原丈人さんと初対面。 考古学から『21世紀の国富論』へ。ベンチャーキャピタリストの原丈人さんと 糸井重里が会いました。 最初、コンテンツにしようなんて 考えてなかったのですが そのときの話が、とにかくおもしろかったのでした。 考古学者のたまごから 世界が舞台のベンチャーキャピタリストへ。 一歩一歩、「現場」をたしかめながら歩んできた 原さんの「これまで」と「これから」。 そこにつらぬかれている「怒り」と「希望」。  ぜひどうぞ、というおすすめの気持ちで おとどけしたいと思います。 ぜんぶで10回、まるごと吸いこんでください。 あなたなら、どんな感想を持つでしょう。


第2回 お金持ちになれば幸せになれるという病。
原 まぁ、いつも元気な人って、たしかにいますよ。
糸井 それが、アメリカのエリートの姿だと
描かれるじゃないですか、典型的に。
原 なにせ、アメリカって国は
俳優を大統領に選ぶところですから。
糸井 ああ、そうですね。
原 優秀な学生は、ハーバードだ、
スタンフォードだのの
「ビジネススクール」なんかに通いますけど、
あれって結局、「しゃべり方教室」なわけですよ。
糸井 演説の練習をしているんだ。
原 そう、そう。

「1のことを、まるで10のように」。

そういう表現技術を学ぶところです。
いかにも自信満々に、ニコニコとね。

それが、ハーバードのビジネススクール。
みんながみんな、本当に優秀かどうかというと‥‥
まぁ、どうかなと。

糸井 そうなんですか(笑)。
ちょっと安心しちゃいますね。
原 スタンフォードのビジネススクールのほうは
「ソロバン教室」ですね。

株価をいかに高くするか。
言ってみれば、まぁ、それだけです。
糸井 ええと‥‥はい(笑)。
原 つまり、なにが言いたいかというと、
どうやったら社会をよくできるかなんて、
教えてないんですよ、どこも。
糸井 なるほどなるほど‥‥そうですか。
原 自分を「魅せる術」については、
ものすごくトレーニングを受けています。

あれだけ、人種・宗教・言語・国籍が
多様な社会にもかかわらず、
「お金持ちになれば幸せになれる」と
画一的に信じ込まされてしまうんですよね。
糸井 それが、アメリカンドリームの正体だと。
原 アメリカの病といっても、いいかもしれない。
糸井 だから、実際にお金持ちになったときに
本当に幸せかどうかって、また別の話なんですよね。
原 ええ、ベンチャーキャピタルという仕事柄、
いくつものベンチャー企業が、
大会社になっていくのを、見てきました。

昨日まで、それこそ
「脂っこいファーストフード」ばっかり
食べていたような若者が、
とつぜん、何百億円という資産を持つ身に
なってしまうわけです。
糸井 それって‥‥どういう気分になるんだろう?

原 やっぱり、みんな
「お金を使えば幸せになれる」と信じてますから、
いろんなモノを買うんですね、まずは。

で、買っても、買っても、買っても‥‥
なんだか、とくに幸せになった感じもしない。

そこで、どうしたらいいのか
わかんなくなってしまう人って、けっこういますね。
糸井 ははぁ、なるほど。
原 で、麻薬に手を出してしまったりとか。
糸井 それはもう、社会的な問題ですよね。
原 実際に知っている例でいいますと、
若いころから
大きな家がほしいと思っていた人が成功して、
本当に、大きな家を買えるようになった。

で、買っちゃったんですよ、スイスに。

‥‥お城を。
糸井 わかりやすいですねぇ(笑)。
原 でも、家というのは、
ある一定の大きさ以上になると‥‥住みにくい。
糸井 あはははは(笑)。
たしかに、そうでしょう。
原 家が大きくなったら、奥さんと子ども以外にも
掃除する人だ、庭の手入れする人だ、
料理人だ‥‥ってたくさんの人が要るじゃないですか。

自分の家なのに、落ち着かないし、
ヘンに気を使っちゃったりとかしてね。
糸井 どこに住んでるかわかりませんね、それじゃあ。
原 だから、本当の幸せってのはね、
お金のある、なしに関係ないんでしょうね。

使い古された言いかたかもしれないけど。
糸井 でも、原さんは実際の例を「見てる」から
それが、実感として、わかるんでしょうね。
原 わたしも、大学を出て考古学をやっていたときなんて、
年収にしたら、60万円ぐらいしかなかった。

でも、生活態度としては、
いまと、ほとんどいっしょでしたよ。
糸井 ぜんぜん、変わらない?
原 ええ、変わりませんね。
糸井 その、若いときの考古学って、
いまのお仕事に活かされていると思いますか?
原 日本とは別の価値観があるんだってことを
若いときに
肌身で感じられたことが、いちばんの収穫ですね。
糸井 なるほど、原さんという人のルーツって、
そのあたりにありそうだなぁ‥‥考古学。

2007-11-21-WED

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN