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ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.21 ハワイの伝説
Night Marchers ナイト・マーチャーズPart1


今回から、ハワイに伝わるさまざまな伝説について
お話ししようと思います。
ハワイには多くの伝説が残っています。
第1回目にご紹介したいのは、
その中でも、多くの人々が信じてるという点で、
とても特別なお話です。

その伝説とは“Night Marchers”ナイト・マーチャーズ、
ハワイ語ではHuaka'i Po(フアカイ ポ)と
呼ばれているものです。
「雲がないのに、なぜか星もまったく見えないような夜、
 ハワイ人の戦士たちが戦場を目指して行進する」
というのが、ナイト・マーチャーズ。
その昔、戦いに敗れて死んでいった戦士たちが
いまも勝利を夢見て何度でも
行進を繰り返しているらしいのです。

ナイト・マーチャーズが通ると言われる場所に
決して近づかないというのは
ハワイに住む人々の常識です。
もし、行進する彼らに見つかったなら、
魂を取られてしまう、
つまり殺されてしまうと信じられているからです。
彼らが近づいてくるときには、
必ずパフというハワイの太鼓の音が響き、
彼らが手にするたいまつの火が見えるといいます。
しかも、行進する彼らの足は
地面に触れていない、ともいわれています。

ナイト・マーチャーズの太鼓の音を聞いたり
たいまつの明かりを見たという人は大勢います。
私自身はそれを目撃したことはありませんが、
彼らは存在すると信じています。
私だけに限らず、ハワイに住む人のほとんどは
この伝説を信じているし、
たとえ信じてないという人でも、
ナイト・マーチャーズが通るような場所に
あえて行くようなことはしません。

ナイト・マーチャーズが現れるといわれている場所で
理由の解明できないような死亡事故が
起こることも度々あります。
そして、発見された死体の顔はいつも恐怖の色を
浮かべているという話です。
戦士たちの行進が通るところは
通常、山から海へと向かう通り道です。
それらは、昔からハワイ人が聖なる地として
守ってきたところと重なっています。
ハワイに住む人なら誰でも、
ハワイの聖地に敬意を抱いています。
みんな自然の中でキャンプを楽しんだりしますが
絶対に聖地に踏み込んで荒らしたりはしません。
しかし、私が育ったマウイでも
多くの観光客がキャンプやハイキングをしに
平気で聖地に入っていくのを目にしました。
子供の頃、父が頭を横に振りながら
こう言ったのを覚えています。
「まったく白人たちがやることは信じられないよ。
 やつらはあんなところに出かけていって
 どんな恐ろしい目に合うか、全然分かってないんだ」

でも、ナイト・マーチャーズに出会ったからといって
必ず死んでしまうとは限りません。
彼らに遭遇しても助かる方法はあるのです。
もし、幸運にもその戦士たちのなかに
先祖がいたら助けてもらえます。
先祖がいない場合は、とにかく必死で走って逃げます。
逃げる時間がないときは腹ばいになり
顔を地面にくっつけるのが最良の策。
うまくいけば魂を取られずにすむかもしれません。
運よく逃げ帰った人たちの中には
「腰を抜かして動けなくなり、
 腹ばいになったら大勢の男たちが
 背中の上を踏み越えていった」
と言っていた人もいました。



ハワイに伝わる伝説の多くは
その歴史に深く関わっています。
ハワイに暮らす人が、
ナイト・マーチャーズが通る場所に行かないというのは
ただ単に恐いからとか、
危険だからというだけではありません。
その土地に対する畏怖と敬意の念があるからなのです。
確かに伝説とは、普通は歴史や自然をもとに
つくりあげられたフィクションがほとんどです。
でも、こんな現代でも目撃者がいる
ナイト・マーチャーズは、
通常の伝説と比べると
かなり異質だといえるかもしれません。

実は、私の従兄もそんな体験をしたひとりです。
彼はマウイのハナに友だちとキャンプに出かけました。
幸運だったのは、私たちの先祖が
昔ハナに住んでいたということ。
彼はそのとき、私の父が止めるのも聞かず出かけ、
そして、別人かと思うほど真っ青な顔をして
ほとんど放心状態で帰ってきたのでした……。

<To be continued>

2000-08-02-WED
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