フランコさんのイタリア通信。 |
フランコのイタリアテレビ通信。 最近ぼくはサッカーに熱心な人たちに路上で呼び止められ、 サインを求められるようになりました。 生まれつきシャイなので、 最初のうちは少し恥ずかしかったのですが、 今では、それにも慣れて来ました。 どうしてこういう事になったのかって? 今週は、その理由をお話しします。
全ての事の始まりはドイツW杯です。 イタリアの前首相である シルヴィオ・ベルルスコーニが持つ TVネットワークのメディアセット(Mediaset)から 電話があり、 夜中の12時過ぎの番組で、 ドイツで繰り広げられる試合のコメントをしませんか、 という要請がありました。 ぼくは1965年から記者の仕事をしており、 1999年からはミラノの民放テレノーヴァ(Telenova)の 仕事もしています。 メディアセットの要請は、 そんなぼくの自尊心をくすぐり、 ぼくはその仕事を引き受けることにしました。 W杯についての放送は上手く行きました。 アズーリも「優勝」という最高の結果を出しました。 そして、その直後に、 ぼくはメディアセットから新たに依頼を受けました。 向こう1年間、イタリアのカンピオナートを コメントしてくれませんか? というものでした。 イタリアのテレビ局の双璧は ライ(Rai:イタリア国営放送局)と、 ぼくが依頼を受けたメディアセットです。 そしてサッカーに関して言えば、 最も重要な時間帯は日曜日の22:30以降、 夜の試合が終り、 なにが起きたか、なにが起こり得たかの論争が すぐに巻き起こる時間帯です。 その重要な時間帯への、 ぼくの出演が提示されたのです。 もちろんOK!! こうして、ぼくはスポーツ・コメンテーターとして、 イタリア2大テレビ局のひとつに 出演することになりました。 ぼく個人的には「評判」や「視聴率」などは 重視しないと思っていたのですが、 さすがに初日であった9月10日の日曜日には、 ほとんどその事ばかりを考えそうになりました。 でも、結果は上々でした。 番組の名前はコントロカンポ(Controcampo)といいます。 第1回めの放送が終るや否や、 ぼくは、いきなり有名になっていました。 人びとがスーパーマーケットや路上や床屋などで ぼくに気付き、どこかお店に入れば 店員たちが他の客よりぼくに親切にするので、 恥ずかしくてたまりませんでした。 知らない人がぼくに仲間のように親しげに近付いてきて、 いろんな質問を投げかけます。 「ねえ、カカは世界一強い選手なのかい?」 「今年は、とうとうインテルが カンピオナートで優勝すると思うかい?」 「ユヴェントスはすぐにでもセリエAに戻れるの? それとも1年間待たなくてはならないの?どうなの?」 ‥‥と。 テレビとは不思議で危険なものだなあと、ぼくは思います。 出演者が番組を、より美しくも、より知的にもできる反面、 放映中に人びとがチャンネルを変えてしまえば、 出演者の優れている面もなにもかも、 まるで強烈な8月の太陽に照らされた霧のように、 どこかへ消し飛んでしまいます。
ともあれ、ぼくが出演している コントロカンポという番組は、 メディアセットがスポーツにあてている イタリア・ウーノ(Italia Uno)というチャンネルで 放映されています。 そして、ぼくらのコントロカンポの最大のライバルは、 さきほどもちょっと触れたイタリア2大放送局のひとつ、 ライが放送するドメニカ・スポルティーヴァ (Domenica Sportiva)です。 ドメニカ・スポルティーヴァは何年にもわたって、 日曜日の夜にイタリア人たちが一番よく見る番組でした。 ところが、ぼくが出演し始めた9月10日の夜以来、 どうやら奇跡が起きたようなのです。 なんとぼくらのコントロカンポが ドメニカ・スポルティーヴァより 多くの視聴者を獲得してしまったのです。 ぼくはコントロカンポでは サッカーをコメントしていますが、 この番組はサッカーについて話したり 議論したりするだけではありません。 インテルのティフォーゾのお笑い芸人が 笑わせるコーナーあり、 ライバルチームのACミランのティフォーゾである ブロンドの女優フェデリーカ・フォンターナも 出演しています。 ほかにも毎週、ゲストたちを招きます。 最新の放映では、 番組と同じコントロカンポという名前が付いている ヌードカレンダーのために、セクシーな写真を撮った、 素晴らしい黒人モデルさんが出ました。 お笑い芸人の作る笑いと、 美しいフェデリーカの脚のワンショットの間に、 ぼくとゲストがサッカーについて話します、 最新のゲストはプランデッリ監督、インテルのダクルト、 ACミランのピルロでした。 テレビスタジオには、まるで競技場のように 叫んだりブーイングしたり喝采したりする観客もいて、 熱気にあふれています。 放送の最後のころになると、 それまで2時間半もライトに照らされて、 もう暑くてたまらなくなります。 せっかくベテランのメイクさんが ぼくの顔に塗ってくれた白粉が、 溶け始めるほどです。 そう「メイク」もしてもらうのですよ。 路上やレストランや店などで ぼくを呼び止めてサインをもとめる時、 人びとはビックリしたように、ぼくを見つめます。 もしかして 「あれ、テレビの方が良い男だ‥‥」って 思っているのかもしれません。 もしそうだったら、 ぼくはちょっとガッカリです。 「メイク」ばかりが物を言うのかなあ‥‥と 疑いたくなりますからね。
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2006-09-26-TUE
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