糸井 |
あ、そういえば、ぼく、
デザインに関してはほとんど
なにも言わなかったわりに、
表紙を変えてもらいましたよね。 |
祖父江 |
ええ、「ダメ出し」がでて、
変えました。 |
糸井 |
それ、やっちゃったのよ。うん。 |
しりあがり |
へええ。もともとは、どういう? |
祖父江 |
タイトルロゴは手書きで細くて
ちょっと落書きみたいな感じで
そこはかとなく入ってて、
しりあがりさんの絵が大きく
ふにゃふにゃしてるデザインだった。 |
糸井 |
うん。なぜ変えてもらったかというと、
『オトナ語の謎。』が、
いい感じで売れてるんで、
たぶん本屋で
隣り合わせに並ぶだろうなと思って。
で、とにかくタイトルをデカくして、
それを特徴にしちゃいたいと。
そのまえに『海馬』っていう本があって、
あれは、
ウチが出版したわけじゃないですけど、
『海馬』から『オトナ語の謎。』って、
デカいタイトルの流れできたんですよ。
だったら、もう今回も
デカいタイトルシリーズにしたいと。
それで、やり直してもらったんです。 |
祖父江 |
やり直させてもらったんです。 |
糸井 |
結果的によかったよね。 |
祖父江 |
よかったですね〜。 |
糸井 |
暮れも、もう押し迫ってから(笑)。 |
祖父江 |
『オトナ語』を隣に置きながら
まねっこロゴつくりましたよ。
これと並ぶんだな、ってね。 |
── |
そういう大きなリクエストが来て、
「せっかく自由につくってたのに!」
みたいにはならなかったですか? |
祖父江 |
あ、ぜんぜんならない。
もうできててもね、
たとえそれに長い時間をかけたとしても、
なんか、もう1コ違う、
もっといいのがみえてきたら、
過去はもう、どんどん捨てちゃいますよ。
「やった! もっとできる!」
と思って(笑)。 |
── |
あああ、そういう気持ちなんですね。 |
糸井 |
タフだねぇ。 |
祖父江 |
‥‥っていうか、
やらないとおちつかないし(笑)。 |
── |
監修者としての糸井さんに訊きますけど、
その「表紙にタイトルを大きく!」って
いうのはどちらかというと、
デザインというよりも、
経営者的な立場からのリクエストですよね。 |
糸井 |
そうですね。 |
── |
祖父江さんに任せて
自由にやってもらっているなかで、
そういう注文を出すというのは
少し葛藤があるんじゃないですか? |
糸井 |
それはですね、やっぱり、
ここ何年かで培った経験が、
ぼくにとって重要なんです。
つまり、サッカーでもさ、
選手に自由にプレイさせてるように
見えるけど、
そこには監督の方針があって、
もっと言うと、監督の向こう側に
FIFAとかがあるわけですよ。
たとえば、日本代表がワールドカップに
出られるんだろうかっていう
ニュースがしょっちゅう流れますよね。
今日勝たないとダメかもしれないっていう、
首の皮1枚みたいな場面が
何回もあるじゃないですか。
あれって、要するに、誰かが
大きな仕組みをちゃんと考えているから
そうなるんですよ。 |
── |
ああ、なるほど。 |
糸井 |
だから、1回負けて
ダメになるんじゃなくて、
「何々して何々して何々すれば
ワールドカップに出られる」みたいに
何回も期待が持てるようになってる。
つまり、あの仕組みを
考えた人がいたおかげで、
ぼくらは長く遊べるんですよ。
ま、ほんとの「FIFA」が
いいか悪いかは知りませんけど、
自分の仕事としては、
その「FIFAの役割」っていうのを、
ちゃんとやんなきゃいけないなと、
ここ数年で思えるようになったんです。
そうしないと、
選手がせっかくいい活躍しても、
お客が観に来てくれない
わけじゃないですか。
だとしたら、嫌がられたとしても、
「頭下げてでもやってもらうこと」を、
ちゃんと言えないとダメだなと思ったし、
言うことが、わりと平気になりました。
それこそ昔は、自分の立場は逆で、
きちんとした説明をされないままで、
ただ「直せ!」って言われることが、
いっぱいあったわけだけど。 |
── |
「選手」としての立場だったころ。 |
糸井 |
そうです。そういう立場にいるころって、
「クリエイティブ対営業」みたいに
考えたり、
「経営と制作は違うんだ!」とか、
そういうことを言いがちなんです。
クリエイティブを商売にしている人ほど、
なかなかそこの折り合いを
つけられないままで
一生を終わっちゃう場合が多いんです。
しりあがりさんなんかは
ずっと大きな企業に勤めてた人だから
よく知ってると思うけど。 |
しりあがり |
そうですね。 |
糸井 |
大切なのは、
クリエイティブ側とか経営側とかいう、
立場の違いは関係なくてね、
本気でものを言っているか
どうかなんですよ。
あらゆる人が、こう、
本気でなんかものを言ってるときって、
やっぱり、聞けるだけの、
エンターテイメントが入ってるんです。
それこそ「儲けたい一心!」っていう
人の話でもいいの。
もうね、本気で言ってる人の発言って、
やっぱりね、すごいんですよ。 |
|
|
── |
だから、経営的な意見で
表紙のデザインにリクエストを出すときも
迷いなくできるというか。 |
糸井 |
もう言えるんですよ。
そのかわり、あの、
小っちゃいことではあんまり言わないし、
小っちゃいこと言う場合には、
ものすごく本気で
小っちゃいこと言いますよね。
そういうふうにすると、
あの、なんていうのかな、
わけのわからないよさが出るんですよね。
それはやっぱり、長年かかりました。
ほんっとに長年かかりましたねぇ。 |
(続きます!)