『言いまつがい』装丁伝説!
あのへんな本をつくった人たち。
祖父江慎×しりあがり寿×糸井重里

第1回 だいたい四角い本。

── おかげさまですごい本ができ上がりまして。
ありがとうございました。
祖父江 ありがとうございまーす。
おもしろかったです。
── できあがってみて、いかがですか?
祖父江 ステキです(笑)。
「こんな愉快な本をつくってよかったの?」
っていう感じですね。いろんな意味で、
役に立たない感じもあって、いいですよね。
糸井 うーん(笑)。
祖父江 うーん(笑)。
── 今回はほんとうに
祖父江さんにお任せしてて、
わりと自由に
つくっていただいたんですけど。
そもそも、本をデザインするにあたって、
「やりたいんだけどできないんだよなー」
っていうのが、ふだんから
祖父江さんのなかにたくさんあるんですか。
祖父江 ええ、そればっかりですよね。
でも、昔できなかったことを、
たまたま違う本でやっちゃあダメですよね。
(話しながら身体を前後に揺らせる)
‥‥なんか揺れてると落ち着くんですよ。
糸井 どうぞ、揺れてください(笑)。
ま、船の上の人間たちということで。
(と言いつつ身体を上下に揺らせる)
‥‥違うリズムで揺れちゃダメですね。
祖父江 ちょっとなんか、揺れにくくなりますね。
あー、でも、目の前の人が
違う揺れかたしてると、なんか‥‥。
糸井 嫌ですか?
祖父江 揺れにくいですね。うん。
糸井 僕は電車の揺れを表現してます。
しりあがり みんなで揺れたら、どうなんだろうな?
祖父江 ん?
しりあがり とりあえずみんなで揺れてみる?
糸井 その違いを感じてみる?
祖父江 えーーーっと。
なにか話してたんでしたっけ?
そっか、続き、だ。
── 続きです(笑)。
祖父江 ‥‥‥‥なんの続きだっけ?
── ええと(笑)、ずばり、今回のデザインは、
どのへんからできていったんでしょう。
祖父江 じつは昔、
「だいたい四角い本」っていうのが
つくりたかったんですよ。
角が直角じゃなくて、
子どもがハサミで切ったような
ゆがんだ四角い本。
糸井 それがいちばんの大っきい特徴ですか?
祖父江 そうですとも。
今回、「だいたい四角い」っていうのが
通ったのがとってもうれしかった本です。
しりあがり たいへんでしたね(笑)。
祖父江 たまたま、違う本でやっちゃいました。
糸井 「だいたい四角い」っていう言葉は、
昔から言い続けてたわけですか?
祖父江 言い続けてたほどではないんですが‥‥。
あの、吉田戦車さんのマンガの本で、
「だいたい四角い本」を、シリーズでね、
やろうと思ったことがあったんです。
8冊ぐらいのシリーズ本で、
シリーズでそろえるとね、
ちゃんとデコボコしてる!! っていう。
しりあがり え? 全部違うの? それぞれ?
祖父江 うん。1冊ずつがびみょうにデコボコ!!
うっとりでしょう?
しりあがり へぇ〜。
祖父江 それがもうねぇ、意外にね、製本所だとか、
簡単に通ったの、OKだったの。
そんなにコストもかからずに、
大丈夫だったんですよ。
やったねー! って思って。
でも、最後の最後、
「取り次ぎ(本の問屋さん)」のところで、
ちゃんとした四角じゃない本は、
梱包のときに困ると。
しりあがり なるほど。うん。
祖父江 だから、ちょっと取り次ぎへの支払いを、
高くしてもらえないと、
それを扱うのはちょっとね、って。
糸井 扱いたくないなぁ、と。
祖父江 そうそう。
隙間に詰め物をする手間がいるとかね、
箱のなかでゴソゴソして本が傷むとか。
── 要するに、お金がもっとかかりますと。
祖父江 そうそう。
追加料金取るよ、って言われたそうで。
「そんなのあり?」と思ってね、
戦車さんにね、同意を求めようとしたのね。
「それくらいなんだ!」っていう感じで、
著者が言えば強いだろう、
と思ったんですよ〜。
しりあがり 強くない、強くない(笑)。
── 著者は強くないんですか?
しりあがり ええ(笑)。
── そうなんですか。
戦車さんのときはどうだったんです?
祖父江 うん。そしたらね、その、
「だいたい四角いシリーズ」
っていうデザインのことは、
戦車さん本人もおもしろいし、
見てみたいとは思うんだけど、
「オレの本ではやってほしくない」って。
一同 うははははははははは!
しりあがり 戦車さん、おもしろいなー。
糸井 すごいオチが(笑)。
── 衝撃的な話ですね(笑)。
糸井 衝撃でしたね!
祖父江 なんかいやだったらしいんです。
糸井 いい話だなー。
祖父江 それを聞いてね、すぐに、
「じゃあ違う案出すね」って、
引っ込めました。
糸井 ふつうじゃなければ
なんでもいいってわけじゃないんだよね。
祖父江 そうだったんだよね。
糸井 しりあがり先生は、どうなんですか?
しりあがり いや、ぼくは、もうなんでも(笑)。
祖父江 「だいたい四角」でも大丈夫だった?
しりあがり うん、まあ(笑)。
糸井 でも、急に「祖父江!」って
呼び捨てにするかもしれないよ。
「そういうことやめろよ、祖父江!」
って(笑)。
祖父江 あー。でも、いっつも呼び捨てだよね。
「祖父江」だよね。

