藤原 |
飯島さん、このお茶漬けの
食べ方を教えてください。 |
飯島 |
このお茶をかけます。
まずはそれでおめしあがりください。 |
藤原 |
お茶と、ごはんだけ? |
飯島 |
はい。そしてお好みで漬物や、
焼きたらこ、
海苔をのせて食べてください。 |
藤原 |
はい、いただきます。
‥‥本当だ、お茶なんだけれど、
おだしがかすかに香ります。 |
飯島 |
かすかなおだしと、
煎ったお茶がちょっと。 |
藤原 |
すばらしい!
(満面の笑み) |
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糸井 |
うまい! |
藤原 |
(写真を撮られながら)
ちょっと恥ずかしいもんですね。
食べてるところを撮られるって。
‥‥食事とセックスを逆にした
藤子不二雄のマンガがあったんですけどね。
みんなで夜こっそりと「いただきます」。
はずかしそうに。 |
飯島 |
お茶の味、しますか。 |
藤原 |
します、します。 |
糸井 |
うまい! |
飯島 |
おだしの味も。 |
糸井 |
うみゃーい!
先生、ぼくはね、このマンションに
もうたぶん10回ぐらい通ってるんですよ。
ここ、普通のマンションじゃないですか。
あのあたりでタクシーで降りて歩く間に、
なんでこの人はあのマンションに
入っていったんだろうって、
もし他人が見たら
ちょっと変なこと疑うかなって(笑)。 |
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飯島 |
しかも顔がちょっとウキウキして。 |
糸井 |
手ぶらでにやにやしてね。
しかも、ご機嫌で帰るわけですよ。
なーんか知らないけど、何時間かいて。
その俺って何? って思いますよね。 |
藤原 |
至福のひとときを求めて、ひっそりと。 |
糸井 |
(食べながら)これね、
みんなが想像してるのと違うと思う。 |
── |
違いますか。どんな味ですか。 |
飯島 |
皆さんもどうぞ。 |
一同 |
わぁ! |
糸井 |
このお茶漬け、大きいんです。
お茶漬けって収束に向かう食べ物じゃないですか。
ところが、広がるんですよ。 |
藤原 |
お茶とおだしのね、これがもう、すごいですよ。 |
飯島 |
よかったです。
お茶を軽く煎って香りを出すというのは、
渋谷の東横に以前あったお茶屋さんがヒントです。
通るたびにお茶を煎っていたんです。 |
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糸井 |
はいはい、知ってる知ってる。 |
飯島 |
あんな香りにしたくて、
ちょっと軽く30秒ぐらい
お鍋で煎るんですよ。 |
糸井 |
焙じるってやつですね。 |
飯島 |
焙じる。
そこに熱いおだしを入れて
蒸らして漉す。 |
糸井 |
あと今日の飯島さん、
ご飯、いつもと同じ? |
飯島 |
ちょっと固めに炊きました。
最近柔らかくなっちゃって。 |
糸井 |
そう!
ご飯がちょうどね、もう一つ、
新しいディメンションに入っていった(笑)。 |
飯島 |
きょうはひとめぼれにしています。 |
糸井 |
変えたんですか。
いつもの奈美じゃないんだ。俺んちの(笑)。 |
藤原 |
おお、海原雄山って感じだ。 |
糸井 |
「お前ちょっと化粧変えた?」みたいな。
素敵だよと。 |
飯島 |
いつも気づいてくれないのにって。 |
藤原 |
(幸せそうに)
なんか本当にいい世界になってきたね。 |
飯島 |
よかったです。 |
藤原 |
ほんとうに、このお茶漬け、すごいですね。 |
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飯島 |
(深く)‥‥ああ、よかった。 |
糸井 |
藤原さんがもう1回、
これを食べる機会がもしあったとしたら、
おそらく「この間と何か違えた?」
ということになるんです。
「わかります?」って言うんですよ、
飯島さんって、これの連続なんですよ。 |
飯島 |
密かに。言わないけど変えちゃった、みたいな。 |
藤原 |
既に映画的な空間に入り込んでいる! |
糸井 |
こんなにクリエイティブであり続けるって、
大変なことですよ。
きのうはうちね、飯島レシピの
サバの味噌煮にしたんですよ。
そうしたらかみさんが、
やろうって言ったのは自分なのに
「こりゃあ大変だ」って言ってた。
つまり、簡単にできちゃうところも
全然手を抜いてないから、
じつはサバの味噌煮が
今まで作ったので一番手がかかってるって。 |
藤原 |
サバの味噌煮が? |
飯島 |
霜降りにするっていうことですか? |
糸井 |
そう。何度もさましたり、
味をつけて放っておいたり。
今までいろいろ作った中で、
サバの味噌煮が思ったより大変だったって。 |
藤原 |
意外。 |
飯島 |
そろそろサバも脂がのってきますから
ぜひやってみてください。 |
糸井 |
味がよく絡むのと、
下味が上手についてるもんですから、
その都度のどの場所も全部おいしいんですよ。
いい感じで。 |
藤原 |
告白すると、サバの味噌煮って
みんなでいっぺんに食べる食事に出てきて、
残すのがいやだから我慢して
骨をよけながら食べながら
涙と一緒に食べるようなところがございまして。 |
糸井 |
飯島レシピは、皮まで食べます。
皮とか血合いのところとか、
その辺まで食べられます。
難しくはないけど手間がかかった。 |
── |
飯島さんがここで作ってると、
なんでもすごい簡単そうに見えるんですよね。 |
藤原 |
いい表情ですね。
たとえは悪いけど、
「ハスラー」という映画に出てくる
ジャッキー・グリーソンっていう玉突きの名人。
あの目の凝らし方に目がすごく似てる。
ムダがなくて、
さらさらと当たり前みたいに、水のように。 |
飯島 |
順番がおかしくなりましたが、
これもどうぞ。
「カンナさん大成功です!」
という映画に出てくるヒラメの刺身です。
昆布塩だれなんです。
ちょっと昆布〆にするのが大変な時に、
塩昆布を使った昆布塩だれで。 |
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糸井 |
昔、切り昆布でお刺身を食べさせるのを
発明した人がいて。
塩昆布を細かく切って
鯛のお刺身をそれで食べさせるんです。
それがもう一般化しちゃったけど、
そのさらに向こう側ですね。 |
飯島 |
すだちもどうぞ。 |
糸井 |
焼き魚にちょっとこれ付けて食ってみたいな。 |
藤原 |
いやぁ、幸せだ。
鳩山政権を占うっていう話を
しなくていいだけでも、
今日は幸せなんですが(笑)。
ふだんは、それでお給料いただいてるんですよ。 |
糸井 |
そうかそうか。 |
飯島 |
これにちょっと、
オリーブオイルとかを混ぜてドレッシングとして、
水菜とかお刺身サラダにしても。 |
藤原 |
合いますよね。
(つづきます) |