糸井 |
あ〜、もう、いいなぁ。
やっぱり、石川さん、おもしろい。
写真家はすごい。おもしろい。 |
石川 |
こんな感じかな。 |
糸井 |
ぼくのバクの写真は、ようするに、
「めずらしいものを見たぞ」
という驚きだけなんですけど、
石川さんは、これまでの旅で、
白クマと直面してたり、
荒野で獣を撮ってたりするから、
思い入れがあるわけでしょ? |
石川 |
そうですね。
まぁ、白クマとかは、とくに。 |
糸井 |
この、ゴミのような山みたいな
バッファローにしても。 |
石川 |
これは、
「昔の壁画に描かれてる牛」ですから、
ぼくには、思い入れがあるんです。
(石川さんは、これまでに
世界各地に点在する洞窟壁画を多数撮影。
写真集『NEW DIMENSION』に収録) |
糸井 |
ああー、そっかそっか。
パンダは? |
石川 |
これは、たんに、おもしろかったから(笑)。 |
糸井 |
でも、明るいですね。
さっきのぼくのパンダの写真と比べると。
これ、オブジェとしていいよね。
やっぱりパンダは力があるなぁ‥‥。
これは、カラスですね。 |
石川 |
これは、動物園のカラスじゃなくて
上野公園にいたカラスなんですよ。
動物園の動物といっしょにしちゃったんだけど。 |
糸井 |
ああ、なるほど、なるほど。
なんか、意外と迫力ありますね。
この写真にもカラスがいますね。 |
石川 |
老シカがしゃがんでるんですけど、
カラスにからかわれてるんですよ。
お尻とか、カラスについばまれてて、
ときどきちょっと動くんだけど、
カラス、なめきってて。 |
糸井 |
動物って、死が近づくと、
カラスが寄って来るんですよね。 |
石川 |
何か感じるんですかね。 |
糸井 |
カラスってそういうサインをよく読むね。 |
石川 |
まあ、ほかの写真は、
「ぼくの好きな動物シリーズ」
っていうことになるんでしょうけど、
これ以外、撮る気にならなかったんですよね。
やっぱり気持ちが入らないと。 |
|
糸井 |
ああ、ぼくも撮れなかったんですよ、動物。
せっかく動物園に来たし、っていうんで、
いろいろ撮ってみたりしたんだけど、
まったくおもしろみを感じられなくて。
なんていうか、お父さんが動物園に行って、
動物撮って帰ってきたけど、
見返してみたらちっともおもしろくなかった、
みたいな気分になっちゃって。 |
石川 |
ぼくも、3つくらい撮ったあとに
ぼんやり動物を見てたら、なんか
むなしくなってきちゃって。
もういいかな、って思って。 |
糸井 |
ぼくもですよ。
うーん、なんでしょうね。
何してるんですか、
動物撮ってるときのぼくたちって。 |
石川 |
うーん。
けっきょく、早めに、動物園出てましたもん。 |
糸井 |
ぼくもすぐに動物園から出ましたね。
ここにいたら、つまんないことを
くり返しちゃうなぁと思って。
動物写真コンテストじゃないんだから。 |
石川 |
なんでしょうね。 |
糸井 |
なんだろうね。
動機がふわーっと蒸発していくんですよね。
よく、代々木公園とかでさ、
モデルの女の子を囲んで、
おじさんたちが撮影会したりしてるじゃない?
あんな気持ちになってきちゃったんですよね。 |
石川 |
まだ、それのほうが動機があるかもしれませんね。
女の子のそばに少しでも近づいていたいとか。 |
糸井 |
うん、そうだろうね。
まだしも「汲み取りたいもの」が
あるんだろうね。 |
石川 |
その意味でいうと、野性動物には
興味があるけれど、オレ、
動物園の動物には、あんまり‥‥。 |
糸井 |
ないよね。
よっぽど、おもしろい顔する
動物とかがいれば別だけど。 |
石川 |
バクとかはおもしろいですけどね。 |
糸井 |
うん、バクはよかった。
あーー、そうだわ。
オレ、自分ちの犬に関しては、
おもしろい顔を
なるべく撮ろうとしてるわ。 |
石川 |
ああ、なるほど、なるほど。 |
|
糸井 |
だから、そこでの動機は、
動物園の動物たちを撮るときとは
まったく違いますね。 |
石川 |
ふむー。 |
|
(続きます) |