あのひとの本棚。
     
第28回 ATSUSHIさんの本棚。
   
  テーマ 「いのちの力をもらった5冊」  
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最初はストリートダンサーからはじめて、
やがてDragon Ashのメンバーになって‥‥。
4、5年くらい前からなんですけど、
すごく自分で問いただすようになったんです、
「踊ることで何を表現してるんだろう?」と。
それで、最近になって思い至ったのは、
「やっぱり自分は生命力を表現しているのかもしれない」
ということでした。大げさな言い方ですけど、
いのちの素晴らしさを教えてくれた5冊を紹介します。
   
 
 

『ジュルのしっぽ』
山崎花奈

 

『どうぶつたちへのレクイエム』
児玉小枝

 

『Ashes and Snow』
Gregory Colbert

 

『インベストメントハードラー』
為末大

 

『ピナ・バウシュ 怖がらずに踊ってごらん』
ヨッヘン
シュミット

 
           
 
   
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ピナ・バウシュは、ドイツのダンサーで演出家です。
舞踏団を持っていて、その長(おさ)というか。
そういう存在ですね。
ストリートダンスをやっていたころは
まったく知らなかったんですけど、
「日本人としてどう表現していけばいいんだろう」
ということを考えながら踊っていた時期があって、
そんなときにピナ・バウシュの
公演を観に行かせてもらう機会があったんです。
「すごいから観ておいたほうがいい」って言われて。
そこで、生まれて初めて、
人の踊りをみて泣きました。



ほんとうにすごいんです。
好きなダンサーとか正直あんまりいないんですけど、
この人は別格ですね。
尊敬してます。
‥‥いや、尊敬したらもう超えられないので、
尊敬とは違うかもしれない。
なんだろう‥‥。
ああ、でも、もちろん超えようとなんて思ってないし、
別世界だと思ってるんですけど‥‥。
とにかく、この人の踊りを観て自分は泣いた、と。
それがすべてなんでしょうね。
ボロッボロ涙が出てきて、
なんだこの感覚は! って(笑)。
説明しづらいんですけど、
ものすごく簡単に言えば、つまりは心が動かされたんです。
心と心で対話をしてるような状態になって、
終わった後に、ポロッポロ涙が出てきて止まらなくて、
席を立てなくて‥‥。
日本でもたまに公演をやるので、
機会があったら観てほしいですね。
観てもらえば、わかると思います。

それで、この本はけっこう昔の本で、
ピナ・バウシュ本人が書いた本でもないんです。
たぶんピナ・バウシュをずっと追ってる人が
書いた一冊なんですね。
だから専門的ではあるんですよ。
ダンスをまったく知らない人が読んだら、
これ、どこまで理解できるだろう、
みたいな本ではあるんだけど‥‥
やっぱり表現する人には読んでもらいたいです。
何でもいいんです、
音楽やってる人でも、絵でも、文章でも、何でも。
この本から伝わってくる「生命力」で、
得るものは大きいと思いますよ。



最後の一冊は、
自分の仕事にいちばん近い分野の本になりました。
「いのちの力をもらった5冊」でしたが、
これは「ことばを超えた5冊」と言えるかもしれません。
ことばというものがとても大切であることを
もちろん理解しながらも、
「ことばがないときに伝わるすごさがある」ことを
知ってもらいたいと思っています。
動物も人間も、肉体。
同じように、生命の力があふれているんだと思います。
ありがとうございました。

   
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為末くんはまず、非常に仲のいい友だちなんですよ。
以前はダンスをちょっと教えるようなこともあって‥‥
でもあれは教えたってレベルなのかな(笑)、
まあ、とにかく今は普通に友だちで、
教えるなんてことはなくなりました。

同い年なんですけど、
またすごい違う考え方を彼は持っていて、
自分にない部分をすごくみせてくれるので、
話していて面白いですね。
彼はアスリートであるわけで、ハードルを飛んでいる。
で、そのアスリートとしての
生命力の素晴らしさみたいなのは、
普段の彼にもすごく感じるし。
心動かされたことが何度もありました。

