作者の立川談春さんは、高校を中退して、
立川談志師匠の元に弟子入りします。
立川流といえば、独自路線を歩む落語界の異端児で、
談志師匠はだれもが認めるカリスマ。
とても厳しい状況のなか、談春さんは、
自らが魅入られた落語家である談志師匠に
いっしょうけんめい食らいついていきますが、
努力だけでは補えない現実に、
たびたび出会ってしまいます。
もちろん、その分とびっきりうれしいことにも、
出会います。
その談春さんの入門から真打ち昇進までを描いた、
自伝的作品です。
談春さんの書き振りはやはり落語のように軽やかで、
おもしろいエピソードもたくさん。
大笑いしたり、しんみりしたり、
なかなか深刻にはなりません。
しかし誰かに弟子入りするということ、
芸を磨いて一人前以上になるということは、
ほんとうにたいへんなことなんだろうなあ、
と読んでいて恐くなりました。
なんといっても、師と弟子の関係。
私はそれが、作中にも出てきた言葉
“師弟の関係は、恋愛に似ている”に
象徴されていると感じました。
思いのすれ違いや嫉妬がつきもので、
しかもうまくいっても、将来目指すところは、
お互いの自立というつらさのある、恋愛です。
とにかく、「弟子入り」ってすごい道だと思います。 |