糸井 |
あの、横尾(忠則)さんの場合なんかは、
はじめから製版の人がいて、
横尾さんのだいたいの指示を
読み解いて指定していくんですよ。
「たぶん横尾さんはこう言いたいんだろう」
っていう部分で。 |
しりあがり |
すごい。それは便利(笑)。 |
糸井 |
あの、トレペの上とかに
細かく書いてある指定や記号の意味は
横尾さん、全部はわかってないんですよ。
それを、わかる人がぜんぶ置き換えてる。 |
しりあがり |
へええ、そうなんですか。 |
── |
ようするに、完成形を思いつく人と、
それを形にする職人の両者が
わかっていれば問題がないってことですね。 |
しりあがり |
あいだに人が入るとややこしくなるんだ。 |
祖父江 |
‥‥まえに、
アミテンに対してアミテンを抜き合わせる
(※ええと、「印刷」した紙を
すっごく拡大して見ると
細かい点々の集合があります。
その点が「アミテン」。
当然、点と点のあいだに
隙間があります。
一方、色と色を隙間なく
隣どうしにするのが「抜き合わせ」。
だから、
「アミテンどうしの抜き合わせ」
というのは、ええと、どういうこと?)
っていうのをね、やろうとしたんだけど、
営業の人にぜんぜん理解されなかった。
製版のことを知らないんじゃないかって
言われちゃって。 |
糸井 |
「抜き合わせでアミテン」
っていう方法があるんですか。 |
祖父江 |
うん。指定をちゃんと読めば
わかるんですよ。
あの、アミテンのサイズを
変えてあったんです。
あの、1インチ(約25ミリ)に
点がいくつ並ぶかで、
「何セン」っていう
言いかたをするんだけども、
たしか20センぐらいで
分解したアミテンを敷いて、
そのアミテン一粒ずつに対して
175センでつくったアミテンを、
抜き合わせでやってほしいって
頼んだんだけど、
「アミテンを抜き合わせるなんてできない」
って営業の人に言われちゃった。
でも、それも現場の人に話が行くと、
すぐわかってくれて大丈夫だった。 |
糸井 |
へえええ。 |
── |
やっぱり、現場の職人の人は、
「できる」と「できない」が
きっちりわかるから
話が進むんでしょうけど、
そこに現場以外の人が入ってしまうと、
「前例がない」っていうことが
「できない」とイコールに
なってしまうんでしょうね。 |
糸井 |
「ウチの職人に、そんなことを
頼めるんだろうか?」ってなるんだね。 |
── |
祖父江さんは、
「前例がなくともできるはず」っていうのは
どういうふうに確信するんですか? |
祖父江 |
いやべつに、例があるかどうかは、
わかんないけど、
できるものはできるよね。 |
糸井 |
あああ、原理がわかってるからだね。 |
しりあがり |
あ、そっか、原理がわかってるもんね。
自分で見積もり出してましたもんね、昔ね。 |
糸井 |
そうそう、
お金のことまで考えるっていうのが、
この人の自慢ですからね。 |
|
|
祖父江 |
えへん(笑)。 |
糸井 |
「これが高いようだったら、
これにするとこのくらい安くなる」
とか(笑)。
そんなことを言う装丁家はね、
なかなかいない。 |
(続きます!)