糸井 |
ネコのことだけは、
小説と関係なくても、大丈夫?
ネコの存在が刺激を与える、
ということも、当然、あるんでしょうね。 |
保坂 |
わからない。 |
糸井 |
そこは、自分でもわかんないんですか。
書いてる時は、人間は勘弁してくれ、なんでしょ? |
保坂 |
それは、そうですね。
だんだん、書いてると、
睡眠時間が増えてきちゃってね。
ふだんも6時間以上寝てるんですけど、
しまいには9時間寝てましたから。 |
糸井 |
脳を、そうとう使ってるっていうことだよね。
……瑣末なことだけど、
その時期、食事とかはどうしてた? |
保坂 |
そういうのは、ぜんぶふつうですよ。
晩メシ、作っていたし。
お酒は飲まなかったけど。
忘年会シーズンだったけど、
さいわいなことに、
最近、あまり、友達もいなくて。
親しい友達も、忘年会を
セッティングするのがめんどくさいとか。
だから、年末年始は、酒、飲まなかった。
ただ、その、気もそぞろな時期に、
『言葉の外へ』っていうエッセイ集の
ゲラが、出てきちゃったの。 |
糸井 |
イヤだねぇ。
あのややこしい本を直すのとか、
その小説のその期間には、イヤだなぁ。 |
保坂 |
うっかりその時期って言っちゃったかで、
ぼくも、あれは……。 |
糸井 |
人ごとながら、すっごくヤだったもん、今。
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保坂 |
あの時期じゃなかったら、
『言葉の外へ』は、もっと
ちゃんとした本になったと思うんです。 |
糸井 |
いちおう、見たんだ? |
保坂 |
しょうがないので、見ましたけどね。
細かいところは、直さなかったんですけど、
前に書いたエッセイのどれを載せようかという
取捨選択だから、これがめんどくさかった。
まぁ、2〜3日、しょうがないかなっていって、
やってましたけど。 |
糸井 |
その期間は、予定を空けて? |
保坂 |
空けはしなかったですね。 |
糸井 |
小説は書いていながら? |
保坂 |
ええ。
いちばん幸いだったのは、
冬だったから、野球がなかったことです。 |
糸井 |
使える時間って、
実は、そんなにたくさんないからねぇ。 |
保坂 |
ないですね。 |
糸井 |
一生って、そう考えると短いね。
ほんとに「使ってる!」っていう
実感のある時間って、あまりないよね。
すごいなぁ、今回の小説を書く時の話は。 |
保坂 |
歯茎から血がでるしなぁ。 |
糸井 |
(笑)そんなこたぁ、どうでもいい。
歯の悪くない人は、出ないですから……。
たまに、そうとう
身勝手なたとえをする人だからなぁ。
保坂さん、ときどきそういう、
自分しか認めないことを言うね。 |
保坂 |
(笑) |
糸井 |
小説を書くことって、なんか、
おもしろそうなことには、見えてなかったんです。
保坂さんって、小説書きの中でも別だから、
小説を書くということについて、
何を話すのかを、知りたいなぁとは
思っていまして……。
いろんな小説家を見ていると、
「ほんとうに書きたいのかな?」
っていう気持ちが生まれたり、
「もしも、いっぱい売りたいのが
目的だったら、売る方法は他にある気がする」
とか、ぼくはいろいろ距離を持っていたんです。
だけど、今の話は、
まるで、ルールは知らないけど
サッカー選手がキレイな試合をしたのを見たような、
ものすごく、よかったなぁ。シビれました。
職人話なんかにも、近いね。 |
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(つづきます!)
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