糸井 |
保坂さんが、
詩に行かないのはどうしてなんですか? |
保坂 |
やっぱり、韻文と散文の違いなんです。 |
糸井 |
体質ですか? |
保坂 |
体質なんでしょうね。
小説が、ぼくにとっては、いちばん、
いろいろ入れられる気がするっていうのと、
詩は、かたちの上でのしばりが、
多すぎるような気がするんです。 |
糸井 |
谷川俊太郎さんと話すと、
逆に、散文を書くことについて
「とんでもない!」って言うんですよ。
散文を長く書くなんて、信じられないと。
保坂さんの韻文嫌いと、
谷川さんの散文嫌いは、
根っこのところではおんなじだと思うんです。
「したくないことを
しなきゃいけない時間がイヤ」と。
ぼくなんかは、谷川さんの気持ちが
とてもよくわかるんだけど、
逆に、村上春樹さんは、昔、
「いや、いっぱい書くのはラクだよ」
って言ってたんですよね。
やっぱり、それは、おたがい、
「それが好きな人」が書けばいいんだって、
ぼくは感じたんです。
保坂さんも、苦しさも含めて、
自分に合った方法を選んでるんだと思う。 |
保坂 |
ある意味ではそうですね。
ぼく、もともと、詩に親しみがないですからね。
文学少年じゃないですから。
ましてや、短歌なんて、詠んだこともない。
俳句は、作ったことを覚えてるんです。
自分で詠んだ俳句というのが、中学2年ぐらいの、
「名月の 月の光で 雪景色」
という……。 |
糸井 |
もう、ふざけてるね。 |
保坂 |
(笑)ぼくは自分では、
「なんてイイ句なんだ!」
って思ったんですけどねぇ。
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糸井 |
(笑) |
保坂 |
月が煌々と夜中に出ていると、
雪景色に見えるんですよ。 |
糸井 |
もう、今の説明はすでに小説ですね(笑)。 |
保坂 |
(笑) |
糸井 |
韻文のよさを無視してますよね。 |
保坂 |
(笑) |
糸井 |
韻文が飛躍しただけですよね。
……体質という言葉でしか言えないね。 |
保坂 |
うん。
あと1個はね。大学1年の時に、
「ふるさとをもとめてみらいをさまよう」 |
糸井 |
(笑)エッセイだよ。
それ、エッセイ。
ほんとだ……向いてない(笑)。 |
保坂 |
作ったのは、その2つだけなんですよ。 |
糸井 |
しかも、覚えてるってことは、
自分でも「なかなかいいな」って……? |
保坂 |
うん。(笑) |
糸井 |
(笑)不思議だなぁ、
その、俳句のセンスのなさは……。
サッカー選手と水泳選手みたいなものかな。
ただ、散文書く時も、
ここの文字を、ちょっと変えても
自分が気づく、みたいな文章かいてますよね? |
保坂 |
いや、そうでもないですよ。
そこまでは、デリケートじゃない。
テンポ感が、
「あれ、おかしいな?」
って思うことはありますけどね。 |
糸井 |
でも、その同じ人の、
俳句と称するものは……。
アナーキーでふざけたもので。 |
保坂 |
(笑)「称する」って。 |
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(つづきます!)
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