この本そのものは、彼の陸上での経験というか、
考えてきたことであったり、
あとは彼、何て言うんですか「株」をやっているので、
お金に関する本でもあるんです。
帯がすごいでしょ?
「30万円が2000万円に増えた話」。
でも、彼いわく、お金に興味があったわけじゃなくて、
投資して増える、そのロジックに興味があるんだそうです。
自分は投資とか、まったくわからないんですけど、
この本を読んで「よし、おれも!」という人は
けっこういると思いますよ。
やっぱり説得力は感じましたから。
いや、僕は「株」やらないですけどね(笑)。



僕としては為末くんっていう人の頭の中を
よく見られて、それがおもしろかったです。
ごく普通に読んでておもしろい。
たぶん、あれですね、
スポーツやってた人が読むと、
かなりおもしろいかもしれないですね。
自分もダンサーという肉体でやっていく仕事なので、
アスリートに近いものがあると思うんですよ。
だから読んでいて、
「それはわかる」がけっこうあるんです。

ほんとうに、まず本としておもしろいです。
で、体を動かすのが好きな人は、
さらにおもしろく感じると思うので、
おすすめしたいですね。
「株」に興味がなくても。

   
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※現在入手困難な
 一冊となっております
 

グレゴリー・コルベールという
写真家であり映像作家の作品集です。
これ、ずいぶん話題になったんで、
写真を見たことがある人、多いんじゃないでしょうか。
カナダ出身でドキュメンタリ映画をやってたんですが、
写真のほうへ転向したアーティストなんです。

これは、すごいですよね(笑)。
笑ってしまうくらいすごいですよ。
東京でもエキシビジョンをやってるんですが、
そのころは知らなくて、行ってないんですよ。
あとになって友だちが
「観たほうがいい、たぶんすげぇ好きだよ」
ってDVDを貸してくれたんです。
で、観て。
ああ、やばいな、これは、と(笑)。
そのあとで写真集をみたんですけど、
やっぱり、すごい、いいんですよ。
動物と人間の共存の仕方というか、ね?
言葉にできない世界観が広がっている。



すさまじすぎますよね。
初めて見た人はかならず言うんですよ。
「これ、本当?」「CGなんでしょ?」
まずはこれを言いますよね。
でも、実際に撮ってるんですよ。
DVDでは映像がありますから、本当なんです。
グレゴリー・コルベールという人は、
10年間ほかの作品を発表しないで、
これのための旅行と撮影を続けていたそうです。
すさまじいですよ。

セピア色のカラーも独特で、
なんかこう、動物と無言で会話をしてる感じが
すっごく伝わってきますよね。
その共存の仕方っていうか、
もう本当、生命力なんです。
静の中にある動というか、
静けさとその真反対にあるすごい生命力が
無言で伝わってくる。
これってちょっと踊りに通じるところがあるなあ、と。
自分がやっぱりダンサーなんで、
そういう概念でみてしまうところは、非常にあるのですが。

こういうアートの打ち出しかたっていうのは、
すごく好きですね。
だから、「パワー・オブ・ライフ」の写真展は
どうやってこれに対抗しようかと思って。
まあでも、これとは違った路線でやるので、
対抗するとか、そういうことではないですよね(笑)。



未体験の人にはとにかく見てもらいたいですね。
この写真集はなかなかのお値段なんですけど、
きっとかなり、びっくりすると思いますよ。

※グレゴリー・コルベール、
 『Ashes and Snow』の世界がこちらで体験できます。
 ブックストアも、こちらから。

   
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ちょっと正直、生々しい本ではあるんですけれど‥‥。
動物収容施設、
そこで命を絶たれていく動物たちの本なんです。

この本のことは、テレビで知りました。
たまたま朝方にテレビを見てたらニュースかなんかで、
「いま、こんな写真展をやっています」と。
それが、この本の写真展だったんです。
飼い主のいない犬や猫がガス処分される、
その寸前の写真が映されて‥‥。
だからやっぱり、この本に向き合うのは大変で。
最初は開くのが怖かったですね、正直。
でも、読ませてもらって、
頭にくる部分もあるし、
ほんとうに、こう、どうにかしなきゃというか‥‥。

動物収容施設に来た犬や猫は、
2日くらいは待ってもらえるらしいんです。
飼い主があらわれる場合もあるから。
でも2日間待ってあらわれなかったら、
3日目にはガス処分されてしまう‥‥。



