はしたのですが、
イタリアチャンピオンのしるしであるスクデットを
もらえないでしょう。
そして2位のACミランも減点されれば、
スクデットの行く先は、
汚れずに残った唯一の大チームであるインテルです。
これはあくまで現段階での予想ですけどね。

シェフチェンコ、英国へ。


シルヴィオ・ベルルスコーニはもはや首相ではなく、
ACミランのただの会長に戻ります。

しかも、ACミランは災難だらけです。
ACミランの重役のひとりは、
ある審判に優遇を依頼する電話を盗聴されております。
加えて、先週もちょっと触れましたが、
いまACミランで最も有名な選手であるシェフチェンコは、
本当にACミランを去る意志を、
金曜日に開いた記者会見で発表しました。



彼は、年俸1500万ユーロを提示した
チェルシーに行くことを、明らかにしました。

「私の妻は英語を、私はウクライナ語を話します。
 私は英語を話す国で暮らすためにロンドンに行きます」

彼はこう説明しましたが、
だれもそんなこと信じていません。
カンピオナートの最終日曜日に、
彼はクルヴァのウルトラスの所へ行き、
泣きながらACミランのチームソングを歌いましたが、
すでにACミランを去ることが分かっており、
チェルシーとの契約のサインも済ませていたのですから、
この涙は少し嘘っぽいですね。
たぶん金銭のこと以上に、
イタリアサッカーが今や世界で最も汚れ、
嘘つきで堕落してしまったことから、
彼はイタリアを去るのだと思います。

こんなにも堕ちてしまったところから
イタリアサッカーを世界の栄誉にまで再生させるには、
長い長い年月がかかるでしょう。



▲シェフチェンコのこの姿はもう観られなくなる‥‥


訳者のひとこと
ほんとうに立ち直れるのか? と
不安かもしれないイタリアファンのみなさん、
これだけは覚えておいてください。
イタリアの選挙投票率は
日本の比ではありません。
高いのです。
「人びと意識と行動と力が国をも動かす」と、
彼らは信じて動く‥‥はずです

ところで文中のベッティーノ・クラクシ元首相は、
2000年1月に逃亡中のチュニジアで
亡くなりました。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-05-30-TUE

BACK
戻る