フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

テレビあってのイタリアサッカー。


ぼくは思うのです。
W杯もUEFAチャンピオンズ・リーグも、
そして忘れ難い感動の数々を見せてくれる
桁外れな選手たちも、
テレビの放送なしには、
ここまで生き生きとした存在として
感じることはできないのではないかと。
テレビのない時代にうまれたサッカーですが、
今や、“テレビがあるから存在している”と
言ってもよいのではないかと。

イタリアサッカーにしても、
たとえ世界チャンピオンのアズーリも、
UEFAチャンピオンズ・リーグ優勝のACミランとて、
例外ではありません。
テレビあってのイタリアサッカー、なのです。

セリエAかBかで、
テレビ局の収益もかわる。


買収スキャンダルがもとで、
大きな宣伝力を持つチームのいくつかが
セリエB落ちした先のシーズン中、
イタリア中のテレビ各局はずっと、
彼らがセリエAにもどることを、熱望していました。

そして来シーズンには
メッシーナ、アスコリ、キエーヴォが
セリエBに降格が決まりましたが、
この3チームのティフォーゾは少ない方なので、
テレビ局としてはそう痛いことではないでしょう。
ティフォーゾが少ないということは、
テレビを見る人の絶対数も少ないということで、
放送の間に入るコマーシャルを見る人も
少ないことになります。
このコマーシャルこそが、
じつはテレビを生かしているもの、
ひいてはサッカーにも命を吹き込むものです。

反対にセリエBからセリエAに戻ることが確実なのは、
ユヴェントス、ジェノア、ナポリです。
いずれもセリエAになくてはならない人気チームです。
これによって8月に始まる来シーズンでは、
サッカーに対する関心が高まり、
テレビからの収益、
テレビのコマーシャルによる商業的収益、
各試合の入場料の収益なども、
まちがいなく上昇するでしょう。

イタリアでのティフォーゾの数の多さをくらべると、
1位がユヴェントス、
2、3位がほぼ同数でACミランとインテル、
4位がナポリです。

ユーヴェのティフォーゾだけで
1400万人が数えられているとして、
これにナポリのティフォーゾも加われば、
サッカー関連のテレビ放送の視聴率は、
昨シーズンにくらべて少なくも50%の上昇がある、
と断言してしまっても、そう間違いはないでしょう。

この5月に終了したカンピオナート期間中の
毎週日曜夜の2大テレビ番組は、
おととしに比べて驚くほどの視聴率の低下がありました。
分析によれば、ユーヴェの、
ここ百年来初めての事態であるセリエB降格や、
カンピオナートのシーズン半ばで
すでに優勝を確実にしていたインテルが、
他のチームと力の差がありすぎたことも、
視聴率低下の原因にあげられました。

人気チームが視聴率を連れて来る。


イタリアの2大テレビネットワークである
Rai(ライ、国営放送局)と
Mediaset(メディアセット)は、
今までもずっと人気のある番組ではありましたが、
新たな準備をしているところです。

元イタリア首相でありACミラン会長の
シルヴィオ・ベルルスコーニのMediasetは
「Controcampoコントロカンポ」という、
ぼくがキャスターを続ける番組を、
毎日曜日夜に放送しています。
Raiも、
「Domenica Sportivaドメニカ・スポルティーヴァ」
という人気スポーツ番組を持っています。
今イタリアで最も多く見られているスポーツ番組が、
この2つです。

ユーヴェ、ナポリ、ジェノアがセリエAに戻れば、
セリエAを去って行く
メッシーナ、アスコリ、キエーヴォにくらべ、
はるかに多い観客を連れて戻るということになりますが、
これらのすべては、イタリアサッカーが
今後どうなるかということとは、また別の話です。

本当に来るのか来ないのか、たぶんあまり現実的ではない
エトーやロナウジーニョの到着をあれこれ考えるより、
ユーヴェのティフォーゾたちの帰還のほうが、
ずっと多くの人びとの興味を集めています。
これから1年間、各チームがなにを成し遂げるか。
本当の意味でのメルカートの結果はどうだったのか。
そして、技術面もふくめた、
イタリアサッカー全体の、見直しの成果はどうだったのか。
そのときに、わかるはずです。



訳者のひとこと
風はイタリアサッカーに良い方向に
吹いているような印象がありますが、
こればかりは蓋を開けてみないと分かりません。
来期も、フランコさんのリポートが楽しみですね。

あ、その前に、
今年も楽しいバカンスのお話が読めるでしょうか。
でも、南イタリアでは6月のおわりに
気温45度を記録したというニュースもありました。
日本も相当な覚悟が必要かもしれません‥‥。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-07-03-TUE

BACK
戻る