フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

アズーリの16強入りを祝えないイタリア。
(6月22日の試合を終えて)


2006年6月22日は、イタリアサッカー史に
新たな1ページが加わった日でした。
ハンブルクでのチェコ戦に2-0で勝利、
Eグループ1位で決勝トーナメント進出を決めた
アズーリを待っていたのは、
16強入り決定のすぐ後、19時に行われた、
喜びに水を差す発表でした。

現地に行かなかった多くのイタリア人がテレビで、
そしてイタリアの多くの街が広場に設置した大画面で、
16強入りのかかるあの試合を観戦していました。
マテラッツィのゴールも、
終盤のインザーギのゴールも、
たしかにイタリアのティフォーゾたちを熱くしました。
でも、たとえばぼくの地元であるミラノの
ドゥオーモ広場に溢れていた3000人以上の群集は、
結局はアズーリの16強入りを
祝う気分にさえなれませんでした。
スキャンダルと告訴されたチームについてのニュースが、
その直後に流れたのですから。

そう、イタリアのサッカーフェデレーションが、
国内の4チームと幾人かの審判にたいして
告発の声明を発表したのです。

実際の判決は、
アズーリたちの気持ちを乱さないように、
7月9日に下されるでしょう。
W杯の決勝戦が行われる日です。
イタリア全土が、史上最悪のスキャンダルを
アズーリの勝利で忘れたいと願っていますし、
その決勝戦に向けて、
アズーリはまだまだ闘わなくてはなりませんから、
その日までは、アズーリの繊細な神経を
逆なでしてはならぬ、という配慮があるのでしょう。

(W杯で16強入りすることは、
 ひとつの到達点ではありますが、
 これだけでは
 アズーリを奮い立たせることはできません。
 Eグループの他のチームは、
 とりたてて強豪ではなかったとぼくは考えています。)

ユヴェントスとACミランに
マフィア疑惑が。


ユヴェントス、ACミラン、フィオレンティーナ、
そしてラツィオは、自分達の有利のために
審判を買収したことで有罪とされました。
つまり、いくつかのゲームで勝つために
八百長をしたことが実際にあったということです。

なかでも、ここ数年間において幾人かの審判を買収し、
何ゲームかを偽っていたユヴェントスとACミランは、
「マフィア的な連携の仕組み」を
作っていた疑惑があります。
この組織には、イタリアサッカーにおいて
特に華々しい栄光に満ちているこの2チームの他に、
審判の頭であるラネーゼや、
なんとフェデレーション会長のフランコ・カッラーロまで
与していたと思われます。
立場がより深刻なのはユヴェントスで、
なぜならACミランが、
自分達はユヴェントスの
「マフィア的な連携の仕組み」と闘うために
対抗勢力を作ったのだと言っているためです。

ユヴェントスの総監督を辞任した今でも
大いにゴッドファーザー的な
ルチアーノ・モッジという人物によって起こされた
このスキャンダルは、
イタリアの犯罪史にも残るものとなるでしょう。
ちなみに彼は捜査官の質問に答える事を拒否しています。


▲ルチアーノ・モッジ

ユヴェントスは公式な告発を待っていましたし、
避け難いと思われるセリエB降格の覚悟も、
すでに出来つつあるとぼくは思います。
イタリアのスポーツ裁判では
有罪判決のための立証は必要がありません。
単純な嫌疑がかかっただけで良いのです。
しかし、今回のケースでは電話の盗聴が決定的証拠で、
ユヴェントスの有罪は疑いの余地がありません、
電話をしていたのはルチアーノ・モッジ本人なのですから。

いっぽうACミランは、
あるレストランのオーナーを雇っていました。
審判の同伴者として、
日曜日ごとにアンチェロッティ監督の
そばのベンチに座っていた、
メアーニという人物です。

ACミランの会長職に戻って間もない
シルヴィオ・ベルルスコーニが
イタリアの前首相だった、にもかかわらず、
ACミランも審判らに対する
マフィア的な行為を告発されました。
ベルルスコーニは、
あれは自分のイメージを壊すために企てられた
政治的陰謀だったとまで言い始めています。


▲ベルルスコーニ

陽気なイタリア人の顔から
笑顔が消えている。


ところで、ACミランを告発した
フェデレーションの臨時の会長であるグイード・ロッシは、
ACミランの宿敵インテルの顧問だったこともあり、
元共産党の議員でもありましたから、
ベルルスコーニにとって「二重の敵」と言えます。

そうでなくとも「政治的陰謀」説は
ACミラン側がひねり出した詭弁であり、
あまりに頼りないディフェンスですよね。
この説は、まず、受け入れてもらえないでしょう。

裁判についての予想を述べるのは難しいことです。
しかし、ユヴェントス、フィオレンティーナ、ラツィオの
セリエB落ちは、すでに予見されます。
それに比べればACミランは、
まだ確実ではありません。

この4チームのティフォーゾたちの数が、
合わせて2000万人を超えると言われています。
アズーリがW杯で16強入りしたからといって、
祝わうどころではないのも理解できます。

この事件は、陽気でお祭り好きなイタリア人たちから
微笑みを奪ってしまいました。
そのことこそが、
この事件のもっとも悲しいところです。



訳者のひとこと

‥‥‥‥これで16強入りもしていなかったら、
そういうことは考えにくいですが、
もしも、もしも16強入りしていなかったら、
今年の夏はイタリアに行かない方が無難ですと
書かなければならなかったかもしれません。
日本との対戦はないと決定したのですが、
これは良かったのでしょうか、
やはり残念なことでしょうか‥‥
気持ちは複雑です。
ともかく、これからはイタリアを
心行くまで応援できるということですね。
Forza Azzurri!!!
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-06-27-TUE

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