池谷裕二さんの本は
『海馬』以来いくつか読んでいますが、
いつも読み進めるにつれて、
だんだんわくわくして、楽しくなります。
それは、本の中に、
難しい科学の話だけではなく、
恋するときのこころの仕組みや幽体離脱の真実、
少し前に流行った、
右脳派、左脳派という分けかたの理由、
直感とひらめきの違い、といった、
興味を持ちやすい話がちりばめられているからだけでなく
(もちろんそういったお話も、すごくおもしろいです)、
読むと、脳と付き合うときの気持ちを
軽くしてくれるところがとてもいいのです。
そして、いろんなことができて、
自分のことをなんとなくわかってくれて、
しかしそのいっぽうで、くせや得意、不得意を持つ、
まるで一個の個性のような相棒を
自分の中に見つけた、という気持ちになるからです。
たとえばこの本は、
「脳は私のことをホントに理解しているのか」
という章から始まります。
ここで、池谷さんは、
「自分は意外と自分のことを解っちゃいない」、
ということや、脳は案外だまされやすいことを
いろんな実験から教えてくれます。
それによって、この脳という相棒は、
自分の気付いていないことを指摘してくれるんだな、
でもそれがとてもあいまいだったり
時に間違えたりするんだな、と思って、
そこにわたしはなぜか安心してしまいます。
とはいえ、この本のメインは
脳とのつきあいかたでなく、
現在最新の研究を交えながら、脳の可能性や不思議さ、
人間の行動がどこまで脳に支配されているか、
自分は気付いていなくても体が知っていること、
どれほどすばらしい進化が人間の脳に起こったのかなど、
感動してしまうような話がどんどん出てきます。
研究者として、かみ砕いて話すことと
正確さとのバランスを注意しながらも、
伝えたいという池谷さんの気持ちがいっぱいで、
とてもすてきです。
また、おもしろくて刺激的な
この授業を、高校生のみなさんが受け止め、
楽しみながら池谷さんとやりとりする様子も、
とてもいいなぁ〜と思いました。 |