第6回 ナローバンドでハイビジョンが観れる?
糸井 これまでのお話を聞いていて、
もうひとつ思ったのは、お父さんの「鉄道模型」が
最たるものだと思うんですけれど‥‥
趣味っていうのは、「消費」のかたちをとった
「生産」だと思うんですよ。
原 ああ、なるほど。
それは、実感的にわかります。
糸井 これからの時代は、
そんな「消費」に裏付けられた「生産」が
大切になってくるだろうって
ぼくは今、ことあるごとに言ってるんです。
原 うん、うん。
糸井 つまり、お金を儲けた行き着く先は
会社の「売却」やら「吸収」やら「合併」‥‥。

そんなニュースが、現代を象徴しますよね。

でも、これからの時代のビジネスには
「消費のクリエイティブ」が
どんどん必要になってくると思うんです。
原 消費のクリエイティブ。
糸井 ええ、ぼくが、以前からよく使っていた
ことばなんですけど‥‥。

つまり、「よい商品」を生産するには
つくり手の側が「消費のプロ」にならないと
ダメなんじゃないか、ということ。
原 うん、なるほど。
糸井 日本で今、そのことを自然にやれているのは、
おもに女性だと思うんです。

たとえば、同僚や友人と集まって、
おいしいレストランでランチを食べる。

会社にこもってる男たちからしたら、
「仕事もしないで!」って言うかもしれないけれど、
「よい消費」の経験がなかったら、
「よい商品」は「生産」できないはずなんです。
原 どこのランチがおいしいか、
いま、なにがおもしろいかってことを
知っていなければ、ね。
糸井 そのあたりのことをわかっていない人が
商品をつくっても、
たんに、ヘタな鉄砲を数撃ってるだけで。
原 当たりゃしない、と。
糸井 で、今日、あらためて原さんとお会いしたら、
「鉄道模型」という
とんでもない「消費の実体」を見た(笑)。

きっと、ここからまた生まれるものがあって、
それが、原さんのお仕事、
つまり「生産」に結びついていくんでしょうね。
原 それは大いにありますね。
糸井 今の原さんの興味は、どのあたりにあるんですか?
原 いろいろとあるんですけれど‥‥。
糸井 ええ、知ってます(笑)。
原 ここ最近、ずっとこだわっているのは
「コンピュータ以後のテクノロジー」。

コンピュータを使うのが、イヤなんですよ。
糸井 以前も、おっしゃってましたよね。
「計算機のなれの果て」なんか要らないと(笑)。
原 ええ。
糸井 たしかに、コンピュータのことを
「計算機の究極の進化形」で、
それ以上でもそれ以下でもないと思ったとたん、
自分を含めたみんなが、
その「なれの果て」に追い詰められてる姿に、
哀しくなっちゃいますよね。
原 そうでしょう? ‥‥あ、そうだ!

ついこのあいだ、
できあがったばかりのあれ、見てもらおう。

これね、わたしのつくった会社で
開発したんですけど、
「XVD」というテクノロジーなんです。

名前くらいは、ご存知かもしれませんが。
糸井 ははぁ‥‥ずいぶんキレイな映像ですね。
原 ホワイトボードに書いた文字が見える
テレビ電話って、今までなかったんですよ。
糸井 へぇー‥‥。
原 でも、この「XVD」という技術を使えば、
ホワイトボードに書いた文字も見える。

しかも、これでデータ容量は「800K」。
つまり「1メガ以下」なんです。
糸井 これって、ハイビジョン映像ですか?
原 そう、ハイビジョンのように巨大なデータも
特殊な技術で圧縮して
いわゆる「細い回線」、つまりナローバンドでも
画像の質を落とさずに、伝送できる。

それも、時間のズレがなく、リアルタイムに。
糸井 映像がカクカクしてませんね。
原 なめらかで、きれいでしょう?
糸井 これが、原さんの今の興味なんですね。
原 これまでの圧縮方式だと
ハイビジョン映像を伝送するためには
20メガの回線容量が必要なんです。

つまり、さっきの「800K」の映像と比べたら
「25倍」の太さのパイプを用意しないと、
あれだけキレイには、再現することができない。
糸井 個人じゃムリだ。
原 そう、そこなんですよ。

専用回線を引かなきゃならないから、
月々、何十万円ものお金を払わなきゃいけない。

これじゃ、家庭に普及させるのは
まずムリでしょう。
糸井 でも「XVD」なら‥‥「800K」で見れる?
原 つまり、月々何千円という
ふつうの家庭用インターネットプランで
これだけの映像が見れるわけです。

XVDの映像のキャプチャ(クリックで拡大できます)
糸井 ‥‥すごい技術ですね。
原 たとえば、お互いに離れた場所どうしに
200インチぐらいのディスプレイを置いて、
そのあいだを「XVD」でつないだら?

ほとんど「通信料タダ」で
空間と空間をくっつけられちゃうんです。
糸井 つまり、あたかも「隣にいる」かのように
話しあったり、会議したりできる、と。
原 そのとおりです。
糸井 ‥‥窓、ですね。これは。
原 そうです、窓です。
糸井 タイムラグもないわけだし。
原 やってみて気づいたんですけど、
これだけキレイに映ると、
テレビ電話でも、会議が白熱するんですよね。

一生懸命、話しかけちゃうんですよ(笑)。
糸井 そうでしょう、このクオリティなら。
原 そして、わたしたちは、
この技術を使おうと思っているんですよ。

ほら、あの‥‥このあいだお話した
バンクラデシュの「遠隔教育・遠隔医療」に。
糸井 おお! そこに繋がるんだぁ!
<続きます!>

2008-07-31-THU


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN