フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ACミラン、ロナウドの獲得に失敗。


先週ここで、ぼくは
ロナウドがACミランに来る事はないだろう、
と書きましたが、
ベルルスコーニは、まだあきらめていませんでした。

──結論から言うと、
憎しみが荒々しい情熱に変わり、
実現すれば強い愛のゴールと思えた結婚話が、
予想もしなかった形の一撃で終わりを迎える、
そんな「イタリア式愛の物語」とも言える展開でした。


▲そんなイタリア式物語の主人公に
 ふさわしい? ベルルスコーニ。


「スペインに行ってロナウドを買え」!


先の火曜日、ACミランはベルグラードで
UEFAチャンピオンズ・リーグの本戦に勝ち進みました。
この出場資格は、
約2000万ユーロの価値がある
計算になると言われています。

この快進撃と収入(の予定)を受けて、
もうイタリアの政治について考える必要のない
イタリアの前首相であり、
ACミラン会長であるベルルスコーニは、
バカンスを過ごしているサルデーニャから
副会長のガッリアーニに電話しました。
「スペインに行ってロナウドを買え」
というわけです。



永遠のライバルであるインテルに対する
ACミランの大きな脅威は、
いまやもっとも勢力を拡大した状態になっています。
インテルはグロッソ、イブラヒモヴィッチ、
ヴィエイラ、クレスポ、マイコン、マックスウェル、
それからダクルトも購入し、
チームを強化しているのです。
この脅威をくつがえすことの出来る
偉大なチャンピオンこそがロナウドであり、
彼の獲得はACミランの
なににもかえがたい願いとなっていました。

そのACミランは
シェフチェンコをチェルシーに売却して
弱体化しているうえ、
カンピオナートではペナルティーの8点マイナスで
スタートします。
イタリア3大チームの中のユヴェントスは
セリエBに降格されましたから、
イタリア・カンピオナートのセリエAで
優勝のスクデットへの最短距離にいるのは
インテルであると、
まだシーズンが始まってもいないのに、
だれの目にも明らかです。

自分のチームの名声と栄光のスポットライトを
ふたたび点灯するには何が必要か、
ベルルスコーニには良く分かっています。
頭文字のCを大文字にしたチャンピオン、
つまり「特別なチャンピオン」が必要であり、
4年前までインテルの
アイドルだったロナウドをおいて、
この役割を見事に演じられる選手が
ほかにいるわけがない、ということです。


▲まさかの移籍?! の渦中にいたロナウド。

ガッリアーニ、怒髪天を衝く。


さて話は5月にもどります。
実はこの時期にレアル・マドリードが
カカを口説いていたのです。
結果はレアルの空振りで終りましたが、
もし成立していたら、
ACミランにとっては破壊行為も同然でした。
その時にテレビでこう言い放ったのが
副会長のガッリアーニ、その人でした。
「レアルの連中は悪党どもだ」

そして、その「レアルの連中」は、
この言葉を忘れていませんでした。

水曜日の夕方、
悪党発言をしたガッリアーニ本人が
マドリードに到着しました。
そして夜、彼はレアルの会長と夕食に行き、
ふたりは夜明けまで話し合いましたが、
合意には至りませんでした。

レアル側の要求は、
まず例の攻撃的な発言についての
ACミランの公式な謝罪、
そして3000万ユーロと、
来年におけるカカの先買権です。

ガッリアーニはロナウドに電話しました。
ロナウドは
「ぼくにとって、インテルでプレイしようが、
 ACミランであろうがレアルであろうが、
 同じ事です」
と答えたそうです。

怒り心頭に発しながら会見を終えたガッリアーニは、
怒髪天を衝いたまま、ミラノに戻りました。

偉大な買物を、そしてそれ以上に
ライバルのインテルが
大いに悔しがることを期待していた
ACミランのティフォーゾたちは、
結果を知って落胆しました。

ただガックリしてもいられないACミランは、
すぐに別のお偉いさんをスペインのセヴィリアに送り、
オリヴェイラを購入しました。
28才のブラジル人であり、
2年前に膝を酷く負傷する前は
大いに期待されていた選手です。

これを見守っていたインテルのオーナーである
マッシモ・モラッティは、
ロナウドがACミランに来ることを
大変に憂慮していましたから、
結果を知ってレアルの会長とロナウドに電話し、
両者に感謝したとのことです。


▲感謝、感謝のモラッティ。

ベルルスコーニはと言えば、
ガッリアーニに電話し、
もしカンピオナートかUEFAチャンピオンズ・リーグに
優勝しなければ、
来シーズンの終わりには君をクビにするぞと、
脅かすことも忘れませんでした。

ACミランの危機と救世主ロナウド、
両者の大きな愛の物語になったかもしれない話でしたが、
多くの愛の悲劇のエンディングよろしく、
涙と怒りで終わりを迎えたのでした。

訳者のひとこと
「愛の物語」と「破局」は
世界中にあります。
なぜこれが「イタリア式愛の物語」なのか?
答は簡単です。
同じ物語にしても、イタリア人がからむと
声は大きいは、身ぶり手ぶりは派手だは、
とにかく大騒ぎになるということですね。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-08-29-TUE

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