フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

F1スパイ事件、決着。


世界でもっとも有名なスパイと言えば、
「007」ことジェームス・ボンドでしょうか。
彼の生みの親である小説家、
イアン・フレミングもびっくりのスパイ事件が、
イタリアのフェラーリ社と、
イギリスのマクラーレン・メルセデス社の間で起きました。
みなさんの国、日本のホンダも、
あわや巻き込まれたかもしれない事件でしたので、
きょうはその話をいたします。

事件は2007年6月22日に始まりました。
フェラーリが、そのエンジニア長である
ナイジェル・ステップニーを告発します。
モナコ・グランプリ中に白い粉を用いて
マシンに妨害工作を計ったというのです。
かたやマクラーレンは7月3日、
設計主任のマイク・コフランを停職処分にします。
F2007の780ページにおよぶ図面を含む
フェラーリの技術データを、
自宅で保管していたというのです。
これはあきらかなスパイ事件です。

首謀者は誰か? あやつっているのは誰なのか?
フェラーリ社の技術データを流したのは誰だ?
マクラーレンが悪いのか、フェラーリ内部の謀反か?
ふたつの事件をきっかけに、ことは謎に満ちた
ミステリー小説のような展開を見せ始めました。


事を受けた国際自動車連盟(FIA)は、
スポーツ法やF1規定に違反する行為が
両チーム共同で行われたのかどうか、
突き止める調査を開始しました。
7月6日、マクラーレンのトップであるロン・デニスが、
“第3のチーム”について口を開きます。
なんとそのチームとは日本のホンダだというのです。

その後、ホンダ・レーシングF1代表の
ニック・フライが、
6月にフェラーリのステップニーや
マクラーレンのコフランと会ったと明かし、
第3のチームがホンダであることは明らかになりましたが、
当のホンダのフライF1代表は、
データ書類を留保しておく要請も、
書類の受け渡しもいっさい無かったと明言しました。
そして裁判所各所で審議の結果、
日本のホンダは先週木曜日(2007年9月13日)、
全く潔癖であることが認められました。


マクラーレン、史上最高額の罰金。


裁かれたのはマクラーレンでした。
フェラーリに被害を与えるスパイ行為により、
F1史上最高額となる1億ドルの罰金と、
今期の成績上のすべての点数剥奪という
重い処分を受けました。

こうして事実上フェラーリが
世界ナンバーワンのメーカーの座に上がりました。
一方でマクラーレン側ですが、
ドライバーのスペイン人のアロンソも、
イギリス人のハミルトンも、
彼ら自身の責任ではない、ということで、
何の処分も受けずに済みました。

「いかさま」で「スポーツ裁判」と言えば、
記憶に新しいのは2006年7月、
イタリアサッカーのスポーツ裁判です。
ぼくがこの場でも数回に渡って取り上げたように、
ユヴェントスとACミランが
カンピオナートのいくつかの試合を八百長した、
もしくは「八百長しようとした」ということで、
2006〜07年のスクデットは
インテルに渡されるべきだという決定がなされました。
じつはこの判決を批判する人も多かったのですが、
それから1年と2ヶ月が過ぎた今、
イタリア人たちは、
かれらのもうひとつの情熱であるF1で、
大きな喜びをもってその勝利を受けとめています。

先週の木曜日パリにある国際自動車連盟(FIA)は、
先に書いたように、
F1におけるマクラーレン・メルセデスの
今期の成績を取り消しました。
アロンソとハミルトンのお陰で
完璧に1位だったのですが。

この工業スパイの話と
1年と少し前にイタリアスポーツ界を仰天させた
サッカースキャンダルには、
似た所があります。
当時いかさまをしたのはユーヴェとACミランであり、
(ほかにもフィオレンティーナ、ラツィオ、レッジーナ)
今度はマクラーレン・メルセデスだったのですが、
この二つの醜い出来事は、最後の最後には、
してはならない事をした者が罰せられました。
この二つの出来事の唯一の救いであり、似ている点は、
罪を犯したものがツケを支払ったということです。

潔癖の勝利です。
昨年はインテル、今はフェラーリ、というわけです。



訳者のひとこと
私としてはですが、
良く分からないのは、
なんでもともと実力のあるチームが
いかさまをしなければならないのか、
という点です。

追われる立場というもののプレッシャーに、
悪魔がそっとつけ込むのでしょうか?

そしてこういう場合、
いつも迷惑を被るのは現場、
選手たちでありドライバーたちですね。
どうも納得がいきませんが‥‥。

翻訳/イラスト=酒井うらら

2007-09-18-TUE

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