裏切られたわけですからね、
そこにいる動物たちはもっと凶暴だと思っていました。
人間に対して敵意むき出しで。
まあ、凶暴なのも3割くらいはいるんです。
でも、7割は、すごく人になついているんですよ。
‥‥やっぱりこう、なんか、あれですよね、
すごくその犬の気持ちが・・・・
いや、わかんないですよ、そんな本当の気持ちは、
でも、すくなくても、犬は人間のことが好きなんだなあと。

難しいですよね、動物保護については。
人によってベクトルも違うし、
考え方も十人十色じゃないですか。
例えば、豚を食べるだとか、牛を食べるだとか、
そういうことはどうなんだって言い出したら
本当にきりがないことで、
自分の中でもすごくグチャグチャしてたんですよ。
でも、現時点で、なんとなく自分の答えは出てるんです。
それは、
「人間が責任を持ったものはケツを持つべき」
ということ。
大昔に人間が「犬と暮らすよ」って決めたんだったら、
それについては人間が最後までケツを持つべきだ、
みたいな考えに、今は至っていますね。
まあ、それでもこのことについてはたぶん
一生グチャグチャ考え続けるんじゃないかと思います。

‥‥なんだか、すみません、
こういうナイーブな問題を感情的に話してしまって。
まとめるのが難しいですよね(笑)。



ぼくとしては、そうですね、
まあ、「犬の免許」じゃないですけれど、
犬と暮らしたいと思った人は、
まずこの本を読んでからにしてくれ、と。
そういう気持ちは、ありますよね。

   
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アニマルシェルターって知ってますか?
飼い主のいない犬や猫を引き取って里親を探したり、
一生その動物を飼育をする施設のことです。
僕もその名前くらいは聞いていたんですが、
くわしいことはこの本をもらったときに知りました。
ある洋服屋さんのお店の人と知り合いになって、
その方からいただいた本なんですよ。
もう、洋服屋さんの、その場でお店の人と
動物に関する熱い議論になって、その勢いで
千葉のシェルターまでいくことになったんです。
そして「パワー・オブ・ライフ」のプロジェクトに
つながっていったわけで。
※「パワー・オブ・ライフ」については
 「ATSUSHIさんの近況」をぜひお読みください。



本の内容は、
猫を飼ったことがなかった人が猫を拾ってしまい、
育てていく日記というか‥‥
そう、ブログを書籍化したものなんです。
なんだかこう、ほんとに、
ササーッと読めちゃったんですけど、
最後にはすごく暖かい気持ちが残っていて。
日常というか、親近感があるし。
ちょっとおふざけな写真もあったり。
まあ、正直、著者の親バカな一面も見られて(笑)。
素直に心が温かくなった感じでした。

拾われたときに、この猫は病気なんですよ。
猫のエイズを持ってたみたいで。
拾われてすぐのヨレヨレの写真が載ってるんです。
ところが、ね、それがどんどん、
どんどん愛情で活き活きしていくんです。
写真でそれがはっきりわかる。
目の輝きが全然変わってくる。
‥‥なんかあれですよね、
やっぱり同じ命だと思います。
人間も動物も変わらないんですよ。
こういう感じってあるじゃないですか、人間も。
元気ないときはやっぱりそういう目をしてるし、
元気なときはすごく輝いてる目をしてるし。

今回のプロジェクトのきっかけになった1冊です。
だからジュルにはいつかお会いして、
土下座したいと思っています。
いや、本当に。
ジュルには、めちゃめちゃ感謝してるんです。

※ブログ「ジュルのしっぽ−猫日記−」はこちらから。

 

様々なジャンルの要素を取り入れた音楽を構築する、
Dragon Ash(ドラゴン・アッシュ)
ATSUSHIさんは、そのDragon Ashに2003年から加入し、
ダンサーと振り付けを担当されています。

そんなATSUSHIさんが発起人となって
進められているプロジェクト「POWER of LIFE」が、
ゴールデンウィークにチャリティー写真展を開催します。

『パワー・オブ・ライフ写真展』

※写真展の詳細は画像をクリック!

