ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。
2008-09-23-TUE
デル・ピエロの2008年。

きょうは、アレッサンドロ・デル・ピエロに
ご登場願いましょう。
彼は、いわずと知れたユーヴェのシンボルですが、
それだけではなく、
カルチョ・イタリアーノの中で、
もっとも愛され親しまれている選手です。

クリスティアーノ・ロナウドや
ロナウジーニョのような強面ではありませんが、
安心感を与える印象を持っています。
彼のような兄弟がいたら‥‥
彼のような行儀の良い素敵な息子がいたら‥‥と、
だれもが夢見てしまいます。

delpiero

komidashi

もう一度、アズーリへ。

彼は今、時間の流れというものに
挑戦状を突きつけ、
2010年に南アフリカで開かれる
W杯への参加を目指しています。

彼は、こう言います、
「もちろん、ぼくは
 100%ユヴェンティーノですよ。
 でも、アズーリというのは、何かもっと‥‥
 もっと特別なものです。
 ぼくはW杯に3度出場していますが、
 4度目の出場で、
 キャリアを締めくくりたいんです」と。

アズーリの現監督であるマルチェッロ・リッピは、
デル・ピエロがUEFAチャンピオンズ・リーグで見せた
ゴールに興奮しています。
「彼は時の流れを超越していますよ、
 若い選手たちにとって、
 最高級の選手としてのお手本ですよ。
 次のW杯までの2年間で、
 彼のコンディションがどうなるか分かりませんが、
 現状を維持できれば、まちがいなく出場できる」

アレッサンドロ・デル・ピエロ、もうすぐ34歳、
まだまだ世界を驚愕させ、
イタリアには、2年後にもまた
果てしない喝采を受ける希望を与えています。

komidashi

魔法使いのように。

彼は、まるで第2の人生を生きるように、
錆びることを知りません。
これは最も偉大なカンピオーネたちだけが、
出来ることです。

正確には、彼が34歳になるのは
この11月ですが、
2年ぶりにUEFAチャンピオンズ・リーグに
参加できた「彼のユーヴェ」を、
9月17日のゼニト戦で勝利に導きました。
ゼニトはロシアのチームで、
昨年のコッパUEFAの覇者であり、
この8月末には、マンチェスターUを相手に
欧州スーパーカップの勝利をもぎ取った、
強豪チームです。

セリエAの八百長スキャンダルで、
セリエBに降格されるなど、
ボロボロの数年を送っていたユーヴェにとって、
国際的レベルを取り戻す意味もある、この試合で、
デル・ピエロは魔法使いの衣装をまとったかのような、
彼にしか出来ない彼本来のスペクタクルを展開しました。

このところ、デル・ピエロのプレイは、
まるで「海の波の法則」に立ち向かうかのように、
引くことを知りません。
鎮まるかに見えて、まだまだ次の季節への予感を
孕ませています。

実は、この対ゼニト戦に、
ユーヴェは苦戦を強いられていました。
そして後半31分、
このフィールド上最強のカンピオーネが決めました。
彼のゴールは、
まるで不思議なレーザー光線さながらに真っ直ぐに、
考えられないほどのカウンター攻撃の鉄拳を、
ゼニトにお見舞いしたのです。
このゴールだけでなく、
デル・ピエロは試合を通して
重要な存在でありつづけました。
ロシア式組織力の中に分け入り、
ボールをとらえ、ドリブルを試みます。
時には、まるで現実をかえりみないかのように‥‥
それも、サッカーとは選手の個性が作るものだと
見せつけるかのように‥‥

delpiero

まさにデル・ピエロの個性、
そして彼の彼たる価値が、
フィールド上で、もう15年以上にも渡って、
世界を振り回しているわけです。


訳者のひとこと

何も申し上げることはありません。
不遇の時代もユヴェントスを支え続け、
名実ともにキャプテンですね。
これ以上、何を彼に要求できるでしょうか?

モスキーノ

翻訳/イラスト=酒井うらら



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