フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

トッティの決断。



イタリアを代表するサッカー選手のひとり、
「ローマの王子」と呼ばれる
フランチェスコ・トッティが、
大きな決断を下しました。
お金のためではなく愛のために、
イタリア代表アズーリのシャツを脱ぐ、と。

彼のこの決断は多くの嘆きを残しました。

トッティは11月11日に、
ミラノのサン・シーロ競技場でのACミランとの対戦で、
華々しいゴールを2本決めました。
そして、その2日後に
アズーリのロベルト・ドナドーニ監督に電話して、
こう告げたそうです。

「申しわけありませんが、
 ぼくはもう代表チームの一員として
 プレイしません」

そう、フランチェスコ・トッティが
イタリア代表チームである
アズーリに別れを告げたのです。
ということは、
彼がアズーリのシャツを着てプレイした最後のゲームは、
去る7月9日にベルリンで闘われたW杯決勝の
対フランス戦であると、
サッカー史に残ることになります。

でも、どうして今、
アズーリから去ると決めたのでしょうか?

そんなに非難されることなのだろうか?


彼は大変に美しいイラリーと結婚しており、
ひとりの息子がいます。

そしてイラリーはいまおなかに
2番目の子どもを宿しています。
フランチェスコ・トッティは、
家族と、所属するチームのローマに
自分を捧げたいと望んでいるのです。

トッティのアズーリへの別れの言葉は、
テレビで述べられました。
彼はもはやメディア的な存在であり、
彼の言動のすべてがニュースになるほどです。

「ぼくは自分をローマのチームと僕の家族に捧げたい。
 ぼくにとってローマの色である
 ジャッロ・ロッソ(黄と赤)は、
 アズーリ(青色)より大切なのです」

テレビで流された彼のこの言葉は、
ローマのティフォーゾたちを例外として、
全イタリア人を怒らせました。

何を置いてもまず一番がアズーリのシャツであり、
それを着るためなら全てのサッカー選手は
何でもする覚悟がある──。
イタリアではこれが一般的な考え方です。

フランチェスコ・トッティは、
自分の家族やチームの方がアズーリより大切と言って、
「全てのサッカー選手」の常識を
自らはずしたことになります。

彼はローマではアイドルであり続け、
今も、さらに人気をましています。
彼は、こう続けました。

「ぼくにとって、
 ローマのシャツとともにスクデットを勝ち取ることは、
 W杯で勝つことより大事です。
 代表チームとしてのゲームのストレスや、
 ぼくの日々の時間を妻や息子がうばわれるのは、
 もうたくさんなのです。
 ぼくは今30歳ですが、ローマの選手として、
 そして家族の父親としての人生を歩きたいのです。
 その他のことは大事ではありません」

こうして、11月15日にベルガモで行われた
イタリア対トルコの親善試合に、
トッティは召集すらされませんでした。
選手としてのコンディションは
とても良い時期だったにもかかわらず。

代表チームのロベルト・ドナドーニ監督は記者たちに、
今のところはトッティの事は考えないが、
UEFA EURO2008までに彼が考えを変えるように
説得を試みると説明しました。

そのすぐ後にトッティは

「すみません、
 UEFA EURO 2008を
 アズーリが闘っているであろう時には、
 ぼくは家族全員で
 バカンスを過ごしているだろうと思います」

と言い返しています。
彼の意志は固いということですね。

アズーリのシャツを着ているトッティを見るためには
大金をはたく準備があるスポンサーたちさえも、
彼の考えを変えられませんでした。

彼の選択のせいで彼が批判されるのは当然なのか、
ぼくはちょっと疑問に思います。
だって、彼はお金のためでなく愛のために
そうしたのだろうと言えるなんて、
素晴らしいじゃありませんか。
それに、そんなことは滅多にはありませんからね。

訳者のひとこと
人生の選択は個人の自由かと思いますが、
このことの影響力は、きっとイタリアでは
私たちの想像を超えるほど大きいのだろうと
思います。

ちなみに文中の対トルコ親善試合ですが、
ディ・ナターレが先制ゴールを入れたものの、
マテラッツィがオウンゴールをしてしまって
引き分けと報道されましたね。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-11-21-TUE

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