フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

カカ、謎の新聞記事に翻弄される。


リカルド・エゼクソン・ドス・サントス・レイテ、
24歳で職業はサッカー選手。
だれのこと?

彼は現在ACミランでプレイしています。
完璧なチャンピオンであり、
欠けた所のないサッカー選手としては、
たぶん世界一でしょう。
ACミランだけでなく
他のチームのティフォーゾからも愛されています。
ロベルト・バッジョや
アレッサンドロ・デル・ピエロのように、
汚れのない顔立ちと明るく誠実な微笑みの、
「桁外れ」な選手のひとりです。
母親たちのだれもが彼のような息子を欲しがり、
若者たちがみんな彼のような兄弟を欲しがるような。

はい、正解は「カカ」でした。
「カカ」はニックネームで
本名はリカルド・エゼクソン・
ドス・サントス・レイテ、なのでした。

カカは3年前からACミランでプレイしていますが、
スキャンダルや論争の中心にいたことはなく、
不用意な言葉や短気な振舞いとも無縁でした。
私生活でも彼のクラスの高さにふさわしい
クリスタルのように、純粋に輝いて見えます。

彼はゴールを決めた時には空にむかって腕を上げ、
キリストに感謝します。
彼の信仰が彼に向上し続ける力を与えると、
信じているからだそうです。
それは彼の、この言葉からも分かります。
「優秀で裕福で有名な人と
 僕が言われるようになれたのは
 神様のおかげです。
 そのことを僕はいつも覚えていたいし、
 そうして僕と同じ若者たちへ、
 ひとつの例を築き上げたいのです」

この言葉は、親善試合のひとつのために
ブラジル代表チームと共にクウェートへ行った
10月初旬のころものです。
親善試合はビジネスの側面もありますが、
ブラジル代表という世界で一番愛されている
チームの人気を、
さらに増大させるのにも役立ちます。

「ぼくはその発言をしていません」。


すべては上手く行きました。
ブラジルは4対0でクウェートに勝ち、
だれもが幸せで満足‥‥のはずでした、
カカ自身のインタビューが
アラブのある新聞に載るまでは。
そのインタビューの中で彼は、
イスラムという宗教に目覚め、
マホメッドの信奉者になりたいと発言した、
と書かれていたのです。

イタリアは基本的には
キリスト教カトリックの国ですが、
他の宗教をもつサッカー選手も何人かいます。
中でも話題になったのは、
仏教徒になったロベルト・バッジョでした。
もしカカが同じように「改宗」したとしても、
なにもいけない事はないはずです。
しかしながらイタリアや、一般的な西側の世界では、
しばしば、イスラム教と
テロリズムが結び付いているかのように
人々が感じてしまうのも事実です。
アルカイダや、
N.Y.のワールドトレードセンター襲撃や、
ロンドンの地下鉄テロ、
マドリードの列車テロなどの
恐怖の記憶が、そうさせてしまうのです。

シェフチェンコがチェルシーに譲渡された今、
カカは、ACミランにいる
世界的に価値のある唯一のスターです。
そのカカのイスラム教への改宗は、
彼のイメージに大きな損害を与える怖れがあると
多くのイタリア人は感じています。
そればかりか、彼のもっとも大事なスポンサーの
ジョルジオ・アルマーニのイメージにも。
アルマーニは、合衆国など
イスラムが不安の目で見られている国々で
大成功をおさめているのですから‥‥。

当人のカカはといえば、
大急ぎでその発言を否定しました。
彼は新聞記者たちを召集し、
あのような発言は絶対にしなかったと説明しました。
「僕はすべての宗教を尊重しますが、
 僕自身はクリスチャンであり、
 それは一生変わりません。
 どうしてこのような説が出たのか分かりません。
 アラブの新聞がなぜあのような事を書いたのか
 思い当たりません。
 確かなのは僕がクリスチャンであることです。
 くりかえしますが、これはずっと変わりません」と。

キリスト教に対するこの「証し」とともに、
噂は次のカルチョ・メルカートへと進んでいます。
ACミラン側では、
来シーズンにはロナウジーニョがACミランのシャツを着て、
カカと一緒にプレイするだろうと言っています。
スペイン側では、
シーズン終わりにカカは
破格の契約を用意しているレアルへ
行くにちがいないと言っています。

さて、結果はどうなるのでしょうか。
カカのキリスト教への忠誠については分かりました、
でも、ACミランへの忠誠は‥‥?

訳者のひとこと
平和的で敬虔なイスラム教徒のかたたちには
遺憾なことでしょうが、
現状をつたえるフランコさんのレポートを
原文のまま翻訳いたしました。

ところで、ロナウジーニョの表記ですが、
いまだ迷う所です。
「ホナウジーニョ」としてある
日本語サイトもあるようです。
今まで「ロナウディーニョ」と
イタリア読みして来ましたが、
ブラジルでは「ジ」のようなので、
今回から「ロナウジーニョ」に
しようかと思います。
固有名詞のカタカナ表記は、難しい!!

翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-10-31-TUE

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