ベルルスコーニ、2008年春。
ACミランのオーナー会長である
シルヴィオ・ベルルスコーニですが、
良くも悪くも、彼が最も代表的な
イタリア人であることに変りありません。
彼は自分を単なる政治家ではなく、
王様より少し下くらいと思っているようです。
たしかに彼は2年前までイタリアの首相でした。
そしてたぶん、この4月の総選挙で
その座に返り咲くでしょう。
ということは、彼はイタリアで最も支持されており、
同時に最も憎まれており、また最も愛されており、
そして最も羨ましがられているのです。
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老いてなお、ますます盛んに。 |
彼は72歳ですが、選挙キャンペーンでは
永遠の若者として振る舞いたがっております。
「私の政党の女優たちとは、
今までと違う別のことができる」と
彼は言っています。
そして無職の若い女性からの
「私は失業中です。人生で成功するには
どうしたら良いでしょう?」という質問への
彼の答えは、大激論を引き起こしました。
彼の、しゃれたつもりらしい返答は、
マリリン・モンロー主演の映画
「百万長者と結婚する方法」を思い出させました。
気の毒な失業中の若い女性に、
彼はこう答えたのです。
「大金持ちと結婚なさい。
できるなら、お金は山ほど持っている
私の息子ピエルシルヴィオとか‥‥」
▲ピエルシルヴィオ
当然ながら、この言葉は
労働組合やフェミニストたちの
いら立ちに火を付けました。
近い将来の政府のリーダーが、
イタリアで日ごとに重大さを増している失業問題を
下品な冗談に単純化させるなど、
常識的に考えられるだろうか? というわけで。
ベルルスコーニは、
いち国家の政治家というよりは起業家であり、
イタリアにおいて商業的なテレビを考え出し、
商品を売るということに於いては
他の誰よりも長けているのです。
しかし、どう振る舞うかとなると、
「イタリアを治めるのは難しいことではなくて、
単純に無駄なことなだけだ‥‥」と言った、
ベニート・ムッソリーニを思い出させます。
今、イタリアには、非常に重大な
アリタリア航空の問題があります。
それは数ヶ月前に崩壊したプローディ政府が、
世界最大の航空会社であるエール・フランスに
売却する方向で解決しようとした問題です。
アリタリアのエール・フランスへの売却は、
ミラノのマルペンサ国際空港に危機をもたらすでしょう。
そこへベルルスコーニは、この交渉を止め、
彼の息子のピエルシルヴィオに部分的に属している
AirOne社にアリタリアを買わせる案を投げかけました。
「私の息子と結婚しなさい」発言が物議をかもした
あの「息子ピエルシルヴィオ」ですね。
彼は、今やイタリア中の若い女性が、
経済的な問題を解決するために
結婚したがっているらしい億万長者です。
ベルルスコーニは、みんなを幸せにしたいのです、
その微笑みと約束の数々で。
彼のACミランのティフォーゾたちに対しても、
彼は「別格の選手と、チャンピオンを一人、買うだろう」と
約束しました。
これを聞いても、
ACミランのティフォーゾたちは
全く幸せではありませんけどね。
彼らは「別格の選手」が
2年前にACミランが売ったシェフチェンコであり、
世界チャンピオンとはザンブロッタのことであり、
ザンブロッタはすでに30歳を越えていて、
彼のサッカー的能力はすでに出し尽くされたと、
ティフォーゾたちは知っていますから。
約束、約束、そして約束。
ベルルスコーニらしいスタイルの中で、
これがもっとも純粋に彼らしいやり方です。
訳者のひとこと |
マリリン・モンロー主演の
「百万長者と結婚する方法」について、
ちょっと調べてみました。
1953年制作ですから、
当時は「百万長者」で最高級だったのですね。
後にTVシリーズになった時には
「億万長者と結婚する方法」と
改められたようです。
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翻訳/イラスト=酒井うらら |
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