── |
すごく端的な質問を
してみたいんですけど、
みなさんがいわゆる「上の人」として
指示を出すときに、
「なんかもう、
気を遣いながら指示出すより
オレが自分でやっちゃったほうが
早いじゃん!」っていうことが
あるんじゃないかなあと
思うんですけど、いかがでしょうか? |
しりあがり |
ぼくは‥‥、
いまのところあんまりないですね。
アシスタントさんには、
描く作業を中心に
手伝ってもらってるんで、
まずぼくが描くよりは、
みんな上手なんですよね。 |
糸井 |
ふふふふふふ。いいね! |
しりあがり |
ま、たまにね、
なんか勘所押さえてないな、
みたいなね、
そんなとこにそんな時間かけるのは
どうかと思うな、
みたいなことはありますけど。
でも、あんまり自分が、
描くの好きじゃないんですよね、
面倒くさがりで(笑)。
だから、そんな、自分でやろうなんて、
ぜんぜん思わないですけどね。 |
糸井 |
祖父江さんは? |
祖父江 |
うーん、思い描いたり、
「こうしよう!」って
決めるのは好きだけど、
実際に作業するのは、
そういうのが得意な人が
やってくれると楽でいいな‥‥と。
なんか「こんな感じっ!」って
いうのができたら、そこでもうね、
やや飽きるじゃない?
で、最終的なかたちにするところは、
誰かやってくれないかな、とか、
思うなー。
時間のかかる作業してると、
その途中でもっとべつのプランが
出てきちゃうかもしれないし。 |
── |
でも、できたあがってきたものが
「こんな感じっ!」とは
ちょっと違ったものになってたりしたら? |
祖父江 |
あ、そのときはね、
ふたつケースがあると思うんです。
ひとつはよくない場合で、
そのときは、
「ここをこうすれば良くなるかな?」
とか、「ここをこうしない?」とか、
なんとなくスタッフの顔色を見ながら
伝えてます。
あと、もうひとつは、
自分が思ってたよりも
よくなってるケース。
「あ、いい、
こういう手があったのか!」って。
たまにあるんですよ。
そういうときは、
「なんだか申しわけないなぁ」とかって
思っちゃうんですけど。 |
一同 |
(笑)。 |
祖父江 |
ひとりでやってると、
思いいたらないこととかあるしね。
だから、まあ、いろいろだよね! |
── |
なるほど。糸井さんはどうですか? |
糸井 |
ぼくはふたりより年上なぶんだけ、
苦労した道のりがちょっとだけ長くて、
「自分でやったほうが早い!」って
思った時期がけっこうあるんですよ。 |
しりあがり |
ああ、そうなんですか。 |
糸井 |
とくに、コピーライターの仕事が
とんでもなく忙しかったときね。
こういう言いかたを
するのはなんだけど、
要するに、ぼくがいちばんうまく、
早く、おもしろくできるんですよ。
だからある意味、
我慢ばっかりしてるんです。
で、もういろんな性格の人が
いましたけど、
いちばん困ったのは、こう、
「深い考えがある」みたいに
腕組みして、天井を見ながら
1本のコピーを2日くらいかけて
考えてる人なんですよ。
「そんなたいそうなことじゃ
ないだろう」って思えてね。
タバコなんかふかしながら、
眉間にシワ寄せて、
毎日怖い顔してるんですよ。
ぼくからするともう、
腹が立ってしょうがない。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
そんな感じで何日待っても
コピーがあがってこない。
で、とうとうどうしたかっていうと、
封筒に、オレの考えたコピーの案を、
書いて入れておいた。
もちろん何日か経ってからだよ?
あんっまりできなくて、
締切がきちゃうよ、っていうときに
まだそいつは腕組みしてるから、
しょうがなくてそうしたの。
間に合わなかったら困るから、
それを渡しておいて、
もし間に合わなくなりそうだったら、
これにしてくれって。 |
── |
すごい気の遣いよう(笑)。 |
糸井 |
で、深夜かなんかにそいつが、
こう、涙流さんばかりの顔をして、
「‥‥ダメでした」って言ってきて、
オレの封筒を開けて「あーっ!」って。
そういうの見てるのが辛くて!
そんなの、ずっと繰り返すわけ。
で、思ったのは、やっぱり
完全に同じ職業のアシスタントがいると
うまくいかないんですよね。
要するにオレも
ライバル意識あるもんだから、
「負けないぞ!」になっちゃうんで、
育てられないと思うんですよ。 |
── |
あああ、なるほど。 |
糸井 |
とくに、そのときよくなかったのは、
全体の仕事の分量を決めている状態で
みんなで仕事してたのね。
ところが「ほぼ日」始めてからは、
「仕事を増やせば増やすほどいい!」
っていうふうに切り替えたんです。
そうなると、仕事を増やせば増やすほど
おもしろくなるんですよ。
で、そのネタを考えるのが
ぼくの仕事になるわけ。
そうしたら、もう目が届かない。
目が届かないところで
行なわれていることが
おもしろくなってくる。
つまり、「自分でやったほうが早い」
なんて言えるほどの
分量じゃなくなったの。
おかげで、そういう、
「答えを封筒に入れて」みたいなことを
やらなくてもすむようになった。 |
祖父江 |
おめでとう! |
一同 |
(笑) |
── |
そういうふうに
切り替えたきっかけはなんでしょう? |
糸井 |
これはね、
もうほんっとインターネット様々。
たぶん、ページ数に限りがあったら、
「この企画はダメだけど、
この企画はいい」とかって
いうのをもっと厳しくやるように
なりますよね。ところが、
それをやらなくてすんじゃう。
おかげでね、もうね、
こんな楽しい仕事は、
みんなに分けてあげよう!
みたいになったんですよ。 |
祖父江 |
なるほどぉ。 |
しりあがり |
それはいいなぁ。ぼくもなんか、あの、
会社の理想みたいなものが
いちおうあって。
みんながぼくの仕事のほかに
自分の仕事をそれぞれにして、
そっちが忙しくなれば独立していって、
新陳代謝していけば
いいなあと思ってるんです。
でも、なかなかそうならないんですね。
うん、ちょっと最近
止まっちゃってるというか。 |
糸井 |
あの、うまく伸びていく人って、
探したらそんなにいないんですよ。
つまり、才能って、
なんていうんだろう、
ある程度の分量あれば、あとは、
勝手に伸びてくもんだと思うんですよ。 |
しりあがり |
ええ、ええ。 |
糸井 |
ただ、そういう人って
そんなにいるもんじゃない。
あの、若いときに、
組織を組むにあたって
ついつい憧れがちなのは、
「欠点はあるんだけれども
ものすごい個性を持っている
『7人の侍』をそろえる」
みたいなことなんですよ。
でも、そんなチーム見たことない! |
しりあがり |
あ〜(笑)。そうなんですよねえ。
つい、そうなればたのしいのにな、
って思うんだけど。
こう、それぞれに能力があって、
組織としてはある程度自由で、
でも全体としては相乗効果みたいな。
なんか、漠然と、
理想みたいに思っちゃうんですけど。 |
糸井 |
わかるんだよ、その気分は。 |
|
|
(続きます!)