第20回
<バリで、新年を考えたりしてます。>
新しい年の最初の日に、
ぼくの原稿を掲載する番が来た、
というより、「頼めば書く」人間が、
このへんの日程を埋めるというのが、
うちのやり方なので、ぼくが書きます。
野球で言えば、ローテーションの谷間を、
監督が先発するようなものですね。
こういう特殊な事情もあって、
連載のつづきの内容は、また次回にまわして
正月らしい何かでも書きはじめようと思う。
ぼくがこれからもっとしつこく考えていきたいこと。
それは、完全なシステムとか、機能中心の計画が、
ほんとは単なる、「ある時代の流行なんじゃないだろうか」
ということについてである。
いま、正月休みのバリ島でこれを書いているんだけど、
なんとなく来る途中で、ミッキーマウス・マーチを、
口笛で吹いていたんです。
まぁ、ゴキゲンだったということなんだけれど。
そこで、この曲の歌詞を急に思い出して、
あれれっと気がついた。
「はずかしがりやで おひとよし」って歌詞があったんだ。
それは「ぼくらのクラブのリーダーは」と歌われる
ミッキーマウスさんは、
「はずかしがりやで おひとよし」なんだ!というわけだ。
いまのアメリカのリーダー像は、
まったくこの逆である。
こどもたち向けのファンタジーの世界だから、
現実とはちがうはずだという言い方もできるが、
ここで歌われているミッキーは、
「人柄」というものでリーダーに選ばれているようだ。
「できるやつ」だからとか「勝つために」ということで、
いまのリーダーは選ばれている。
そのリーダー像は、いわば戦争をするときの
マシーン・システムである軍隊にひな型をもっている。
的確な現状の分析と、強い意思と、
ある種の戦略にともなう非情さとずるさ・・・
こういった要素が、
いまの時代にふさわしいリーダー像であるかのように、
ぼくらは思いこまされていた。
誰かが思いこませてきたということではないのだろうが、
風潮みたいなものがある。
強い国、強い企業、強い集団をつくるためには、
「必要悪」としてでも、
「強さ」で象徴されるようなリーダーが必要であるし、
その構成員も、それに習った強さが要求される。
そんな考え方が、「新しい未来」を語る人々の間では、
常識のように語られている。
(確かに、その考えの裏側には、
「既得権益」であるとか「位置」を利用するだけで、
強くもない脂肪太りのリーダー像があったのだろうが)
市場の独占をするために、自社の線路を敷きまくって、
そこを走る電車だけがいきられるようにしていくという、
いわゆる勝ちの「プラットフォーム」の奪い合いは、
銃後まで含めての総力戦争のようになっている。
「負けたらおしまい」という戦争なのだから、
勝つことこそが善であるという考え方は、
人々のこころをとらえやすい。
しかし、ずっと前から、こうだったのかといえば、
決してそんなことはないわけで、
アメリカ・ソフトビジネスの典型的な巨大企業である
ディズニーのシンボルであるミッキーだって、
「ほずかしがりやで おひとよし」を、
ずうううううっとながいことやってきているわけなのだ。
そんな甘っちょろい考えで生きていけるか?!と、
怒鳴りあってるようなイメージの巨大な企業が、
「はずかしがりやでおひとよし」のネズミ
がつくった資本で、大きくなってきたとも言えるのだ。
なんだかこれは、
「図体ばかりでかくて、けっきょく滅んだ
(知恵のたりない)恐竜ども」の歴史が、
人間の歴史よりもずっと長かったという事実に
似通っているとも思えてならないのだ。
せっかく南の島でゴキゲンでいるのに、
なんだか硬めの話が止まらなくなってしまった。
もうやめてひと泳ぎしに行きたいね。
つまり(・・・急いでやめようとしている)、
勝つための戦略だとか、現状分析だとか、
完全に近づこうとするシステムだとか、
おもしろければやればいいんだけれど、
それが、「ひょっとしたら無駄になるかも」とか、
「たいしたことじゃねぇような気がするなぁ」とか、
思っていたほうがいいんじゃないか?
ということなんですよ、言いたかったのは。
歴史はいつも勝者の側から記録されるから、
いまは、「あのひとたち」が大正解だったように見える。
でも、映画観てたって本読んでたって、
「あのひとたち」が素敵な主人公になっていたためしは、
ぜんぜんないだろう?
「経営学者で投資家で大金持ちでスポーツマン」という、
絵に描いたような現代的なエリートが、
あんまり魅力的に見えない理由は、
なんなんざましょ?ということが、
「明日にとっての未来」を考えたときには
すっごく重要な問題になってくると思うんですよねー。
今年は、ぼくは、去年並みかそれ以上の
「おまぬけ」なことをやって、いろいろ試してみますわ。
さぼっていく、ってことじゃないですよ。
日本人、働かなすぎだよ!という考えは、
あいかわらず、本気で思っていますからね。
ダーリンさんのお年玉的コラムはこちら。 |