第4回
ニャンコ先生と由美かおる |
糸井 |
お二人とも、
猫に関わっている時間が実に多いですねえ。
保坂さんの場合、猫を拾ってきた日付とか、
そういうのもキッチリ覚えてるんでしょ。 |
保坂 |
日付を覚えるの、得意なんです。
それで腹がでかくなったノラが
うちに来なくなった日付とか、
子猫が生まれた日を
忘れないように一応書いてたり。 |
糸井 |
川崎さんは記録みたいなことは。 |
川崎 |
ノラのコが死んだ時だけ、
「A×」とか「B×」とかつけてる。 |
糸井 |
外猫にも名前はあるの? |
川崎 |
自分だけにわかるタグを
ちょっと貼るみたいな感じでね。
例えば、額に「八」という模様があるんで
「ハッちゃん」とか。
だけど、別の人はそのコのことを
「ブースカ」なんて呼ぶんですよ。
「なんだよ、これブースカじゃねえよ」
って心で思って、その人がいなくなってから、
「違うだろ、なあ、ハッちゃん」(笑)。 |
糸井 |
名前は見た目とか形状でつけるわけね。 |
川崎 |
居方でつけることもあるけど。 |
保坂 |
イカタって何ですか。 |
川崎 |
そこにいるたたずまい。
長老なら、
「たしかに長老みたいだな」って感じ。 |
保坂 |
そういえばうちの隣の人も、
「この猫は近寄りがたいからニャンコ先生だ」
って。 |
川崎 |
前に、よく通るお寺の門の下にいる猫に、
僕は「ボチゾウ」って名前をつけてたんですね。
ところがある時、
別の人が「かおるちゃん」って呼んでる。
僕がそばに行くと、
「ねえ、由美かおるにソックリでしょ」って。
そういえば似てるのよ、由美かおるに(笑)。
俺は居方でボチゾウにしちゃったんだけど、
「ああ、オレは観察力足りなかったな」と思って。 |
糸井 |
反省してるよ(笑)。
そういう猫たちの写真なんかも撮るんでしょう。 |
川崎 |
最初は写真もビデオも撮ってたけど、
撮った猫が次々に死んじゃうんですね。
ノラの場合、平均寿命が2歳くらいだから。
それで、記録するのはいっさいやめた。
あとで見るのが切ないから。 |
保坂 |
僕は猫の写真、撮りまくりですね。
うちの猫なんか、
同じポーズでも何度も撮っちゃうし、
写真を整理する時にも、
ついまたじっくり見ちゃったりして。
猫は何をやってても、どんなポーズをしてても、
またそれを何度見ても、
可愛くてどうしようもないもんだから。
1日100回くらいは
「可愛いな、可愛いな」と思ってますよ。 |
糸井 |
じゃあ、猫の写真集買ったりとか。 |
川崎 |
写真集いっぱい出てるけど、
本当にいいのは少ないなぁ。
荒木惟経さんの『愛しのチロ』は
すごくいいですね。
写真見ただけで泣ける。
あと武田花さんの『猫 TOKYO WILD CAT』とか。
まぁ、人気があるのは
動物写真家の岩合(光昭)さんのものですが。
たしかに岩合さんの猫、可愛いんだけどさ、
その可愛さのコアしか
写されていないような気がして‥‥。 |
保坂 |
僕は岩合さんの写真、いいなぁ。
荒木さんのも武田さんのも見るけど、
あんなかわいそうな猫、
わざわざ記録に残して見せなくってもいいよ
って思ってしまう。
岩合さんは、いちばん幸せな猫の姿を撮るでしょ。
だからそっち。 |
糸井 |
両方言ってる意味はわかるけど、
それ、エロ本の好みに近いものがない?
ドキュメント派とプレイメイト派と。 |
保坂 |
だいぶ違うと思うけど。(笑) |
糸井 |
お二人の話を聞いてると、
流れのままに猫とつきあい始めて、
どんどん猫と世界が共有されていってますね。 |
川崎 |
僕の場合は、家猫とノラ猫の両方の猫から、
立体的に猫観みたいなものができてますね。 |
保坂 |
外猫と家猫はそれぞれに違いますからね。
うちの猫はお腹が空くと、
こっちが出すまでいろんなことをしてみせます。
エサをしまってあるところに行って
ガチャガチャやったり、出すまでやり続ける。
だけど、世話してる外の猫は、
こっちが出さない雰囲気があると、
フッと去っていっちゃう。
その姿に胸がキュッとなる。 |
糸井 |
泣かせるパターンですね。 |
川崎 |
最後にお正月らしい笑い話ね。
猫は去勢すると玉とられちゃうでしょ。
それで去勢したコに、お年玉で何買うんだい?」
って聞いたら「玉買う」って言うんですよ。
擬似玉ですね。 |
糸井 |
え、ニセモノの玉? |
川崎 |
疑似玉って売ってるんですよ、山猫商会で。
1号から5号までサイズがあって、
歩くとカチカチと楽しい音がしたりしてね。 |
保坂 |
ペシャンコはやっぱりいやなんだ。 |
川崎 |
ただ、あんまり大きい玉だと歩くのに邪魔だから、
体に比例した玉をつけないとおかしいよって。 |
糸井 |
分相応の玉を(笑)。
そういう会話を、猫としてるわけね。
フフフ、やっぱりこの人たちが面白い。 |
(つづく)