フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

フランコのモンテプルチアーノ案内。


ぼくのバカンスが始まりました。
旅の始まりは、トスカーナ地方のモンテプルチアーノです。
ミラノから行くとフィレンツェを通り越してさらに南、
シエナの近くに位置します。
世界遺産に登録されたオルチャ渓谷からは
約20kmのところです。
トスカーナのモンテプルチアーノへの旅ということは、
「ルネッサンス時代への旅」と言えます。
レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなどの
芸術家がたちが活躍した、
ヨーロッパ社会の最も美しい時代であるルネッサンスは、
トスカーナを中心に興りましたから。



まさにモンテプルチアーノは、
ルネッサンスの詩人アンジェロ・ポリツィアーノの
生地でもあります。
彼は、イタリアの芸術の発展に大きく貢献した
ロレンツォ・ディ・メディチの、宮廷詩人でした。
ロレンツォは豪華王(イル・マニーフィコ)とも呼ばれ、
ルネサンスの芸術の巨匠たちを後押しして育てた人です。

トスカーナは、つらなる丘の美しさでも有名です。
そしてこの地に中世に生まれた多くの街と同様に、
モンテプルチアーノも丘の上にあります。

そこから周囲の、
イタリアでも有数に品質の高い葡萄を育て
最高のワインを生産する小さな丘を、
いくつも支配していました。
世界的に愛されているワイン、
「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」と、
それに最も近い従弟みたいな
「ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ」が、
ここで造られています。

ここを訪れたのは、
7月の太陽が燦々とふりそそぐ日でした。
でも、夏の暑さが厳しいフィレンツェとちがい、
ここには緑があふれていますから、
空気は果てしない春のように快く、
ぜんぜん蒸し暑くはありません。
世界史にも刻まれた高い芸術性をもとめて、
多くの観光客がモンテプルチアーノを目指します。
イタリア人も、外国人も。
ここでは坂のある細い道や
アンティークで気品のある建物が、
独特な雰囲気をかもしだしています。
もしも、陽の光が甘味なクライマックスに達する
日没まぎわに散歩することができたなら、
もはやこの世のものとは思えないその美しさは、
このままずっと、ここにこうしていたい、
時間よ止まれという気持ちになるほどです。

観光客たちは、道で、
ほとんど座り込んでくつろいでいます。
その傍らのバールでは、
ここの伝統的な他に類を見ないワイン、
滅多に味わえないからこそ格別に美味しいワインが飲めます。
近頃はやりの、どこで飲んでも同じ
アメリカ式清涼飲料水など、
飲んでいる場合ではありません。

「ノービレ」ワイン貯蔵庫への訪問は、
またとない素晴らしい経験になるでしょう。
素晴らしいオーク材の百本ほどの樽の中で、
ワインが熟成の時を過ごしています。
めでたく「ノービレ」になるには、
最低7年が必要なのだそうです。
こうして熟成したモンテプルチアーノのワインは、
「神々の飲み物」と言えるほどの味わいになります。
ここから旅立つワインは、普通の食事をさえ
思い出に残るほどの印象的な晩餐に変えてくれるでしょう。
ワインを買おうか、どうしようか迷ったら、
まったく無料の試飲コーナーも用意されています。
急いで決めることはありません、
まずゆっくりと、愛情もこめて、
ワインを味わってみましょう。
そんなモンテプルチーノの1日は、
ありきたりな1日にはなりません。
「人生の至福の時」が、そこにあります。
だからこそ、可能であればぜひとも訪れてください。
「訪れるべきだ」と言っても言い過ぎではないと、
ぼくは思います。


訳者のひとこと
始まりました、フランコさんの旅のリポート!!
ああ、トスカーナの丘‥‥
日本なら富良野、美瑛のあたりが似ていると
言えなくもありません。

写真の看板の文字ですが、
VISITATE  (来てください)
le CANTINE(ワイン貯蔵庫)
CONTUCCI (名前でしょう)

ここは店鋪で、
「あっちに貯蔵庫があるから来てね」
という感じですね。
行きたいです、できればすぐにでも。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-07-18-WED

BACK
戻る