ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-02-17-TUE

宿命のふたつの星。


ジョヴァンニもマルチェッロも、
典型的なイタリア男の名前ですが、
まさにこの名前を持つ2人の監督が、
2010年W杯南アフリカ大会への
アズーリの運命を左右しようとしています。

この2人は、
ユヴェントスとインテルを監督したことがあり、
UEFAチャンピオンズ・リーグで優勝しており、
アズーリを率いてW杯を1度経験しています。

そう、ジョヴァンニ・トラパットーニと
マルチェッロ・リッピですね。
さらに言えば、この2人の監督は、
まちがいなくイタリア人たちにとても愛されています。

franco
▲トラッパトーニ ▼リッピ
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マルチェッロ・リッピ監督は、
ドイツ大会でアズーリを優勝に導いたのち
いったん監督を退き、
今またアズーリのW杯連覇を達成するために
再び監督の座にもどりました
イタリアサッカー史上、
W杯の連覇を成し遂げたのはただ一人だけ、
やはりイタリア人のヴィットリオ・ポッツォです。
1934、1938年の2大会を連覇しました。

一方のジョヴァンニ・トラパットーニは、
現在アイルランド代表チームを率い、
欧州予選ではイタリアと同じグループ8組にいます。
そして勝点がイタリアと並んでおり、
これから1位の座をかけて
イタリアと対戦しようとしています。

予選リーグのグループ1位だけが
そのまま南アフリカ行きとなり、
グループ2位のチームは他のグループの
2位チームとのプレイオフを余儀なくされますから、
2人のイタリア人監督が
グループ1位を争うこの対戦は
ただごとではない戦いになるでしょう。
決戦はほとんど命がけという色合いが増しています。

強気のリッピ、鼻高々のトラパットーニ。

去る2月10日火曜日、
ロンドンでのブラジルとの親善試合で、
アズーリは手痛い負けをこうむりました。
アズーリの連勝をストップされたリッピ監督の
ご機嫌が、良いわけはありません。
「私はこのところ負けることに慣れていなかったが、
 ここでブラジルの方が
 我々より強いという結果が出てしまった。
 しかし1年半後の南アフリカでは、
 我々は世界タイトルを守るだろう‥‥」と、
それでも強気はくずしておりません。

franco

この負けの翌日、
彼の敵味方であるトラパットーニが率いる
アイルランド代表の、対グルジア代表戦を、
リッピは観に行きました。

トラパットーニは勝利しましたが、
リッピは多くのコメントは避け、
アイルランド代表はイタリアにとって強敵であると
言うにとどまりました。

反対にトラパットーニは鼻高々で、
こう言っております。
「イタリア代表側の人間として
 南アフリカに行けたら、素晴らしいでしょうね。
 私はイタリア人ですから。
 でも、サッカーに国境はありません。
 まさに“私の”アイルランドがイタリアを負かして
 グループ1位になり、2位のアズーリは
 プレイオフで勝利して本戦に進むというのが、
 私にとっては理想的だね」と。

franco

W杯日韓共催大会で韓国に負けた
トラパットーニにとって、
これが2度目のW杯となります。
「あの呪われた試合から7年が過ぎました。
 あの時のことを考えると
 眠れない夜もたびたびありますよ。
 あの時のアズーリは、デル・ピエロ、トッティ、
 ヴィエリらがいる最強のチームでしたから、
 残念で残念で‥‥。
 でも人生というものは
 いつもやり直しのチャンスを与えてくれるんですね」
と、その不屈の精神を燃やしているようです。

イタリアか、アイルランドか?!

イタリア代表とアイルランド代表は、
南アフリカ行きのひとつの席をかけて戦いますが、
大いなるライバル関係は、
今までも全く折り合わなかった
この2人の監督のものだけにとどまりません。

そこにはロビー・キーン選手もいます。
アイルランドのフォワードセンターである彼は、
イタリアとの2試合が待ちきれません、
リッピに雪辱をはらすチャンスを
長いこと待っていたのです。

franco

「2001年のことでしたが、
 ぼくはまだとても若かく、
 インテルに所属していました。
 でも当時インテルを監督していたリッピは、
 ぼくを正選手としてプレイさせてくれることが
 ほとんどありませんでした。
 その上、インテルが負けるたびに、
 ぼくのせいにされたし‥‥
 イタリアにスパッとゴールを入れたら、
 ぜったいに気持がいいだろうな‥‥」

イタリアは、
W杯ドイツ大会で優勝したのち、
監督をリッピからドナドーニに替えました。
しかしEURO2008で準々決勝戦に敗れたことで、
1年以上も待機していたリッピを呼び戻したのでした。

それぞれにイタリアサッカー史を華やかに
彩ってきたこの2人の監督を、
宿命が今、向かい合わせに置きました。

イタリアは最良の勝利を望んでいます。
アイルランドは、
トラパットーニがリッピに対してと言うだけでなく、
世界チャンピオンのアズーリからもぎ取る勝利を
目指しています。


訳者のひとこと

この対戦は4月1日の予定ですね。

ワタクシ個人的には
トラパットーニ監督のファンですが、
‥‥‥‥イタリアを応援する、いや、
その前にニッポンを応援しなくては。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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