(※注:しりあがりさんは祖父江さんの
    大学時代の先輩なのです)
しりあがり うん、そうですね。
糸井 ほんとは怒ってるのかもしれないよ(笑)。
祖父江 げっ、やばいっ。
‥‥という点において、とても、
「だいたい四角い本」ができたので、
うれしかったですっ。
── まとめてくださってありがとうございます。
「だいだい四角い本」は、ある意味、
祖父江さんの念願の企画だったんですね。
祖父江 でも、それやりたくてもね、
(デザインと)合う内容の本ってね、
なかなかなかったんですよ。
だから、『言いまつがい』の話を聞いて、
「なんてピッタリなんだろう!」と思って。
しかも、取り次ぎを通す予定が
ないんですよね?
糸井 この本に限っては、
いまのところないですね。
祖父江 取り次ぎも通さないし、
まつがえても大丈夫だし、
ゆがんだ本にとっては、
いたれりつくせりですね。
しりあがり それでこれができたんですか。
祖父江 そう。それでできたのが、この子。
しりあがり へぇー。
糸井 ひとつだけ角が丸いのは?
祖父江 カドマルは、
ついつい欲が出ちゃって(笑)。
── 欲なんですか、カドマルの部分は(笑)。
祖父江 んー、シリーズじゃないから。
1冊だけでも、
ゆがんでる安心感のためにも
ちょっと丸く、ね。
しりあがり へえ〜(笑)。
祖父江 1冊だけびみょうにゆがんでると、
ちょっとわかりにくいもんね。
何冊もあると、
ちゃんとした四角じゃないのが
わかるんだけども。
── 本棚に立てると、前に傾きますからね。
祖父江 うん。「こんにちは」は、するんだけど。
しりあがり なんか「ほぼ日ブックス」が、
祖父江の遊び場みたいだな(笑)。
糸井 わっ、互い違いに置くと、こんなだよ!
祖父江 あー! これは、ちょっと、いやですねぇ。
── 気持ち悪い(笑)。
糸井 これは、吉田戦車さんの気持ちも、
わかんないことないですね。
祖父江 そうですね(笑)。
しりあがり シリーズでこんなになって(笑)。
祖父江 あー、これ、いいかもしれない。
‥‥‥‥ステキ!
一同 (笑)
(続きます!)

2004-02-17-TUE

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