開催期間/2009年4月23日(木)〜5月10日(日)
開場時間/12:00〜20:00
会場/トーキョー ヒップスターズ クラブ
   東京都渋谷区神宮前6-16-23 THCビル
入場料/500円以上での任意

『パワー・オブ・ライフ』とは、
いったいどんなプロジェクトなんでしょう?
開催される写真展の内容も含めて、
ATSUSHIさんにお話をうかがいました。

「パワー・オブ・ライフっていうのは、
 要するに、多くの人に生命力の素晴らしさを伝えて、
 "いのちの力"を考えるきっかけをつくっていこう、
 というプロジェクトです。
 その第一弾の企画として、
 写真展という方法を選びました。
 アスリートであったり、ミュージシャンであったり、
 美しい肉体の写真を展示する写真展です。
 ほとんどが、顔の写っていない部位の写真なんです。
 走ってる足の筋肉の素晴らしさとか。
 例えばこの写真(上の画像)、
 これは為末大選手の背中です。
 こういう作品に、犬や猫など動物の写真をからめて
 写真展を構成しようと思っています。
 それで、できれば写真集まで完成させて、
 売り上げをシェルターに提供していこうという、
 そんなプロジェクトです」


 
犬や猫などの動物の写真も展示する‥‥。
売り上げはシェルターに‥‥。シェルター‥‥?
そのあたりのことを、もうすこし詳しく教えてください。

「もともと、自分も犬を飼ってまして‥‥。
 ツアーのとき以外はいっしょにいるので、
 きょうもつれてきたんですが‥‥」

「茶色がチェアで、もう一匹がタップという名前です。
 こいつらとはペットショップで出会いました。
 当時はなんにも考えてなくて、
 ペットショップでほしくなって買ったんですね。
 それから1年後くらいだったかな、
 たまたまネットで保健所のページを見たんですよ。
 そしたら、保健所には捨て犬とかが運ばれてきて‥‥
 要は処分されるわけじゃないですか。
 でも引き取ることができるって聞いたんで、
 電話してみたんです。
 そしたら、すごいいろいろ質問されて。
 こっちも真剣に答えたんです、ぜんぶ嘘をつかずに。
 そしたら最後に「無理です」と。
 それがずーっと心に引っ掛かってたんです。
 なんだよ、こっちは引き取りたいのに、みたいな。
 そのあと、ある洋服屋さんで
 お店の人からアニマルシェルターの存在を聞きました。
 保健所から犬や猫を引き取って里親を探したり、
 一生その動物を飼育をする施設のことです。
 もう、とにかく実際に、
 シェルターに行いってみないことには始まらない!
 そう思ってアポを取って、ひとりで行って、
 話を聞かせてもらいました。
 それからです。
 ”じゃあ、自分は何をしよう”という気持ちになったのは。
 自分がダンサーだというのもあると思うんですけど、
 声を大きくして叫ぶ以外の方法で、
 アートで伝えることを思いつきました。
 知り合いのフォトグラファー、アスリート、
 ミュージシャンたちに声をかけて、
 写真を撮って、写真展をやって、写真集をつくって、
 売り上げをシェルターに提供しようと。
 それが、もうすぐできる状態までになりました。
 でも、早くやりたいんですが、ちょっと、
 いまはまだ具体的に決まっていなくて‥‥。

じつは上のお話は、
2008年の9月に取材をしたときのものです。
それから約半年が経って、ATSUSHIさんから
「写真展の日程が決まりました」
といううれしいお知らせがほぼ日に届きました。

最後に、
本番に先がけて開かれた「プレ写真展」での、
ATSUSHIさんからのメッセージをどうぞ!

「時間がかかちゃって‥‥。
 でも、前にお話したことが
 イメージ通りにできることになりました。
 賛同者には一流のアスリートと
 ミュージシャン、フォトグラファーが集まってくれて、
 50点ほどの写真が展示されます。
 人間の素晴らしい肉体の中に、
 シェルターの犬の写真が数点混じって。
 ‥‥その感じをことばにするのは難しいんですが、
 あえていえば「本能」でしょうか。
 そういうもので作品がつながって見えると思います。
 同じなんです、アスリートも、犬も。
 ゴールデンウィーク、
 何かを感じとりに来てください」


「POWER of LIFE」公式サイトはこちら

ATSUSHIさんの公式サイトはこちらからどうぞ。

 

2009-04-24-FRI

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