フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

メルカートの結果、彼らは‥‥。

朝晩は、長袖のセーターが欲しいくらい
冷え込んでいる異常気象のミラノの夏ですが、
今年のカルチョ・メルカートは、
まるで例年の8月の太陽のように熱く、
イタリア全土を覆って、繰り広げられました。
イタリアサッカーのアイドルたちが、
今まで着ていたシャツを脱いでチームを移ります。
他の国に渡ることを決めた選手もいます。
イタリアサッカーは今、
悲しみと憂鬱に満ちたシーズンを生きるための、
準備をしているところです。



世界チャンピオンであるイタリア代表のアズーリたちは、
過去には前例の無いメルカートを経験しました。
そして、外国からイタリアに来ていた選手たちも、
やはりシャツを替えました。
そのままずっと、そのチームに残るに違いないと
思えた選手たちでしたが‥‥。

シェフチェンコ、チェルシーへ。


最初に大きな話題になったのが、
ウクライナ人のシェフチェンコの移籍でした。
彼は昨シーズンのカンピオナートの最後の試合では、
クルヴァ席から彼のACミランを見おろしていました。
クルヴァは、もっとも熱狂的なティフォーゾたちの
お決まりの席ですね。(*この回をご参照ください)

試合後の記者会見で、
彼は涙でぐしゅぐしゅになりながら、
ACミランの赤と黒のシャツへの彼の愛を表明しました。
「ぼくは、アメリカ人の妻が
 英語を話す国で暮らしたいと言うので、
 チェルシーでプレイすることになるでしょう。
 でもACミランはいつも、
 ぼくの心の中にいるでしょう」


▲シェフチェンコと家族

さて、彼がそう表明したのは
5月14日のことでした。
その90日後の8月13日に、
チェルシーの一員としての初めての試合で、
彼は初ゴールを決めました。
ボールがネットに入るのを見た彼は、
そのイギリスのチームのシャツにキスをしました。
これを見たACミランのティフォーゾたちは
困惑し、怒りすらおぼえました。
あんなにACミランを愛していると言ったのに、
こんなにあっという間に忘れたのかと、
裏切られたような気分になってしまったのです。

イブラヒモヴィッチとヴィエイラ、
インテルへ。


ユヴェントスでは、
イブラヒモヴィッチとヴィエイラが
インテルに移りました。
このふたりは「手を付けてはならない」と
思われていた選手たちですが、
フランス人のヴィエイラは900万ユーロで、
スウェーデン人のイブラヒモヴィッチは
2800万ユーロで、交渉が成立しました。


▲イブラヒモヴィッチ


▲ヴィエイラ

これは彼らの人生のひとつの選択でしょうか?
いいえ、好むと好まざるとにかかわらず、
カンピオナートのスキャンダルが
彼らの人生をそういうふうに動かしたのでしょう。
ユヴェントスは八百長試合と審判の買収のスキャンダルで、
来期はセリエBでプレイします。
でもヴィエイラもイブラヒモヴィッチも
セリエAで、そしてUEFAチャンピオンズ・リーグで
プレイしたいのです。
それで、彼らはインテルを選択しました。
オーナーであり石油王であるマッシモ・モラッティが
破格の報酬を提示したインテルをね。

インテルに移ったヴィエイラとイブラヒモヴィッチは、
さっそくシャツにスクデットを付けて
プレイすることができます。
なぜなら、前にも書いたように、
昨シーズンの1位のユーヴェと2位のACミランが
罰せられたお陰で、
カンピオナートのスクデットは
インテルに渡されましたからね。

マッシモ・モラッティは7人もの選手を購入して
ロベルト・マンチーニ監督を満足させました。
ヴィエイラとイブラヒモヴィッチの他には、
アズーリの一員として世界チャンピオンになった
ファビオ・グロッソをパレルモから、
ダクルトをローマから、
マックスウェルをアヤックスから、
マイコンをモナコから、
クレスポをチェルシーから購入しました。

総額5000万ユーロを超える
買い物をしてもらえたマンチーニは
イタリアで一番幸せな監督と言えるでしょう。

この他にも、
今回ユーヴェを離れた世界チャンピオンの
アズーリたちがいます。

カンナヴァーロとザンブロッタが
スペインに移りました。


▲カンナヴァーロとザンブロッタが
ブラーズィ、ガットゥーゾ、ピルロらと
セミヌードでポーズした、ドルチェ&ガッバーナの広告


アズーリのキャプテンをつとめた
カンナヴァーロはレアル・マドリードへ、
いっぽうのザンブロッタは
ロナウディーニョのいるバルセロナに行きました。
ユーヴェは彼らだけでなく
レアルにはエメルソンも、
バルセロナにはトゥラムも渡しています。

メルカートは8月31日に終りますが、
この最後の日々にだれか偉大なチャンピオンを
買わないわけにいかないチームがあります。
来期のカンピオナートを
8点マイナスで始めるACミランです。

ベルルスコーニ会長は最後まで
ロナウドを望み続けましたが、
レアルはノーと言うばかりでした。
ロナウド本人も同様です。
彼はかつて数年間インテルのアイドルでしたが、
そのインテルと同じミラノの、
歴史的なライバルであるACミランに入るために、
彼がイタリアに戻ることは、もうないでしょう。


▲ロナウド

いくつものチームが大きく動いた
カルチョ・メルカートでした。
とても有名な選手たちの多くも
この騒動に巻き込まれたわけですが、
だれもシャツの色にこだわってはいないようです。
誰もが夢中になっているのは、
シャツではなくてお金の色なのですね。

訳者のひとこと
予想されていたこととは言え、
ついに国外流出組が出てしまいましたね。
W杯では国内リーグ選手のみの
代表チームを組めたイタリアでしたが、
4年後のアフリカ大会までに、
カンピオナートは再生できるでしょうか。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-08-22-TUE

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