『言いまつがい』装丁伝説!
あのへんな本をつくった人たち。
祖父江慎×しりあがり寿×糸井重里

第13回 変な本にしてるつもりじゃないんです。


糸井 祖父江さんに頼みにくる人って、
「ぼくの本にも変なことしてください!」
とかって言わないもんですか?
祖父江 あ、言う人います。
でも、それってツラいです。
糸井 あー、そうですか。
祖父江 「変なことしないでください」だったら
まだ理解しやすいけど、
「変なことしてください」
って言われると、
なんか、ヤだな〜って思いますよ。
糸井 ふははははははは!
しりあがり へ〜。それ、なんだろう(笑)?
祖父江 べつに変な本をつくろうとして
やってるんじゃないよ!! っていう
感じなんだよね。
しりあがり あ〜。
祖父江 その内容どおりに、
おこしてるだけなのに‥‥。
糸井 ファッションデザイン
みたいなもんですかねぇ?
こう、服なんだけど、
襟を大きくしてみました、みたいな。
祖父江 いやぁ‥‥ねぇ‥‥。なんだろう。
服とは違って
本って、不自由な形なんですよ。
だいたいは四角いし、堅いし、
内容に似合う変化をつけられるところって、
あんまりないんですよ。
だからちょっとでも自由にできると
うれしかったりして、やっちゃうんだけど。
‥‥でも、本屋さんに行って、
あんまりデザイン凝ってるのを見ると、
イヤな感じしますよね。
糸井 ふはははははははは!
祖父江 買う気を失いますね。なんででしょうね。
あんまりデザイナーが
がんばってるぞって感じが
出すぎてる本って、
なんかね、邪魔で、邪魔で。
なんか、買うのやめたくなるよね。
糸井 ブッ。
しりあがり たとえば、『言いまつがい』は?
祖父江 『言いまつがい』は‥‥。
糸井 変なこと、してますよね(笑)。
祖父江 なんか、しちゃったね〜。
それは、ちょっと、
中身もおかしなことになってるしさ、
まちがえたっていうことで‥‥。
糸井 ああ、そうか、これは、
「まつがい」がコンセプトだからね。
吉田戦車さんのマンガだって、
変なことしてないのだって
多いですよね?
祖父江 いやん!
そんなに変なことばかりはしてないですよ。
やっぱり戦車さんって、
その、作品の肌触りというか、
なんか、いいことばが浮かばないけど、
「くすぐったい感じ」があるんですよ。
その感じが形にならないかな、っていう、
それだけなんですよね。
あっ、でも、つぎの戦車さんの本は、
かなり変なことしようとしてるんだった!
── そ、それはどういう?
祖父江 表紙がない本。
一同 変(笑)!
祖父江 カバーはあるけどね。
つまり、オシャレな本ってさ、
海外テイストな感じでさ、
本表紙だけで勝負したりするじゃない?
カバーなんてムダなものはいらないぜって。
しりあがり うんうん。
祖父江 今つくってる本はその逆で、
必要なものをなくしてでも
外見だけにこだわってみるの!
いわゆる「ヒョウシヌケ」な、
かっこ悪い本なんです。
すてきでしょ?
実現するかどうかは
まだわからないんだけど。
── 戦車さんはなんと?
祖父江 これは戦車さんもね、
「あ、おもしろい」って乗ってくれたの。
糸井 「ぼくの本でやってもいい」と。
祖父江 えへん、そうさ。
『山田シリーズ』ってタイトルの本で
小学館から発売予定なの。
『エハイク』では
「奇プランを〜〜」って句で
そのときの打ち合わせのヒラメキ、
詠まれてましたね。
 
(続きます!)

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2004-03-19-FRI
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